
個人再生で官報に載るとどうなる?掲載内容とタイミング・影響は?
「個人再生すると、官報に自分の情報が載ると聞いて、何だか不安…」
「官報が原因で、個人再生が周りの人にバレたりしないのかな?」
個人再生をすると、官報に住所や氏名などが掲載されます。
官報は、見ようと思えば誰でも見ることができるので、「個人再生がバレるのでは?」と不安を感じる人もいるでしょう。
しかし実際には、官報に載ったからといって、あなたが個人再生をしたことが知られてしまう可能性は低いと考えらます。
- 購読者が限られている
- 情報量が多く一つ一つ探すのは困難
弁護士や司法書士などの専門家に相談すれば、周囲に知られずに借金問題を解決する方法を考えてくれます。
個人再生を考えたら、専門家へ相談することを検討してみましょう。
この記事では、官報がどのような媒体で、個人再生のどんな情報が掲載されるのか、また掲載されることによって、どんなデメリットが考えられるのかを解説します。

当事務所の借金減額相談は、無料で利用可能です。相談したからといって、必ずしも依頼をする必要はありませんのでお気軽にご利用ください。
個人再生が官報に載るタイミングと掲載内容
「官報」とは政府が発行し、国立印刷局が印刷を行う機関紙です。
行政機関の休日を除く毎日、発行されています。
官報の主な掲載内容
- 法令、政令、条約などの情報
- 裁判所の決定に関する情報(個人再生の情報はここに含まれます)
- 国会や皇室に関する内容
こうした国政上の重要事項を国民に報せるのが目的です。
個人再生の情報が官報に掲載される理由は、個人再生の手続きに参加できない債権者に対して、権利を行使する機会を与えるためです。
個人再生の情報が掲載されるのは計3回で、掲載内容は原則的に次の通りです。
官報に載る情報
- 事件番号
- 住所
- 氏名
- 決定年月日時
- 決定の内容
- 裁判所名
官報に掲載されることを拒否したり、内容を変更・消去したりすることはできません。
では、個人再生をすると、どんなタイミングで掲載されるのかを見てみましょう。
個人再生手続開始決定時
個人再生をする場合、官報に最初に掲載されるのは再生手続開始の決定時です。
時期の目安は、個人再生の申立てをしてから約1ヶ月後となるでしょう。
このタイミングでの掲載の目的は、申立人の住所や氏名を官報に載せ、「債権届出」を受け付けることを債権者(お金を貸した人)に知らせるためです。
債権者は、期間内に「債権届出書」を裁判所に提出することで、申立人が返済すべき借金額がいくらなのかを主張できます。
具体的な掲載内容の例
- 事件番号
- 債務者の住所、氏名
- 決定年月日時
- 主文
- 再生債権の届出期間
- 一般異議申述期間
- 管轄裁判所および支部
書面決議または意見聴取の決定時
官報に2回目に掲載されるのは、債務者が再生計画案を提出したタイミングです。
時期の目安は、個人再生の申立からおよそ3~4ヶ月後です。
ただし、官報に掲載される目的や内容は、個人再生の手続きによって異なります。
小規模個人再生の場合
小規模個人再生では、債務者が提出した再生計画案を債権者の決議にかけます。
つまり、個人再生に反対できる機会が設けられるということです。
そのため、官報では再生計画に対していつまでに回答すればよいかという期限が知らされます。
具体的な掲載内容の例
- 事件番号
- 債務者の住所・氏名
- 決議に対する再生計画案
- 再生計画に対する回答期限
- 決定日付と管轄裁判所および支部
給与所得者等再生の場合
給与所得者等再生の場合、再生計画の認可に債権者の同意は必要ありません。
しかし、債権者は再生計画案に対して意見を述べることができます。
官報では、再生計画案に対する意見として提出できる内容や期間が知らされます。
具体的な掲載内容の例
- 事件番号
- 債務者の住所・氏名
- 意見聴取に付する再生計画案
- 書面で意見を述べることができる事項(再生計画の不認可事由)
- 書面の提出期間
- 決定日付と管轄裁判所および支部
再生計画認可の決定時
官報に3回目に掲載されるのは、裁判所が再生計画の認可決定を出したタイミングです。
時期の目安は個人再生の申立てからおよそ5ヶ月後となります。
最終的に再生計画が認可されたことを債権者に知らせるための掲載です。
官報に掲載された日の翌日から2週間過ぎると認可決定が確定し、確定日の月の翌月から、返済が始まります。
具体的な掲載内容の例
- 事件番号
- 債務者の住所・氏名
- 主文
- 理由の要旨
- 決定日付と管轄裁判所および支部
官報に掲載された情報を見る方法と期間
官報は、紙面でもインターネットでも見ることができます。
- 紙媒体版官報
- 本紙32ページのほかに、本紙に掲載しきれない分が号外として発行される。
個人再生の情報は、本紙と号外のどちらにも掲載される。
- インターネット版官報
- 直近30日分はすべて無料で閲覧できる。
会員制有料サービスであれば、過去のすべての記事の検索・閲覧ができる。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
紙面で見る方法
紙媒体版の官報を閲覧するには、次の方法があります。
- 政府刊行物取扱店で購入する(1部32ページごと143円、消費税込み)
取扱店は全国官報販売協同組合のホームページから確認できます。
全国官報販売共同組合 - 大きな図書館で閲覧する
国立国会図書館に永久保存されているほか、規模の大きな図書館には一定期間分が保管されている場合があります。
なお、図書館での閲覧は無料です。 - 定期購読する(1ヶ月1,641円、消費税込み・送料別)
定期購読は、全国48ヶ所の官報販売所で受け付けています。
国立印刷局「官報販売所等一覧」
インターネットで見る方法
インターネット版官報には、無料版と会員制の有料版があります。
- 無料版
無料版では、直近30日分を閲覧できます。
インターネット版官報
- 有料版(会員制)
会員制有料サービスの「官報情報検索サービス」では、過去の全ての記事の閲覧や、日付・キーワードを指定した検索ができます。
国立印刷局「官報情報検索サービス」
有料版の利用料金(月額・税込)
紙媒体の官報を購読している人は割引が適用されます。
紙媒体の官報を購読中の人 | 新規申込の人 | |
---|---|---|
日付検索 | 無料(要申込) | 1,672円 |
日付検索+記事検索 | 528円 | 2,200円 |
また、大きな図書館で官報情報検索サービスを利用できる場合もあります。
官報から個人再生が家族や勤務先にバレる可能性は低い
個人再生を申し立てると、官報には3回情報が載ることになります。
しかし、官報によって個人再生を家族や勤務先に知られる可能性は低いといえるでしょう。
次にその理由を挙げてみます。
官報の読者層が限られているため
官報そのものがあまり知られていないこともあり、日常的に読んでいる人は限られています。
官報を読んでいる可能性がある職業の例
- 税務署
- 市区町村役場の税金担当者
- 信用情報機関
- 金融機関の担当者
- 動産関係の担当者
- 警備会社の担当者
- 保険会社の担当者
- ヤミ金融業者
閲覧方法が面倒で掲載件数も多いため
紙媒体の官報は、入手できる場所が限られているため、ふだん読まない人が偶然手に入れて読むということは少ないと考えられます。
インターネット版の場合は、無料で閲覧できるのは直近30日分のみです。
過去の官報を見るには、大きな図書館に行くか、インターネットの有料版を利用するという方法があります。
とはいえ、情報量がぼう大なこともあり、個人再生について一つ一つ確認していくのは困難といえるでしょう。
官報よりも裁判所から届く書類に注意
このように官報によって家族や勤務先に個人再生が知られる可能性は低いと考えられます。
それよりも、裁判所からの書類が自宅に届いた際に、家族に知られる可能性があります。
この場合、弁護士や認定司法書士などに依頼すると、裁判所が事務所宛に郵便物を送ってくれることもあるので、家族に知られる可能性が低くなるかもしれません。
官報に載ることのデメリット
官報に載ることで、家族や勤務先に個人再生を知られる可能性は低いものの、いくつかのデメリットが考えられます。
- 官報公告費用がかかる
個人再生の申立て時には、官報公告費用を裁判所に支払う必要があります。
個人再生の官報公告費用は2024年5月現在で13,744円(裁判所によって異なる可能性があります)。 - 個人再生後のカード・ローン審査に影響する
官報に載った情報をもとに事故情報を登録する信用情報機関もあります。
そのため、事故情報が掲載されている5~7年は、クレジットカードの新規作成やローンの借入審査に通りにくくなることが考えられます。 - ヤミ金融からダイレクトメールが届く可能性がある
官報には氏名・住所が掲載されるため、ヤミ金融業者がダイレクトメールを送ってくる可能性があります。
クレジットカードの新規作成やローンの借入審査に通りにくい状況にあることをわかった上で「ブラックでも借入OK」などの甘い言葉で誘ってくることがありますが、応じてはいけません。
官報に載らない借金問題の解決方法はある?
官報に掲載されない債務整理の方法には、任意整理と特定調停があります。
将来利息をカットする任意整理
任意整理は、借入先の金融機関と交渉し、将来利息をカットして元金のみを返済していくもので、債務整理の方法の中でも、もっとも多く利用されています。
裁判所を利用しないので、家族に知られたくない人にも向いているといわれます。
ただし、個人再生と同様、信用情報機関に事故情報が残った借金の完済後約5年掲載されます。
裁判所を介して返済条件を交渉する特定調停
特定調停は、本人が裁判所に通って債権者と交渉を行う債務整理方法です。
調停委員という公的な専門家を仲裁役として入れますが、自分で手続きを進めるため官報に掲載されることはありません。
ただし、個人再生と同様、信用情報機関に事故情報が残った借金の完済後5年程度掲載されます。
また、裁判所に何度か出頭する必要があるほか、裁判所からのさまざまな書類が自宅に届くことがあるため、家族に内緒にするのは難しいかもしれません。
弁護士や司法書士に相談するメリット
個人再生をする場合、弁護士や司法書士といった専門家に相談すると、次のようなメリットが考えられます。
- 家族や勤務先にバレないよう、最大限の配慮をしてもらえる
- 依頼した時点で、債権者からの請求や取り立てが止まる
- 申立書類の作成や債権額の調査、再生計画案の作成など、複雑な手続きも代行してもらえる
- 法律の要件を満たし、債権者の納得を得られる再生計画案を作成してもらえるので、手続きに失敗するリスクが減る
家族や勤務先に知られないように借金を整理したい人は、まずは専門家に無料相談することを検討してみるといいでしょう。