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遅延損害金とは?発生する条件とは?
遅延損害金とは、借金が滞ってしまったことによる損害賠償金のことです。
簡単にいえば、返済の約束を破ったことによるペナルティーといえるでしょう。
本来決められている返済期日から1日でも遅れると遅延損害金が発生し、返済するまで発生し続けます。
遅延損害金は、利息のように遅延している間は元金に対して一定の割合(利率)によって算定されます。
そのため「遅延利息」や「延滞利息」と呼ばれることがありますが、遅延損害金は債務不履行(履行遅延)による損害賠償金なので、利息とは違うものです。
遅延損害金は借金以外にも債務不履行(期日通りに支払いができなかった場合)の条件を満たせば、どのような債務であっても発生します。
借金の滞納以外でも、例えば以下のような場合でも遅延損害金は発生するのです。
- 残業代や給与の支払い遅延(未払い)があった場合
- 家賃やマンションの管理費の支払い遅延があった場合
- 交通事故などの損害賠償金の支払い遅延があった場合
- 手形の不履行があった場合
- 水道代などの支払い遅延があった場合
など
カードローンやクレジットカード、住宅ローンなどの場合、遅延損害金の利率は、契約時に定められており、契約書にも明記されています。
一方、遅延損害金の利率の取り決めがない場合は、法廷利息(年3.0%)となります。
遅延損害金はいくら払わないといけないの?計算方法は?
遅延損害金は、遅延が解消(実際に返済)するまで発生し続けることになるため、遅れれば遅れるほど遅延損害金は増えていくことになります。
遅延損害金の金額は、以下の計算式で求めることができます。
遅延損害金=
遅延元金× 遅延損害金利率 ÷365日(うるう年は366)×延滞日数
なお、遅延損害金と通常の利息は別々のものなので、二重に請求されることはありません。
利息が発生するのは借入金の返済日までで、返済日の翌日以降は遅延損害金が発生することになります。

例えば、20万円の借金があり、返済日から10日間、返済ができなかったとします。
遅延損害金の利率が年20.0%だとすると、これらを式に当てはめると「20万×0.2÷365×10≒1096」となりますので、1,096円の遅延損害金が発生することになります。
なお、遅延損害金の対象となるのは、延滞している金額に対してのみです。
分割払いの場合は、返済日までに返済できなかった金額の元金にのみ遅延損害金が発生することになります。

例えば50万円を毎月5万円ずつ、10回で返済する契約をしたとします。
1ヶ月分のみ延滞した場合は、遅延損害金が発生するのは5万円のみで、元金である50万円から発生するわけではありません。
ただし、借金の延滞が続くと「期限の利益の喪失」といって、分割による支払いが認められなくなり、借金の残金を一括での返済を求められます。
☑期限の利益の喪失とは
分割払いなど一定の期限が到来するまで支払いをしなくてもよいという利益を失うこと。
つまり、将来に支払えばよかったものを今すぐに支払わなければならなくなるということです。
分割払いで期限の利益を喪失してしまうと、遅延損害金は借金の残高全額にかかることになります。
住宅ローンのように借入額が大きい場合は、高い利率の遅延損害金が元金全額にかかり、返済額が急激に膨れ上がってしまうことになるため注意が必要です。
遅延損害金の利率は?上限はあるの?
遅延損害金の利率は、債権者(お金を貸す人)と債務者(お金を借りる人)の両者が合意すれば、自由に設定できますが、上限は定められています。
利息制限法第四条
金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
簡単にいえば、利息の上限金額の1.46倍が遅延損害金の上限となる、ということです。
借入額 | 上限利息 | 遅延損害金の上限 |
---|---|---|
10万円未満 | 年20.0% | 年29.2% |
10万円以上100万円未満 | 年18.0% | 年26.28% |
100万円以上 | 年15.0% | 年21.9% |
ただし、注意しないといけないのは、この上限は、消費者金融などの借入には適用されません。
利息制限法の第7条1項によって以下のような規定があります。
利息制限法第七条
第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする
簡単にいえば、消費者金融などの借入の場合は、遅延損害金は最大でも年20.0%まで、ということです。
☑遅延損害金の利率の取り決めがない場合は?
遅延損害金は利率を取り決めていなくても発生し、この場合は民法404条により法廷利息の年3.0%が適用されます。
なお、2020年4月1日の民法改正前の法廷利息は年5.0%でした。
主要な金融機関や貸金業者の遅延損害金利率は?
カードローンやクレジットカードなどの遅延損害金の利率は、どう設定されているのでしょうか?
金融機関で異なりますが、目安は以下のようになります。
遅延損害金の目安 | |
---|---|
消費者金融のカードローンの場合 | 年20.0%程度 |
銀行のカードローン | 年20.0%程度 |
クレジットカード | ショッピング:年14.6%程度 キャッシング:年20.0%程度 |
住宅ローン | 年14.6%程度 |
実際、主要な金融機関の遅延損害金は、以下のようになっています。
クレジットカード名 | 遅延損害金 | |
---|---|---|
ショッピング利用分 | キャッシング利用分 | |
楽天カード | 年14.6% | 年20.0% |
ワイジェイカード | 年14.6% | 年20.0% |
オリコカード | 年14.6% | 年18.0% |
セゾンカード | 年14.6% | 年20.0% (融資利率の1.46倍の実質年率20.0%以内) |
三井住友VISAカード | 年14.6% | 年20.0% |
dカード | 年14.5% | 年20.0% |
JCBカード | 年14.6% | 年20.0% |
au PAYカード | 年14.55% | 年19.92% |
アメリカン・エキスプレス | 年14.6% | 年20.0% |
消費者金融のカードローン | 遅延損害金 |
---|---|
アコム | 年20.0% |
プロミス | 年20.0% |
アイフル | 年20.0% |
SMBCモビット | 年20.0% |
銀行のカードローン | 遅延損害金 |
---|---|
三井住友銀行カードローン | 年19.94% |
三菱UFJ銀行カードローン「バンクイック」 | 年1.8%~14.6%(借入金利と同じ利率が遅延損害金の利率となる) |
みずほ銀行カードローン | 19.9% |
上表にないものについては、契約書や契約先のホームページなどにも記載されていますので、確認しておきましょう。
遅延損害金を支払いたくない!遅延損害金の支払いを免れる方法はあるの?
遅延損害金は日に日に上乗せされていくので、だんだんと返済も大きくなってしまいます。
なんとか、遅延損害金の支払いを免れる方法はないのでしょうか?
また、返済に遅れてしまった場合は、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?
支払い先の金融機関や貸金業者の窓口に相談する
遅延損害金の支払い義務は法律に定められているわけではなく、金融機関との本人との合意(契約書)によって支払い義務が発生しています。
遅延損害金については、交渉の余地がありますので、借入先の金融機関や貸金業者に相談をしましょう。
カードローンやクレジットカード、住宅ローンなどでは、返済に困った人向けの専用の相談窓口を設けていることが一般的です。
返済する意思を伝えて相談すれば、遅延損害金の免除など、返済計画の見直しに応じてくれる場合があります。
遅延損害金に時効はある?
遅延損害金そのものの時効ではありませんが、遅延損害金の発生している借金の時効が成立すれば、同時に遅延損害金も消えることになります。
借金の時効が成立するまでの期間は、民法167条によって以下のように定められています。
- 債権者が権利を行使できると知ったときから5年
- 権利を行使することができるときから10年
金融機関の場合は「権利を行使できる=借金を返してもらえる」ことを知らないはずはありません。
ですので、金融機関からの借入では5年となります。
上記の条件は2020年4月1日の民法改正後のものになりますが、改正前も金融機関などからの借入の時効は5年でしたので変わりません(個人間などの借金は10年)。
ただし、借金の時効は「時効の更新」といって時効カウントがゼロになる条件もあります。
具体的には、裁判を起こされたり、裁判に基づく取立(強制執行)が行われたりした場合、時効の更新となります。
金融機関や貸金業者は、こうした法律にも精通しており、このような手段をとってくるため、時効の成立は難しいと考えられます。
時効期間に到達するまで待とうにも、その間も遅延損害金は増えていきます。
時効の成立が不可能となれば、遅延損害金も含めて高額な返済をしなくてはいけなくなるため、時効を狙っての滞納はしない方がよいでしょう。
借金の時効についてはこちらで詳しく紹介しています。
「借金を時効でゼロにするのは難しい?消滅時効の条件や注意点」
借金の返済がそもそも難しい場合は債務整理という手段も!
遅延損害金は日に日に増えてしまうため、早めに対処することが大切です。
借金の返済が難しいという場合は、債務整理をすることは有効な手段となります。
債務整理とは、法的に借金を減額または全額免除にしたり、債権者(金融機関など)と交渉して返済計画を見直したりすることで、借金問題を解決する方法のことです。
債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があり、それぞれ特徴が異なります。
☑任意整理
任意整理とは、借入先と直接交渉することにより、合意の上で無理のない借金の返済方法を取り決めることです。具体的には、将来利息や遅延損害金をカットした上で、元金のみを3~5年程度で分割返済していく内容で和解を目指すことが一般的です。
☑個人再生
個人再生とは、債務者に返済できないおそれがあることを裁判所に申立てて再生計画の認可決定を受ける手続きです。借金を5分の1~10分の1程度に減額して、原則3年(認められれば5年)で返済していくことになります。
☑自己破産
自己破産とは、裁判所に借金の返済が不能であることを認めてもらうことで、すべての借金を返済しなくてもよい(免責)との許可を得る手続きです。
遅延損害金によって借金の返済が困難になっている、という人はまずは任意整理から検討してみましょう。
遅延損害金だけではなく、借金の返済そのものが難しくなっている、という人はまずは個人再生を検討し、自己破産は最終手段となります。
債務整理のそれぞれの特徴についてはこちらでも詳しく紹介しています。
「債務整理で借金の悩みを解決!メリットやデメリットをわかりやすく解説」
借金の返済が難しい場合は弁護士や司法書士に相談をしてみては?
借金は滞納してしまうと、遅延損害金が日に日に上乗せされるので、1日も早く対処をする必要があります。
「お金がなく返済が困難」ということであれば、債務整理は有効な手段となりますが、複雑な手続きが必要です。
どの方法が自分に適しているのかも、借金額や収入状況によって異なるため、自己判断をするのは簡単ではありません。
債務整理の手続きは、弁護士(1社あたりの借金が140万円以下であれば認定司法書士でも可能)といった専門家に依頼して、手続きを進めてもらうこともできます。
法的な専門知識や過去の事例、豊富な経験などから、状況に合わせた債務整理の方法を提案してくれるほか、手続きを進めるうえでのアドバイスなどもしてくれます。
弁護士などの専門家に依頼すれば、受任通知が債権者に送られ、受任通知を受け取った債権者は、その時点から借金の督促ができなくなるというメリットもあります。
無料相談を受け付けている弁護士事務所や司法書士事務所もありますので、まずは相談を検討してはいかがでしょうか?