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相続しても生活保護は受給できるが注意点あり!損をしないための判断ポイント

亡くなった父母の遺産を相続したいと考えているが、生活保護受給中の自分が相続できるのか不安に思っている方もいるでしょう。
生活保護を受給していても相続権は失われませんが、多額の財産を相続すると受給資格を失い、生活保護が打ち切られる可能性があります。

この記事では、相続が生活保護に与える影響や、受給を続けられる相続財産額の目安について詳しく解説します。
生活保護受給者が相続に迷った際に相談すべき人や、相続が不正受給につながる可能性のある行動についても解説していますので、参考にしてください。

目次

生活保護を受給しながら遺産相続することは可能

生活保護を受給していても、遺産を相続することができます。
遺産を相続する権利は、相続人に認められた法律上の権利です。
生活保護を受給しているからといって、相続する権利が失われるわけではありません。

ただし、遺産を相続した場合、相続税の支払い義務が発生する可能性があることを知っておく必要があります。
生活保護を受給していても、相続税は免除されません。
生活保護を受給中でも、遺産を相続した場合、相続した遺産の合計額が相続税の基礎控除額を超えれば、相続税の支払い義務が発生します。

相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されるため、遺産に複数の不動産が含まれていない限り、基礎控除額を超えることはあまりないかもしれません。

ただし、都心に不動産を持っている場合など、相続税評価額の高い場所に不動産を持っていると、基礎控除額を超えて相続税の支払い義務が発生する可能性があるため、注意が必要です。

参考:No.4152 相続税の計|国税庁

 

財産の価値によっては生活保護が受けられなくなる可能性あり

先述したとおり、生活保護受給中でも遺産の相続は可能ですが、相続財産の金額によっては生活保護が受けられなくなる可能性があります。

生活保護法においては、生活保護の受給要件を以下のように規定しています。

 

第4条

  • 1. 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
  • 2. 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

引用:生活保護法4条|e-Gov法令検索

生活保護の基準は所在地によって異なりますが、「自力で最低限度の生活を維持できないこと」が受給の基本要件です。
生活保護は「最低限度の生活を維持するため」に認められた制度です。
多額の遺産を相続すると、生活保護を受給しなくても生活できると判断され、「受給停止」または「廃止」になる可能性があります。
生活保護を継続して受けられる場合でも、審査次第で受給額が減額される可能性があります。
生活保護の受給が廃止されると、各種税金の免除が受けられなくなるため、注意が必要です。

参考:生活保護制度|厚生労働省
参考:生活保護について|新宿区

 

相続財産が少額なら生活保護への影響はない

相続した財産が少額であれば、遺産の相続によって生活保護が受けられなくなることはありません。

たとえば、不動産などの高額な財産がなく、生活保護費の1か月にも満たない預貯金のみを相続した場合、生活保護の受給を継続できる可能性が高いです。
なぜなら、相続した少額の預貯金だけでは生活が成り立たないからです。

また、相続財産の中に不動産のような高額な財産が含まれていても、所在地の関係で売却が難しい場合もあります。
その土地を活用しても最低限度の生活を維持できない場合、基本的に生活保護が打ち切られることはありません。

生活保護の受給を続けられる相続財産はいくらまでか

生活保護の受給に影響のない相続財産額について、法律上の具体的な規定はありませんが、一般的な目安は生活保護費の6か月分程度とされています。
相続による臨時収入があっても、6か月以内に再び最低限度の生活を維持できなくなると予想される場合は、生活保護の「廃止」ではなく、一時的な「停止」で済む可能性が高いです。
また、居住用や事業用などの必要不可欠な資産や、換金・処分が難しい財産については、相続しても生活保護の受給に影響は少ないと考えられます。

例えば、亡くなった親名義の家に住んでおり、相続後もその家に住み続ける場合、その家は生活に必要不可欠な財産とみなされ、相続しても生活保護の受給を継続できる可能性が高いです。相続後も生活保護の受給を続けられるかは個別の事情を考慮して決定されるため、不安がある場合は、担当のケースワーカーに相談しておくことをおすすめします。

そもそも生活保護受給者は基本的に相続放棄ができない

生活保護受給者でも相続放棄は可能ですが、生活保護受給中に遺産を相続する権利を放棄すると、生活保護が打ち切られる可能性があります。

生活保護法には「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」と規定されています。相続で生活の足しとなる財産を取得できるのに、相続放棄でその財産を手放すことは、生活保護の受給条件を満たさなくなる可能性があります。

遺産を相続すると生活保護が打ち切られるのではないかという不安から、相続放棄をしたくなる気持ちもわかります。しかし、相続放棄をすることで生活保護が打ち切られる可能性があるため、生活保護受給中は安易に相続放棄をしない方が賢明です。

例外的に生活保護受給者が相続放棄を検討できるケース

生活保護受給中に相続放棄をすると、生活保護がもらえなくなる可能性があると先述しました。
しかし、すべてのケースで相続放棄が生活保護の受給要件に反するわけではありません。
ここからは、相続放棄をしても生活保護が打ち切られない可能性の高い2つのケースについて解説します。

 

相続することで負債を抱えてしまうケース

貯金や不動産などのプラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産の方が多く、相続することで負債を抱えてしまう場合は、相続放棄しても生活保護の受給を継続できる可能性が高いです。

相続すると、借金を含む被相続人の遺産すべてを引き継ぐことになります。
預貯金や不動産といったプラスの財産のみを引き継ぎ、借金だけを相続しないということはできません。
債務超過の遺産を引き継ぐと、被相続人の借金返済に追われ、生活が成り立たなくなるリスクがあります。

相続放棄が最低限度の生活を維持するために必要であれば、相続放棄をしても生活保護の受給を継続できるでしょう。

 

相続財産に処分が難しい不動産が含まれるケース

相続財産に処分が難しい不動産が含まれる場合、相続放棄をしても生活保護の受給を継続できる可能性があります。

不動産にはさまざまな種類があり、売却して利益を得られるものもあれば、立地条件から処分が難しいものや有効活用できないものもあります。

例えば、農地や山林など用途が限定される不動産や、山の中にある不動産を相続した場合、有効活用ができないばかりか、維持・管理費用がかかり、負担が増える可能性があります。
相続によって生活環境が悪化する場合、高価な不動産の相続放棄でも生活保護を継続できる可能性が高いです。

ただし、他の相続財産の内容次第では、相続放棄によって生活保護の受給要件を満たさなくなる可能性もあります。生活保護受給中の相続については、自己判断で手続きを進めないようにしましょう。

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生活保護受給者が相続するか迷った際に相談すべき人

生活保護受給中に相続が発生した場合、ケースワーカー、もしくは相続の専門家である弁護士や司法書士に相談することがおすすめです。

それぞれどのような場合に相談すべきか、解説していきます。

 

ケースワーカー

生活保護受給中であれば、まずは担当のケースワーカーに相談しましょう。

ケースワーカーとは、さまざまな事情で問題を抱えている方の自立支援を行う福祉事務所の職員です。
生活保護を受給している場合、担当のケースワーカーが定期的に自宅を訪問し、自立支援に関するさまざまなサポートをしてくれます。

ケースワーカーは、生活保護を受けている状態で相続すべきかについて、その人に適したアドバイスをくれるでしょう。

生活保護受給者は、収入・支出その他生計の状況に変動があった場合、保護の実施機関または福祉事務所長に現状を報告する義務があります(生活保護法第61条)。

担当のケースワーカーには、相続による臨時収入の可能性を報告する義務があるため、早い段階で相続すべきかどうかを確認しておくとよいでしょう。

参考:福祉事務所ケースワーカー|職業情報提供サイト jobtag
参考:生活保護法|e-Gov 法令検索

 

弁護士や司法書士などの専門家

生活保護受給中でも、相続の問題は弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。
弁護士や司法書士に相談すれば、相続が生活保護に与える影響に限らず、遺産相続全般について適切なアドバイスをもらえます。

専門家によって依頼できる範囲は異なりますが、司法書士には相続放棄の手続き、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更の登記などをまとめて依頼できます。
自己判断で相続を決めると、生活保護の受給が停止または廃止される可能性があります。

各自治体の無料相談や士業事務所の初回無料相談を活用すれば、費用もかからず気軽に相談できます。
早めに相談しておきましょう。

相続が理由で打ち切られたあとに再び生活保護を受給することは可能

遺産相続が原因で生活保護が打ち切られた後、再び生活が困窮して受給要件を満たすこともあるでしょう。その場合、再度申請することで、生活保護を再び受給することが可能です。
例えば、相続した遺産を使い切り、自力で最低限度の生活を維持できない状態に再び陥ったケースなどがこれに該当します。

一度生活保護が廃止されている場合、再度の審査が必要ですが、申請が受理されれば再び生活保護を受けられます。
なお、生活保護の受給が「停止」されている場合、再申請することで速やかに受給を再開できますが、「廃止」された場合は申請だけでなく審査も必要になります。

相続によって生活保護の不正受給となりうるNG行動

生活保護受給中に遺産を相続する際は、生活保護の不正受給とならないよう、十分に注意が必要です。

不正受給をした場合、生活保護費の返還義務を負い、不正に受給した生活保護費に最大40%が上乗せされた徴収金の請求を受ける可能性があります(生活保護法第78条)。くれぐれも注意してください。

ここでは、相続によって生活保護の不正受給となり得るNG行動を3つご紹介します。

参考: 生活保護法|e-Gov 法令検索

 

相続したにも関わらず福祉事務所に届け出をしない

生活保護への影響が心配だからといって、遺産相続による臨時収入を福祉事務所に報告しないのはNGです。生活保護受給者は、臨時収入があった場合、福祉事務所長に報告する義務があります。
多額の遺産を相続した場合、その金額によっては生活保護の受給要件を満たさなくなったり、受給額を再検討する必要があるからです。

相続しても財産額によっては生活保護を受給できますが、財産隠しをした場合、生活保護の廃止や不正受給分の返還を求められる可能性があります。
ペナルティを受けないためにも、遺産を相続した場合は必ず福祉事務所に届け出ましょう。

参考: 生活保護法|e-Gov 法令検索

 

相続する財産を意図的に減らす

合理的な理由がないのに相続財産を意図的に減らす行為も、決して行ってはいけません。

生活保護は、さまざまな理由で生活ができない人が、健康で文化的な最低限度の生活を送るための生活支援です。
相続財産を意図的に減らし、自身の財産を少なく見せるような悪質な行為は、生活保護の制度趣旨に反します。

相続する財産を意図的に減らす行為としては、遺産分割協議で自分の相続財産を意図的に少なくしてもらうことや、相続した財産の名義変更をして自分名義の財産ではないように見せかけることなどがあります。

特に悪質な行為と認められる場合、生活保護の返還だけでなく、詐欺罪として刑法上のペナルティを受けるおそれもあります。

意図せずにNG行為に該当する行為をしてしまう可能性もあるため、生活保護受給中の相続に関しては、自己判断しないことが重要です。

 

相続で財産を得る予定にもかかわらず生活保護の受給申請をする

相続で財産を得る予定があるにも関わらず、それを隠して生活保護を申請すると、申請が認められても後から生活保護費の返還を求められる可能性があります。
相続した遺産で生活できるのであれば、生活保護は必要ありません。
そのため、相続で臨時収入を得る予定がある場合は生活保護を申請できません。

また、生活保護の審査で扶養できる親族が見つかると、申請が受理されない可能性もあります。
調査の結果、受給申請が悪質と判断されると、生活保護の打ち切りだけでなく、これまでに受け取った生活保護費の返還を求められる可能性もあります。
近い将来、相続で多額の財産を得る予定がある場合、生活保護の受給申請は難しいと考えてください。

まとめ

遺産を相続することで生活保護が打ち切られることはありませんが、相続する財産の額によっては、受給が停止または廃止になる可能性があります。

また、生活保護受給者がむやみに相続放棄をすると、得られるはずの財産を手放したために生活保護が打ち切られる可能性もあります。

相続放棄をしても受給に影響がない場合もありますが、自己判断でむやみに相続放棄をするのは避けたほうが無難です。

また、不正受給を疑われる場合には、生活保護が打ち切られたり、すでに受給された分の生活保護費を返還するよう求められることもあります。

生活保護を受給している状況で相続するかどうかの判断は、素人には難しいものです。
ケースワーカーや法律の専門家に任せることをおすすめします。

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