2020.11.06更新

借金を時効でゼロにするのは難しい?消滅時効の条件や注意点

借金にも時効があると聞くけど…何年で時効になる?
時効まで待てば借金を帳消しにできるってこと?

借金に時効があるのは事実です。

具体的には、最終返済から5〜10年が経過したなどの一定の条件を満たすと「消滅時効」が成立します。

そう聞くと「時効まで待てば借金が帳消しできるかも?」と期待したくなるかもしれません。

しかし結論から言えば、時効の成立は難しいのが現実です。

自己破産などとは違い、消滅時効は自分の意志で選べるものではないのです。

この記事では消滅時効の条件をはじめ、時効援用の方法、時効が中断になるケース、裁判所から書類が届いた場合の対処法などについても詳しく解説します。

借金の消滅時効を成立させるための条件とは?

消滅時効とは、お金を貸した人(債権者)がお金を借りた人(債務者)に「お金を返してもらう権利」が消滅する制度のことです

債権者による請求などがないまま一定期間が経過すると、その権利は消滅します。

銀行や消費者金融、カード会社からの借金をはじめとする一般的な債務はもちろん、税金にも消滅時効があります。

ただし、消滅時効を成立させるには以下の条件を満たす必要があります。

消滅時効成立の条件

  1. 最終返済から5〜10年が経過している
  2. 「時効の中断(更新)」が起こっていない
  3. 消滅時効の援用手続きをしている

以下、具体的に見ていきましょう。

1 返済期限から5〜10年が経過している

消滅時効が成立するには「最終返済から5〜10年が経過している」必要があります。

時効に要する期間は、借金をしたのが「2020年4月より前か後か」で変わります

2020年4月に施行された改正民法により、消滅時効の期間が変更されたためです。

2020年3月31日以前の借入

改正前の民法が適用されます(改正民法附則10条4項)。

「権利を行使することができるときから10年間行使しないとき」が消滅時効期間の原則ですが、銀行や貸金業者からの借金は5年間です

なお、消滅時効期間の起算点は「返済期限の翌日から」と考えます。

返済期日が決まっていない場合は契約日です。

債権の種類別の時効期間
貸金業者(消費者金融など)からの借金 5年
銀行からの借金 5年
信用金庫からの借金 10年
住宅金融公庫の住宅ローン 10年
親族や友人など個人間の借金 10年
奨学金 10年

2020年4月1日以降の借入

2020年4月1日以降の借入は、以下の早い方を適用します(改正民法第166条1項)。

1.権利を行使することができると知ったときから5年間行使しないとき

2.権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

借金の場合は「返済期限から5年」と考えてとおくとよいでしょう

2 「時効の中断(更新)」が起こっていない

時効期間は中断(リセット)され、ゼロからカウントし直しになる場合があります

これを民法では「時効の更新」と呼んでいます。

時効がリセットされるのは、以下の3つのいずれかに該当する場合です。

借入先(債権者)が裁判上の請求を行った場合

債権者が裁判所を介した請求を行うと、時効期間は更新されます。

時効の更新の事由となる手続きは民法147条によって定められています

  • 支払督促
  • 訴え提起前の和解、民事調停または家事調停
  • 破産手続きの参加、再生手続きの参加、更正手続きの参加

ここでは、裁判上の請求であることがポイントです。

請求書や口頭による請求は「催告」にあたり、時効は更新されません。

ただし、催告書が送られると、その時点から6ヶ月間、時効期間の進行が止まります

6ヶ月以内に裁判上の請求が行われると、時効は更新されます。

借入先(債権者)による差押え・仮差押え・仮処分があった場合

借入先(債権者)が裁判を起こし、債務者の財産の差押え・仮差押え・仮処分があった場合も、時効が更新されます。

なお、財産が差し押さえになる可能性があるのは、次の3つのケースです

  • 担保を設定している
  • 公正証書に強制執行に服することが記載されている
  • 裁判に負けている

上記に当てはまらない場合、差押えになることは原則ありません。

借りた人(債務者)が借金の返済意思を示した場合

借りた人(債務者)が以下の対応をした場合も、時効が更新されます。

  • 返済期限を過ぎてから1円でも返済した場合
  • 債権者に「返済を待ってほしい」と伝えた場合

法的には「債務の承認」と呼ばれ、債務者に返済意志があるとみなされるためです

3 消滅時効の援用手続きをしている

消滅時効を成立させるには、借りた人(債務者)による「時効の援用」手続きも必要です。

債権者からの請求がないまま5〜10年が経過したからといって、勝手に借金がなくなるわけではない点は注意しなければいけません

時効の援用手続きとは、債務者が債権者に時効を主張することをいいます。

内容証明郵便で「援用通知」を債権者に送る方法が一般的です。

借金の消滅時効が成立するまでの流れ

時効援用の手続きは、以下の流れで行われます。

1 弁護士や認定司法書士に相談・依頼

専門家に相談し、消滅時効を成立させられるかどうかを確認します。

その後、手続きの流れや費用、スケジュールなどの説明を受けます。

2 受任通知の送付・債権調査

債権者に対して受任通知が発送されると、督促がストップします。

また、債務の内容が明らかになります。

3 「時効援用通知書」を発送

以下の内容を記載した「時効援用通知書」を作成し、内容証明郵便で債権者に送付します。

時効援用通知書に記載する内容の例

  • 通知書を送る日付
  • 債権の内容特定(債権者の会社名・住所・代表者名、債務者の氏名・住所・生年月日・借入日・借入金額・契約番号または会員番号)
  • 時効が完成していること
  • 時効を援用すること
  • 信用情報機関の登録情報を削除してもらいたいということ

4 消滅時効の成立

消滅時効の完成を債権者が確認すると、消滅時効が成立します。

債権者から契約書が返還されることもありますが、返還されないケースの方が多いといわれています。

裁判所や弁護士事務所から書類が届いたら時効を援用できない?

すでに時効期間が過ぎており、消滅時効の援用が可能な場合にも関わらず、債権者が債務者に消滅時効の知識がないことを期待して、支払督促や訴訟を起こすことがあります。

また、弁護士事務所や債権回収会社が、やはり時効の中断を狙い、債務者に債務の承認をさせようと、いきなり催告書を送ってくる場合もあります。

しかし、どちらの場合も時効期間が経過していれば時効援用することが可能です

裁判所や弁護士事務所から届いた書類を無視せず、適切に対処しましょう。

裁判所から支払督促や訴状が届いた場合

裁判所から届いた支払督促や訴状を放置すると、債権者の請求が認められ、強制執行が可能になり、給与や財産を差し押さえられます

差押えを阻止するため、次のような対処を行います。

1 訴状の場合

裁判所から届く訴状に同封されている答弁書に「消滅時効を援用する」と記載し、裁判所に提出します。

2 支払督促の場合

2週間以内に「消滅時効を援用する」と記載した異議申立書を裁判所に提出します。

異議を申し立てると訴訟に移行します。

時効が更新されていない限り請求は棄却されるか、債権者が請求を取り下げるケースが大半です。

ただし、裁判内で時効を主張する場合は

  • 時効期間の起算点はいつか
  • 時効期間は何年間か
  • いつ時効期間が過ぎたのか

を、債務者側が理由とともに主張しなくてはなりません。

弁護士事務所や債権回収会社から請求書が届いた場合

債権者が弁護士に依頼した場合は、弁護士事務所から催告書が届く場合があります。

また、債権を譲渡されたり、債権回収を依頼されたりした債権回収会社が請求・裁判を起こすことも考えられます。

いずれの場合も、時効期間が経過していれば消滅時効を主張できます。

ただし、相手と慣れないやりとりをしているうちに、ささいな発言から「債務を承認した」と見なされるリスクも考えられます。

債務を承認したと見なされないためにも、相手には直接連絡をせず、時効援用の実績のある弁護士や司法書士に相談するのがよいでしょう

借金を滞納しているのに借入先から連絡がないのはなぜ?

「借金の滞納を放置しているのに、債権者から督促が来なくなった」というケースがまれにありますが、安心していいものではありません。

督促がないからといって時効が成立したわけはないからです

債権者からの督促が止まる理由としては、次のようなものが考えられます。

1 債務者の連絡先がわからなくなった

引越後に住民票を移していないなどが理由で、債権者が債務者の住所を把握できなくなった可能性があります。

ただし、債権者は「公示送達」という手続きを使えば、債務者の住所がわからなくても裁判を起こせるので、そのまま踏み倒せると考えるのは禁物です。

2 過払い金を知られたくない

2010年6月以前の借金の場合、過払い金が発生している可能性があります。

それを知られると債権者は過払い金を返還しなくてはならないため、あえて連絡していないのかもしれません。

3 あえて後回しにしている

借金額が小さい、返済能力が低く督促しても返してもらえないなど、債権者にとって優先度が低い場合、督促が後回しになることがあります。

いずれの場合も、借金がなくなったわけではありません。

その間、遅延損害金と利息が生じていますし、いつ督促が再開するかわかりません。

最終的には、一括請求や裁判を起こされ、もし返済できなければ給料や財産が差し押さえられる事態もあり得ます。

借金の時効を援用するメリット・デメリット

ここであらためて、時効援用することのメリットとデメリットは整理してみましょう。

消滅時効が成立すれば借金の返済義務がなくなること以外にもメリットがある一方、「消滅時効が成立しても、すべての借金が帳消しになるわけではない」などのデメリットもあるのです。

時効援用のメリット

1 消滅時効が成立すれば借金の返済義務がなくなる

借金を帳消しにできることが、時効援用の最大のメリットです。

2 信用情報機関から事故情報が削除されることがある

いわゆる「ブラックリスト」から名前が消える可能性があります。

貸金業者などが信用情報機関に時効成立を知らせることで、登録内容が削除・訂正されるためです。

そのため、クレジットカードの作成や新たな借入に支障がなくなります。

ただし、信用情報機関によって対応が異なります。

  • 日本信用情報機構(JICC)
    貸金業者などが時効の成立を知らせることで、借入情報とともに事故情報も消えます。
  • シー・アイ・シー(CIC)
    貸金業者などが時効成立を知らせると契約が完了したという情報が登録され、5年間残ります。

また、債権が債権回収会社などに譲渡されている場合は、「移管終了」などの情報が登録され、一定期間たてば消えることになります。

時効援用のデメリット

そもそも消滅時効は自分の意思で選択できるものではありません。

また、一つひとつの借金ごとに、消滅時効が成立しているかを判断する必要があります。

そのため、複数の借金を抱え、その大半が消滅時効を迎えていないために、自己破産せざるを得ないケースも多々あります

時効の援用には失敗リスクも…時効が成立しなかったらどうなるの?

時効が成立する条件が複雑であるために、時効の援用をしたくても「失敗」してしまうこともあります。

例えば、時効期間中に「1000円でもいいから返済を」と債権者に誘導され一部返済してしまったり、債権者が裁判所を介して請求したりして、時効が更新されるケースです。

さらには、時効が本当に成立しているのか自力で見極めるのも簡単ではありません。

時効の援用に失敗し、時効が成立しないと、次のような事態に見舞われます。

1 債務の承認とみなされ時効が更新される

時効が成立する期間を過ぎる前に援用通知を送った場合、内容によっては「借金を認めた」と見なされ、時効がリセットされてしまうおそれがあります

2 遅延損害金が返済額に加算される

消滅時効を迎えるまで、長年にわたり滞納をし続けたことで、利息に加えて損害遅延金もかなりの額にのぼっているはずです。

もし時効が成立しなければ、遅延損害金も加算された金額を返済しなくてはなりません

3 督促が再開される

援用通知には自分の連絡先が記載されているため、援用通知がきっかけで債権者に現在の連絡先が知られてしまいます

それまで「債務者の連絡先がわからない」ことが理由で督促から逃げられていた人も、再び督促を受けることになります。

時効が成立しない場合は債務整理で借金問題を解決する方法も

もし時効が成立しなかった場合、借金の問題を解決する方法として検討したいのは、「債務整理」です。

債務整理には大きく分けて3つの方法があります。

それぞれ、主な特徴を紹介しましょう。

1 任意整理

  • 債権者と交渉し、返済可能な条件を取り決める方法
  • 将来利息がカットされた元金のみを3〜5年で返済する
  • やむを得ない事情がある場合は、特定の借入先のみを交渉の対象にできる場合がある
  • 信用情報機関に事故情報が約5年掲載される

2 個人再生

  • 裁判所を介して借金総額を5分の1〜10分の1程度まで減額する方法
  • 残った借金は原則3年で返済していく
  • 原則的に家や車などの財産を処分されることはない
  • 信用情報機関に事故情報が5〜10年程度登録される

3 自己破産

  • 裁判所に借金の支払いが不可能であることを認めてもらう方法
  • すべての借金の返済義務がなくなる
  • 家や車など、一定以上の価値のある財産を失う
  • 手続き期間は、一部の職業・資格が制限される
  • 信用情報機関に事故情報が5〜10年程度登録される

債務整理については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
債務整理で借金の悩みを解決!メリットやデメリットをわかりやすく解説

返済できない借金をなくしたいなら専門家に相談を検討しよう

ここまで見てきてわかるように、時効が成立する条件は複雑です。

そのため、個人で時効が確実に完成しているかを判断したり、ミスなく「時効の援用」手続きを行ったりするのは、難しいと言わざるを得ません。

弁護士や認定司法書士に依頼すると、以下のメリットがあります。

  • 借金の時効が完成していれば時効援用のサポートをしてもらえる
  • 時効前であれば自分の状況に合った債務整理方法の提案をしてもらえる
  • 依頼した時点で債権者に受任通知が送られ、請求や取り立てが止まる

時効の援用ばかりが、借金を解決する方法ではありません。

借金問題に悩んでいるなら、まずは専門家の無料相談を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ

消滅時効の特徴は、以下のとおりです。

  • 消滅時効とは、お金を貸した人が借りた人から「お金を返してもらう権利」が消滅すること。
  • 時効が完成するには「最終返済から5〜10年が経過している」「時効の中断(更新)が起こっていない」などの条件を満たす必要がある
  • 時効を成立させるには、債務者による「時効の援用」手続きが必要

現実的には、消滅時効は自分の意志で選べるものではなく、時効の成立もむずかしいでしょう。

また、時効が成立する条件も複雑であり、個人で手続きを進めるのは困難といえます。

消滅時効以外の借金解決方法を検討するためにも、まずは専門家に相談してみましょう。

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