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相続コラム

相続放棄

相続放棄しても遺族年金は受け取るための受給条件や注意点

「相続放棄すると、遺族年金をもらえなくなるのではないか?」あるいは「遺族年金を受給すると相続放棄ができなくなるのではないか?」と思い、相続放棄するかどうかを迷っている方もいるかもしれません。
今後、生活していくためにも、遺族年金の受給可否は非常に重要な問題です。
相続放棄と遺族年金との関連については、正しい知識を得た上で対処することが望ましいでしょう。

本記事では、相続放棄しても遺族年金を受け取れる条件や、受給額の目安などをご紹介します。
今後の生活への不安を払拭するためにも、ぜひ参考にしてください。

目次

相続放棄しても条件を満たせば遺族年金を受け取れる

まずはじめに、遺族年金の種類について簡単に解説します。
遺族年金には、下記の2種類があります。

  • 遺族基礎年金:亡くなった者が国民年金の加入者だった場合の年金
  • 遺族厚生年金:亡くなった者が厚生年金の加入者だった場合の年金

相続においては、どちらも受取人固有の財産とみなされます。
相続財産には含まれません。
そのため、相続放棄しても遺族基礎年金、遺族構成年金ともに受け取れます。
ただし、受け取るためには条件を満たす必要があります。
詳しい受け取り条件については後ほどご紹介します。

また、受け取れる人には優先順位が決められてます。
たとえ条件を満たしていたとしても、自身より優先度の高い人がいれば受け取れない可能性があります。

遺族年金を受け取る条件

遺族年金には、受け取るための条件があり、遺族であれば誰もが受け取れるわけではありません。
遺族基礎年金と遺族厚生年金で条件を順番に解説していきます。

遺族基礎年金|亡くなった人に生計維持されていた配偶者または子

遺族基礎年金の受給について、対象者と条件をお伝えします。
まず、対象者は以下の通りです。

  • 子のいる配偶者

「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をさします。

遺族基礎年金の受給できる配偶者は、子のいる配偶者に限定されています。
子どもがいない場合、条件を満たす子どもがいない場合は受給することができません。
次に、受給できる条件は以下の通りです。

  • 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  • 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
  • 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
  • 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
  • 受け取る者が、亡くなった者に生計を維持されていたこと

ここでいう「生計を維持されていた」とは、亡くなった当時、亡くなった者と生計を同一にしていた者のことを指します。
同居していた者のほか、別居であっても仕送りを受けていたり、健康保険の被扶養者であったりした場合も該当します。
また、原則として前年の年収850万円未満の者、または所得が655万5,000円未満の者に該当することも「生計を維持されていた」を満たす条件です。

遺族厚生年金|亡くなった人に生計維持されていた遺族

遺族基礎年金が対象となる子どもがいなければ受け取れないのに対し、遺族厚生年金は遺族であれば受け取りの対象者となります。
その上で、以下の条件を満たしていれば、遺族厚生年金を受給できます。

  • 亡くなった者が厚生年金保険を受給中であったか被保険者であった
  • 受け取る者が亡くなった者によって生計維持されていた遺族であること

遺族厚生年金は、死亡時に厚生年金に加入していなくても、過去に加入していたことがあれば、受け取れる可能性があります。
先ほどもお伝えしたように、遺族であれば遺族厚生年金の受給対象者になりますが、受け取りには以下のように優先順位があり、最も優先順位が高い方が受給します。
そのため、遺族であり、条件を満たしていても、順位が上の方がいると、年金を受給できない可能性があります。

順位 受給資格者
第1順位 配偶者
第2順位
第3順位 子のない配偶者
第4順位 父母
第5順位
第6順位 祖父母

遺族年金の受給額の目安

今後も生活していかなければならない遺族にとって、いくら受給できるかは非常に気になる問題でしょう。
ここでは、遺族が受給できる遺族年金の額についてご紹介します。
ただし、年金額は賃金や物価などの変動に応じて毎年度見直しがおこなわれるため、こちらでご紹介する金額はあくまで目安です。
参考程度に留めておいてください。

遺族基礎年金|年額816,000円+子どもの人数ごとに加算

遺族基礎年金の年額は、以下の計算式にて算出できます。

  • 遺族年金の年額=816,000円+子どもの人数に応じた加算額

上記は配偶者が昭和31年4月2日以降に生まれた場合です。
昭和31年4月1日以前の場合は「813,700円 + 子の加算額」で計算します。
子どもの人数に応じた加算額は以下のように決まっています。

子どもの人数 加算額
1 234,800円
2 469,600円
3人目以降 1人増えるごとに78,300円ずつ加算

※2024年4月時点

また、配偶者がおらず、子どもが受け取る場合は金額が変わり、以下の計算式で算出します。

  • 遺族年金の年額=816,000円+2人目以降の子の加算額
対象となる子ども 加算額
2人目 234,800円
3人目以降 78,300円

※2024年4月時点

先述したとおり、金額は毎年見直しがおこなわれます。
そのため、必ず事前に確認するようにしてください。

【参考】遺族年金ガイド 令和6年度版|日本年金機構

遺族厚生年金|亡くなった人の給与額によって異なる

遺族厚生年金の支給額は、亡くなった者の厚生年金の加入期間や給与の額に応じて異なり、以下のような計算式で算出します。
とても複雑な計算となりますので覚える必要はありませんが、参考までにご覧ください。

  • 報酬比例部分の年金額×3/4

報酬比例部分の年金額は以下のように計算することができます。

報酬比例部分の年金額=2003年3月以前の加入期間の支給額(A)+2003年4月以降の加入期間のに支給額(B)

A=平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
B=平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数

たとえば、2003年4月以降の加入期間が25年だった場合、各平均標準報酬額ごとの支給額の目安は以下のとおりです。

平均標準報酬額 遺族厚生年金の年額(年額)
20万円 328,860円
(=20万円×(5.481/1000)×(12か月×25年)×3/4)
30万円 493,290円
40万円 657,720円

※2024年4月時点

なお、遺族基礎年金の受給資格も同時に満たす場合、受け取り額は、遺族基礎年金分も加算した額となります。

【関連記事】遺族年金はいつまで受け取れる?手続き期間や受給額の具体例も
【参考】遺族年金ガイド 令和6年度版|日本年金機構

遺族年金を受け取る際に必要なもの

遺族年金を請求する際には、下記の書類が必要です。

必要書類 備考(入手できる場所など)
年金請求書 入手できる場所
・日本年金機構のホームページ
・住所地の市区町村役場
・近くの年金事務所
・年金相談センターの窓口
基礎年金番号通知書または年金手帳など 基礎年金番号を確認できる書類
戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し ・戸籍謄本は受給権発生日以降、6ヶ月以内に発行されたもの
・法定相続情報一覧図は法務局ホームページからフォーマットをダウンロードして作成
亡くなった方の住民票の除票 世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要
死亡診断書(死体検案書など)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
受取先金融機関の通帳など 請求者本人名義のもの
世帯全員の住民票の写し マイナンバーの記入によって添付を省略可能
所得証明書、源泉徴収票など、請求者の収入が確認できる書類 同上
在学証明書や学生証のコピーなど、子の収入が確認できる書類 同上

また、死亡の原因が第三者行為の場合などは、追加で書類が必要です。
詳しくは、日本年金機構の公式サイトでご確認ください。

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遺族年金以外に相続放棄しても受け取れるお金

以下でご紹介するお金は、遺族年金と同じように相続財産には含まれないため、相続放棄しても受け取れます。

  • 寡婦年金や死亡一時金
  • 生命保険の死亡保険金
  • 未払給与や死亡退職金
  • 未支給年金

一つずつ概要を解説します。

1.寡婦年金や死亡一時金

寡婦年金、死亡一時金ともに遺族基礎年金の一種です。
条件を満たせば受け取れる可能性があります。

寡婦年金とは、夫が亡くなった場合に、妻に対して支給される可能性のある遺族年金です。
以下の条件を満たすことで、60歳から65歳になるまでの間受け取れます。

  • 亡くなる前日までに、夫の国民年金第1号被保険者の保険料納付済期間と保険料免除期間とが合わせて10年以上ある
  • 夫によって生計を維持されていた
  • 事実婚を含む、夫との婚姻関係が10年以上継続していた
  • 妻の年齢が65歳未満
  • 夫が老齢基礎年金や障害基礎年金の受給歴がない

寡婦年金は、遺族基礎年金や死亡一時金と同時の受給はできません。
遺族基礎年金の受給条件を満たす間は遺族基礎年金を、その後は寡婦年金をというように時間差で受給するとよいでしょう。

死亡一時金とは、遺族基礎年金の受給要件を満たさず、受給できない場合に受け取れる可能性のある年金です。
以下の条件を満たす場合に受け取れます。

  • 亡くなる前日時点で、国民年金の保険料納付済期間が36か月以上あること
  • 亡くなった者と同一生計だったこと

また、受給できる者には、以下のような優先順位があります。

順位 受給資格者
第1順位 配偶者
第2順位
第3順位 父母
第4順位
第5順位 祖父母
第6順位 兄弟姉妹

ほかにも条件があるため、詳しくは日本年金機構の公式サイトをご確認ください。

2.生命保険の死亡保険金

死亡保険金は受取人固有の財産とみなされるため、以下のいずれかの条件を満たせば、相続放棄しても受け取れます。

  • 相続放棄した人が受取人として指定されている
  • 受取人の指定はないが、約款などで法定相続人が受け取ると定められている

相続放棄すると相続人ではなくなり、相続税を納付する必要はありません。
しかし、死亡保険金は「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象となることには注意が必要です。
相続人であれば適用される非課税限度額が、相続放棄すると適用されないため、相続税が高くなる可能性もあります。
ただし、相続放棄した場合でも相続税の基礎控除は適用され、相続税評価額の合計が「3000万円+600万円×法定相続人の数」で求められる金額以下の場合は課税されません。

3.未払給与や死亡退職金

未支給年金とは、年金を受給していた者が亡くなった場合に発生する年金です。
通常、遺族の名前で請求されるため、遺族の固有財産とみなされます。
そのため、相続財産には含まれず、相続放棄しても受け取れる可能性があります。
未支給年金を受け取れるのは、以下の条件を満たす場合です。

  • 亡くなった者と生計を同じくしていた
  • 配偶者、子、父母、兄弟姉妹など、亡くなった者の3親等内の親族

未支給年金の請求には時効があり、5年を経過すると請求できません。

また、確定申告が必要になる可能性がある点にも注意しましょう。

相続放棄すると受け取れないもの

相続放棄をしようと考えているのであれば、相続財産は一切受け取ってはいけません。
受け取ってしまうと、単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるためです。
相続放棄する場合に受け取れない相続財産の例としては、以下のような財産が挙げられます。

  • 亡くなった者の名義の預貯金や不動産
  • 高額療養費の還付金
  • 税金や健康保険などの還付金

また、死亡保険金や死亡退職金は、約款や就業規則などにおける、受取人の規定によって扱いが変わります。
よく確認した上で対処しましょう。

相続放棄して遺族年金を受け取ると確定申告が必要な場合がある

相続放棄すれば、亡くなった者の確定申告をおこなう必要はありません。
しかし、未支給年金や死亡一時金などを受け取ると、その支給金を受け取った者の一時所得とみなされるため、金額によっては確定申告が必要です。
一時所得については特別控除額が設けられており、一時所得の合計額が50万円以下であれば確定申告は必要ありません。一方で、50万円を超える場合は確定申告が必要です。

まとめ

遺族年金は、受取人の固有財産とみなされることから、受給要件を満たしていれば相続放棄しても受け取れます。
「相続放棄をしたら遺族年金を受け取れないのではないか?」と疑問に思うかもしれませんが、そのようなことはありませんので、安心して相続放棄を進めてください。
また、遺族年金のほかにも、相続放棄しても受け取れる財産がありますので、相続放棄の影響を受ける財産、受けない財産は相続放棄をする前に把握しておくのが良いでしょう。
相続放棄と遺族年金の関係性のように、相続放棄に関して少しでも不明な点などがある場合には、専門家に相談しながら手続きを進めることをおすすめいたします。

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