【借金返済のコツその1】まずは返済計画を立てる
借金の返済を楽にするための第一歩として、まずは返済計画について考えてみましょう。
借金の返済が苦しくなってくると、返済に追われてしまい将来のことには目を背けがちです。
そこまで返済が苦しくない場合でも、収入や生活状況に適した返済計画がないと、借金が雪だるま式に増えていくリスクもあります。
そういった状況を避けるため、現状から完済までの見通しについて考えておきましょう。
返済計画を立てるための手順は、
- 借金の残高を把握する
- 毎月返済に回せる金額を計算する
- 完済までの返済額と期間をシミュレーションする
の3つのSTEPです。
それぞれ具体的に紹介していきますね。
STEP1 現在の借入総額を把握する
まずは、借金の状況を把握するために、
- 借入先
- 借入残高
- 利息・手数料
を紙やエクセルデータを使って、下表のように一覧表にまとめてみましょう。
返済計画表 | ||||
---|---|---|---|---|
借入先 | A社 | B社 | C社 | 合計 |
借入残高 | 100万円 | 50万円 | 25万円 | 175万円 |
金利(年利)※リボ払いは手数料 | 15% | 18% | 14.5% | ー |
できるだけ正確な情報を集めるため、次のような方法で調べることをおすすめします。
- 借入先の金融機関の会員専用ホームページを参照する
- 借入先のコールセンターへ電話で問い合わせる
- 信用情報機関へ問い合わせる
借入先がわかっている場合は、1や2の方法で調べることができるでしょう。
万が一、「どこから借りたか分からなくなった」といった場合でも、3の方法で調べることができます。
信用情報機関とは、貸金業者やクレジット業者が加盟を義務づけられている機関で、顧客との取引に関する情報をすべて収集している機関です。
クレジットカード利用者や住宅ローン、カードローン利用者が、どの金融機関からどれだけ借入があるのか?しっかり返済できているのか?を一括管理している機関といい換えてもいいでしょう。
信用情報機関が保有する情報は、本人が請求すれば開示してもらえるため、借入先や借入残高を調べるために利用することもできます。
国内には3つの信用情報機関があり、それぞれ次の方法により情報開示を受けることが可能です。
(株)シー・アイ・シー 主にクレジット業者が加盟 |
(株)日本信用情報機構 主に貸金業者が加盟 |
全国銀行個人信用情報センター 主に銀行が加盟 |
|
インターネット | 〇 | 〇 (開示は郵送) |
× |
郵送 | 〇 | 〇 | 〇 |
窓口 | 〇 | 当面の間休止 (2020年12月現在) |
× |
したがって、これら3社すべてに開示請求をすれば、すべての借入先や借入残高がわかります。
なお、開示請求には1000円前後の手数料と郵送料(実費)が必要で、請求から開示まで10日程度で届きます。
STEP2 収入・支出から月の返済可能額を計算する(具体例をだす)
次に、家計から返済へ回せる金額を計算しましょう。
支出項目は、次のようなものが考えられます。
収入 | 給料 | 30万円 |
---|---|---|
支出 | 家賃(住宅ローン) | −8万円 |
電気・ガス・水道 | −1万2000円 | |
インターネット | −5,000円 | |
携帯・スマホ | −5,000円 | |
その他の月額利用料(VOD、ジム代など) | −5,000円 | |
食費 | −6万円 | |
生活用品・日用品 | −1万円 | |
お小遣い | −3万円 | |
交際費 | −3万円 | |
収入−支出 | 毎月の返済額 | 6万円 |
上記のようなケースでは、毎月6万円であれば返済が可能、ということになります。
この段階では、生活費を切り詰めて返済する金額を増やすことが目標ではありません。
現状の支出を洗い出し、無理なく返済できる金額を把握することを意識しましょう。
STEP3 利息を計算して返済シミュレーションをする
借入先と借入残高、利息(手数料)、返済できる金額がわかれば、いよいよ完済までの返済計画を立てます。
【STEP1】と【STEP2】を参考に返済計画を立てるためのシミュレーションをしていきましょう。
まず1ヶ月分(30日)の利息を計算します。
1ヶ月にかかる利息の計算方法は
借入残高×実質年率÷365×利用日数(30日・31日)=利息
となります。
【STEP1】の表にあるA社(借入残高100万円、金利15%)を例に1ヶ月の利息を計算してみると、
100万円×15%÷365×30日=12,500円
となります。
毎月30,000円を返済した場合、
・利息に12,500円
・元金に17,500円
が割り当てられることになります。
この計算を完済まで繰り返すと、
回数(ヶ月) | 返済金額 | 元金 | 利息 | 残高 |
---|---|---|---|---|
1ヶ月 | 3万円 | 17,500円 | 12,500円 | 982,500円 |
2ヶ月 | 3万円 | 17,719円 | 12,281円 | 964,781円 |
… | … | … | … | … |
44ヶ月 | 11,674円 | 11,530 円 | 144円 | 0円 |
合計 | 1,301,704円 | 1,000,000円 | 301,704円 | ー |
A社に対する返済は、返済回数44回、返済総額1,301,704円(うち利息301,704円)となります。
とはいえ返済月ごとに利息額をすべて計算するのは、大変な手間ですよね。
そこで大手の消費者金融では、返済シミュレーション用のホームページが用意されているところもあります。利用するのも方法の一つです。
同様に【STEP1】の返済計画表にあるB社・C社も計算すると、返済計画の完成例は次のようになります。
返済計画表 | ||||
---|---|---|---|---|
借入先 | A社 | B社 | C社 | 合計 |
借入残高 | 1,000,000円 | 500,000円 | 250,000円 | 1,750,000円 |
金利・手数料 | 15% | 18% | 14.5% | - |
毎月の返済額(例) | 30,000円 | 20,000円 | 10,000円 | 6万円 |
返済回数 | 44回 | 32回 | 30回 | - |
返済総額 | 1,301,704円 | 631,396円 | 299,444円 | 2,232,544円 |
このように、返済計画表をまとめると
・月々の返済可能な金額
・完済までの期間
がわかります。
目指すべきゴールやそこまでの道筋が明確になれば、返済のモチベーションも上がるのではないでしょうか。
まずは無理のない範囲で返済計画を立ててみましょう。
【借金返済のコツその2】利息を減らす
「借金が減らない」「返済が長引く」原因となるのは利息の存在です。
そこで借金返済を楽にするポイントの2つ目は、利息(リボ払いなどでは手数料)の負担をできるだけ減らすことです。
たとえば金利が15%(標準的なカードローン の金利)で借入残高が100万円・200万円の利息を比較すると次のようになります。
借入残高 | 金利 | 1日分の利息 | 1ヶ月(30日分)の利息 |
---|---|---|---|
200万円 | 15% | 821円 | 24,657円 |
100万円 | 15% | 410円 | 12,328円 |
借入残高が100万円と200万円では、1ヶ月の利息の差は約1万2千円に及びます。
200万円の借入残高で3万円を返済したとしても、そのほとんどが利息の支払いにあてられてしまうのです。
なかなか借金が減らない原因は利息にあることがよくわかるのではないでしょうか。
貸金業者は、毎月の支払いで利息さえ返済していれば厳しい取立てをすることはありません。
しかし、利息だけを返済していても借金はなくなりません。
いかに利息を少なくして、元金の返済にあてるかがポイントになるのです。
では、利息を減らすにはどうすればいいか?以下で解説していきます。
高金利の借入先から返済する
借入残高をすぐに減らすことが難しい場合は、少しでも金利が高い借金から返済していくようにしましょう。
たとえば次のような2件の借り入れがあると想定します。
借入先 | 借入残高 | 金利 | 1日分の利息 | 30日分の利息 |
---|---|---|---|---|
D社 | 100万円 | 15% | 410円 | 12,328円 |
E社 | 100万円 | 8% | 219円 | 6,575円 |
2件の借金に毎月3万円ずつ、計6万円返済した場合
- D社 返済回数44回 返済総額1,301,704円
- E社 返済回数38回 返済総額1,134,695円(2社の合計 2,436,399円)
となるのに対し
返済額をD社に4万円、E社に2万円、計6万円返済した場合は
- D社 返済回数31回 返済総額1,206,531円
- E社 返済回数62回 返済総額1,220,447円(返済総額合計 2,426,978円)
となります。
返済総額はほぼ変わりませんが、D社は2年半で完済できますので、返済資金の4万円をE社の返済に回す選択肢も生まれます。
借金の繰り上げ返済を利用する
繰上げ返済とは、毎月の返済とは別に借入額の一部または全額を返済することです。
ボーナスなどの臨時収入がある場合、貯金に回してしまうよりも、借金を繰り上げ返済するほうが経済的なメリットは大きいといえます。
たとえば、先の例で示したD社の借金(借入残高100万円、金利15%、返済額毎月3万円)について20万円を繰り上げ返済したときを比較すると
- 繰上げ返済をしないとき
返済回数44回 返済総額1,301,704円 - 繰上げ返済をしたとき
返済回数33回 返済総額1,182,949円
となり、1年近く早く完済できると同時に返済総額も約12万円節約できるのです。
まとまった収入があったときはぜひ、利用してみましょう。
リボ払いは分割払いに変更
「クレジットカードなどのリボ払いの返済に困っている」方は、分割払いに変更することも検討してみましょう。
リボ払いよりも分割払いの金利(手数料)をやや低く設定しているカード会社があるためです。
主なカード会社のリボ払いと分割払いの金利(手数料) | ||
---|---|---|
カード名 | リボ払い | 分割払い |
楽天カード | 15.00% | 12.25~15.00% |
エポスカード | 15.00% | 15.00% |
三井住友VISAカード | 15.00% | 12.00~14.50% |
JCBカード | 8.04~18.00% | 7.92~18.00% |
※2020年11月現在です。カードの種類によっても異なります。
またリボ払いの返済が難しいのにはもう一つ理由があります。
それはリボ払いは「いつ返済が終わるのか?」がわかりづらい点です。
リボ払いは借入金額にかかわらず、毎月一定の金額を返済する仕組みになっています。
毎月決まった金額だけを支払うので、家計を管理する点では便利な返済方法といえますが、借入額が多くなるとそれだけ利息も高額になります。
毎月口座から引き落とされているので、ちゃんと返済しているつもりという勘違いを起こしがちなのです。
分割払いであれば、先に返済期間を設定した上で返済額を決める仕組みなので、「いつ返済が終わるのか?」は明白です。
リボ払いの危険性については、以下の記事で詳しく解説しています。
「実はヤバいリボ払い…リボのしくみと早く完済する方法を解説!」
リボ払いから分割払いへの変更は、各カード会社のホームページにある会員専用ページやコールセンターで受付すれば可能です。
おまとめローンなどで借金を一本化する
複数の会社からの借り入れを一本化、いわゆる「おまとめローン」を利用することで、利息の負担を減らす、という方法もあります。
主なおまとめローンの金利一覧 | |
---|---|
イオン銀行カードローン | 3.8%~13.8% |
アイフル「おまとめMAX」 | 3.0%~17.5% |
三井住友銀行 カードローン | 4.0%~14.5% |
auじぶん銀行カードローン | 2.2%~17.5% |
楽天銀行スーパーローン | 1.9%~14.5% |
東京スター銀行おまとめローン | 12.5% |
アコム「貸金業法に基づく借換え専用ローン」 | 7.7%~18.0% |
プロミス「おまとめローン」 | 6.3%~17.8% |
アイフル「かりかえMAX」 | 3.0%~17.5% |
金利が低いほかにも、毎月の返済回数が減るので、管理もしやすいメリットもあります。
銀行や銀行系の消費者金融各社がおまとめローンを用意していますので、自分の目的に合ったものがあれば活用することも一つの手です。
しかし月々の返済額を減らしてしまうと返済が長期化し、返済総額が増えてしまうことがあるので注意しましょう。
現在の各社へのトータル返済額を減らすことなく、返済するよう心がけましょう。
おまとめローンなどによる借金の一本化のメリットやデメリットについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「借金一本化はお得?おまとめローンの落とし穴と根本的な借金の解決法」
【借金返済のコツその3】無理のない範囲で家計を見直す
借金を早く完済するためには、できるだけ返済額を増やすのが有効なのは間違いありません。
しかし、残業を増やしたり、生活費を切り詰めたりして、返済計画に組み込むことはおすすめできません。
返済計画は数年間にわたって実行していく必要があるため、甘い見通しを立てることは避けたほうがいいでしょう。
無理なく家計を節約できる方法をいくつか紹介しますので、取り入れられるものがないか探ってみてください。
公共料金や通信費など固定費の削減
水道光熱費やインターネット回線やスマホの通信費など固定費は、生活に不可欠なもので、利用量を減らして節約するのは限界がありますよね。
しかし、電力や都市ガスの小売が完全自由化されて3年から4年が経ち、お得な料金プランを選択できる可能性が広がっています。
たとえば、関東地区では東京電力が電気と都市ガスを従来よりも割安な料金で供給しているのがその一例です。
また、「楽天経済圏」や「ヤフー(ソフトバンク)経済圏」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
この両社は通信事業や通信販売、金融など幅広い分野を手がける事業者として有名ですが、電気やガスの小売りにも参入し、独自のポイントサービスで顧客の囲い込みを図っています。
また、NTTドコモやauも同様の動きでサービスを展開しています。
たとえば楽天経済圏の場合は、携帯電話や光回線、保険、クレジットカード、銀行、電気、ガスなどのサービスを利用すると、ポイントが付与されます。
このようなサービス以外にも、大手キャリアと契約している携帯電話を格安SIMに乗り換えたり、インターネット回線をSIM Wi-Fiに乗り換えたりするだけでも、月々の支払額が2,000円以上安くなるケースもあります。
さらに、貯蓄型の生命保険をシンプルな掛け捨て型の生命保険に切り替えることで保険料を節約することも考えられます。
電気・ガス、通信などの固定費は毎月必ず支払うものだけに、少し工夫するだけでも節約できます。
今契約している内容やプランを見直してみましょう。
クレジットカードやスマホ決済の活用
クレジットカードやスマホ決済を利用する大きな理由は、利便性に加えポイント還元にあるといわれています。それだけに、カード会社などもポイント還元に力を入れているところが増えています。
同じ買い物をするなら、ポイント還元を受けられる方法で決済すれば、家計の足しになるかもしれません。
主な決済サービスのポイント還元率は次のようになっています(キャンペーンなどの条件により還元率は変わります)。
クレジットカード | |
---|---|
ブランド | 還元率 |
REXカード | 1.25% |
リクルートカード | 1.2% |
楽天カード | 1% |
ヤフーカード | 1% |
オリコカード | 1% |
amazonカード | 1% |
dカード | 1% |
スマホ決済 | |
---|---|
ブランド | 還元率 |
PayPay | 店舗 0.5~1.5%
ネット 1~2% |
d払い | 店舗 0.5%
ネット 1% |
au Pay | 0.5% |
LINE Pay | 1~3% |
もっとも、ポイント還元目当てに不必要な買い物をしてしまうのは本末転倒です。
また、クレジットカードは業者にとって収益力が高いリボルビング払いに手厚くポイント還元をする傾向があるので、注意が必要です。
クレジットカードではなく、預金口座から商品代金を支払うデビットカードを利用するのも堅実な方法といえるでしょう。
フリマアプリの利用や副業も
使わなくなった物や空いた時間を収益化できる可能性があります。
フリマで不用品を売却
メルカリやヤフオク、ラクマ、ジモティーなど、簡単に取引ができるサービスにより、今や誰でも不用品を売買できるようになりました。
洋服やPC部品、書籍、娯楽グッズ、アクセサリー、ゲーム機(ソフト)、バッグなどが活発に取引されています。
もしいらない物があれば、出品してみるのもいいかもしれません。
クラウドソーシングで手軽に副業
インターネット環境を利用したクラウドソーシングも手軽な副業として注目を集めています。
ランサーズやクラウドソーシングというサイトでは、アンケートに答えるだけの簡単なもの、データ入力、音声の文字起こし、ライティングなど未経験でもできる作業がたくさん紹介されています。
また、コーディングやWebデザインなど経験やスキルを活かした高報酬の仕事が見つかるかもしれません。
どうしても借金の返済ができないときは?
返済計画を立てていく中で、返済を続けていくことができるか不安に感じることがあるかもしれません。
また、返済計画を立てたとしても、完済するまで5年以上かかるような場合(住宅ローンを除く)は、返済が難しい状況といっても過言ではないでしょう。
そういった場合は、弁護士や認定司法書士に依頼して債務整理をする、というのも方法の一つです。
債務整理とは法的な手続きによって、借金の減額や支払いの免除を可能にするもので、主に任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。
☑任意整理
貸金業者やクレジット会社など貸主と直接交渉して、将来発生する利息を免除してもらい、3年程度の期間で分割払いしていく方法です。
具体的には、将来利息をカットし、残った元金を3~5年で返済できるように交渉します。
任意整理は年間約200万人もの人が利用しているといわれていますが、個人で業者と交渉するのはハードルが高く、弁護士など専門家に依頼して行うのが一般的です。
☑個人再生
民事再生法に基づく裁判所の手続です。
住宅ローンの返済を続けてマイホームを維持しながら、その他の借金を8割から9割カットしてもらえる可能性がある手続きです。
☑自己破産
破産法に基づく裁判所の手続きで、借金を返済しなくてもよい(免責)という決定をもらう方法です。
ただし原則として、自宅や自動車などの財産は差し押さえられます。また借金の原因がギャンブルやFX、株式取引などである場合、借金がなくならない可能性もゼロではありません。
返済を続けている状況であれば、任意整理が最も適している可能性が高いでしょう。
これまでお話ししてきた通り、借金の返済を難しくしているのは利息の存在です。
任意整理は原則として、この利息をカットするため、毎月の返済がすべて元金にあてられます。
毎月の返済額も減らせるだけでなく、返済のゴールが見えるのも任意整理の特徴です。
ただし、これらの債務整理にもデメリットがないわけではありません。
信用情報機関に「事故情報」として記録されてしまい、いわゆるブラックリストに載ってしまうのです。
ブラックリストに載ると、新たな借金やクレジットカード発行の審査に通らなくなり、その状態が5年から10年続くことになります。
債務整理を行う場合、法的な知識が必要となることが多いことから、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しましょう。
債務整理に関しては、相談だけであれば無料の法律事務所も増えてきています。