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相続税の取得費加算の特例とは|具体的な計算例も交えてわかりやすく

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不動産を相続して相続税を払い、その不動産を売却して譲渡所得税(不動産売却時などにかかる税)を支払うことになると、相続人にとって大きな負担となり、手元に残る財産がほとんどなくなる可能性があります。

そんな相続人の負担を減らすために「取得費加算の特例」という制度があります。

取得費加算の特例を利用できれば、譲渡取得税を減額できるかもしれません。

この記事では、相続税の取得費加算の特例の概要と計算例、必要書類を紹介します。

相続財産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

相続税の取得費加算の特例とは

相続の取得費加算の特例とは、相続発生後、3年10か月以内に相続財産を売却した場合、相続税として支払った金額の一部を負担から外し、譲渡所得税の節税ができる制度です。

譲渡所得税とは、所得税や住民税などを合わせた税金のことで、不動産や株式などの譲渡・売却利益が発生した際に課せられます。

通常の譲渡所得は、収入金額(不動産売却で得た利益)から取得費(その不動産の購入代金や購入手数料など)と譲渡費用(売却にかかった費用)を差し引いた金額です。

しかし、取得費加算の特例を用いることで、通常の譲渡所得からさらに相続税の金額の一部を差し引けるため、譲渡所得が少なくなります。

通常の譲渡所得税と取得費加算の特例を用いた場合の算出方法を比較したのが下記の表です。

通常の譲渡所得税 譲渡所得税=(収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) )×税率
相続税の取得費加算の特例を使った譲渡所得税 譲渡所得税=(収入金額 – ( 取得費 + 相続税額の一部 + 譲渡費用) )×税率

取得費に加算できる相続税額の一部は、「財産を売却する相続人の相続納税額×譲渡した財産の相続税評価額/(相続人の課税価格+相続人の債務控除)」で算出することができます。

下記の表のような事例では、どのくらい節税効果が見込めるのか見てみましょう。

●      売却する財産価格:6,000万円

●      保有期間3年(税率39%)

●      取得費が売買価格の5%

●      譲渡費用200万円

●      相続税額の一部500万円

通常の譲渡所得税 特例を使用した譲渡所得税
譲渡所得税=(収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) )×税率 譲渡所得税=(収入金額 – ( 取得費 +相続税+ 譲渡費用) )×税率
納税額=2,145万円 納税額=1,950万円

表の事例では、200万円近い節税効果が見込めます。

ただし売却する不動産によっては売却価格から差し引ける減価償却費や不動産会社へ支払う仲介手数料、土地の境界を決める手続き費用、建物の解体費用、立ち退き費用などがかかるため、正確な金額を算出したいときは専門家へ相談することをおすすめします。

取得費加算の特例を利用できる条件

取得費加算の特例を使用するためには、下記の条件を満たしている必要があります。

  • 相続や遺贈によって取得した財産であること
  • 相続税が課せられたこと
  • 相続発生の翌日から3年10か月以内に売却すること

法定相続人以外の第三者であっても取得費加算の特例を使用することが可能です。

また、生前贈与であっても、「相続時精算課税」や「3年内加算」であれば、相続税が課せられる可能性があるため、利用できる可能性があります。

配偶者は1億6,000万円までの課税価格までは非課税となる配偶者控除が使用できます。

多くのケースで配偶者は相続税を納税することがありません。

相続税を納税しないのであれば、取得費加算の特例を使用する必要はありません。

取得費に加算する相続税額をわかりやすく|具体的な計算例

ここでは取得費に加算できる相続税額の計算例を紹介します。

事例 被相続人の遺産総額:1億円(現金5,000万円・不動産5,000万円)

相続人:子ども一人

子どもの債務:0円

子どもの相続税:1,220万円

不動産の相続税評価額:5,000万円

計算例 取得費に加算できる相続税額の一部=財産を売却する相続人の相続納税額×譲渡した財産の相続税評価額/(相続人の課税価格+相続人の債務控除)

=1,220万円×5,000万円/(1億円+0円)

=610万円

相続税の取得費加算の申告手続きに必要な書類

取得費加算を使用するためには、必要書類を提出して確定申告する必要があります。

書類の準備が手間に感じる方は、税理士または税務署にご相談ください。

相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書

相続財産の取得費に加算される相続税額の計算書は、「相続財産の取得費に 加算される相続税の 計算明細書」にて出力できます。計算明細書には計算式の記載もあるため、簡単に作成することができます。

譲渡所得の内訳書

計算書の他に、譲渡所得の内訳書が必要です。具体的には下記の項目を記載します。

  • 売り主の情報・・・現住所・氏名・電話番号・職業
  • 物件所在地・・・売却する不動産の地番、家屋番号
  • 売買契約日・・・買主と締結した売買契約日
  • 引き渡し日・・・所有権が買主に移転した日(一般的には決済した日または後日)
  • 買主の所在地と氏名・・・不動産を購入された方の住所・氏名
  • 代金の受領状況・・・いつどれくらいの金額を受領したか
  • 取得費・・・不動産を取得した時にかかった費用、または国税庁が発表している建築価額表を使用して算出した仮の取得費(売却価格の5%想定)
  • 減価償却相当額・・・法定耐用年数と償却率から算出する金額(建物を売却する場合に該当)
  • 譲渡費用・・・仲介手数料や契約印紙代などの不動産の売却に関わった費用

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

株式も相続財産の取得費加算の特例が使用できます。

株式を売買する場合は「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付する必要があります。

この計算書を作成するためには下記の書類を用意し、1面と2面を記入します。

  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
  • 特定口座年間取引報告書
  • 株式譲渡契約書、特定口座以外の株式取引報告書

相続税の取得費加算の特例を利用するときの注意点

取得費加算の特例を利用する際の注意点をいくつかご紹介します。

申告期限を迎えるまでに遺産分割協議を終えておく

相続事件の中には、遺産分割協議が終わらず数年も続いている事案があります。

取得費加算の特例を利用しようと考えている場合、期限に間に合うように遺産分割協議も終わらせておく必要があります。

複数の不動産があるときは適用の優先順位を決定しておく

複数の不動産を相続する場合、適用の優先順位を決めておくと、節税効果を最大限活用できます。

不動産の売却益が大きいほど、節税につながるためです。

取得費加算の特例を使用できる期限を考慮しながら、手続きを進めましょう。

代償分割は節税効果が小さくなる

代償分割とは、相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に財産割合を現金で支払う方法です。

代償分割で相続すると、取得費に加算できる相続税額の算出方法が通常と異なり、加算額が減少します。

代償分割を利用すると、取得費加算の特例が最大限活かすことができないことにご留意ください。

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相続税額の取得費加算の特例を利用するならチェックシートを活用

相続税額の取得費加算の特例を利用する場合は、下記のチェックシートを活用するとスムーズに手続きできます。

引用:相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例チェックシート・措法 39条

5つの質問に答えるだけで、自分が特例を受けることができるのかがわかります。

チェックシートの結果が本当に正しいのか心配な方は、専門家に聞いてみましょう。

まとめ:取得費加算の特例を上手く利用し負担を減らそう

今回は取得費加算の特例の概要と計算式、必要書類について紹介しました。

取得費加算の特例を利用できれば、譲渡所得税の負担を減らすことができます。

相続開始の翌日から3年10か月以内に売却する必要があったり、相続税が課税されていたりなどの条件を満たしている場合に利用できます。

売却利益が大きいほど節税効果が高いため、取得費加算の特例を上手く利用したいとお考えの方は、専門家に相談することをおすすめします。

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