相続放棄
衣類を処分しても相続放棄できる?判例やできないケースを解説
一緒に住んでいた家族が借金を残して亡くなり、相続放棄を検討することもあるでしょう。
相続放棄は、亡くなった方の財産を放棄する手続きのため、基本的に遺品を勝手に処分できません。
これは衣類にも当てはまるのでしょうか?
この記事では、衣類を処分した場合に相続放棄ができなくなるケースや、相続放棄が認められた判例、衣類を処分する際に気を付けるべきポイントについて、わかりやすく解説していきます。
目次
相続放棄の前後で衣類を処分しても問題ないケースが多い
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分した」場合、相続人は単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。
単純承認とは、相続財産を無条件で引き継ぐことを認めることです。
そのため、単純承認に該当する行為があった場合、相続放棄は認められなくなるのが原則です。
この単純承認が認められる条件に、遺品整理で衣類を処分することが当てはまるかですが、財産的価値のない衣類であれば、当てはまらないことが多いです。
衣類の処分も「相続財産の処分」には該当しますが、財産的価値のない衣類であれば、家族や親族が遺品整理で処分するのが当たり前で、処分した衣類が価値のある財産だと認められない限り、単純承認には該当しないと考えられるからです。
ただし、必ず大丈夫と言えるものではありませんので、相続放棄前後の遺品整理の際には気を付ける必要があります。
そもそも、衣類の処分を急ぐ必要はないので、特別な事情がないのであれば、相続放棄後に衣類の処分を行ったほうが良いでしょう。
衣類を処分して相続放棄ができなくなってしまうケース
相続放棄前後で衣類を処分しても問題ない場合がほとんどですが、処分した衣類に財産的価値が認められると、相続放棄ができなくなることもあります。
ここでは、衣類の処分が単純承認に該当するケースについて、「着物など衣類自体の価値が高額だったケース」および「高額な衣類やアクセサリーを形見分けしたケース」の2つを解説していきます。
着物など衣類自体の価値が高額だったケース
着物や高価なブランド、ヴィンテージの衣類など、衣類自体に財産的価値が認められる場合は、勝手に処分すると単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
財産的価値が認められるかはあくまでも裁判所の判断となるため、具体的な金額やブランドが決まっているわけではありません。
そのため、財産的価値がありそうだと感じる衣類は、基本的に相続放棄前後での処分は避けたほうが無難です。
高額な衣類やアクセサリーを形見分けしたケース
被相続人が大事に使っていた高額な衣類やアクセサリーを型見分けすることもあるでしょう。
しかし、思い出として勝手に引き取ったりする行為は、単純承認に該当する可能性があります。
ほとんど財産的価値のない衣類であれば、形見分けしても相続放棄に影響しない可能性が高いでしょう。
一方で、形見分けをした衣類やアクセサリーの中に高価な貴金属や財産的価値のあるブランド物のバッグなどが一つでもあると、相続放棄できなくなる可能性が出てきます。
「処分するわけではないから形見分けなら問題ないだろう」と自己判断で遺品を引き取って後悔しないよう、十分に注意してください。
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衣類を処分しても相続放棄が認められた判例
衣類を処分すると相続放棄が認められなくなるかはケースバイケースです。
ここでは、「衣類などを処分した事案」および「衣類などを形見分けした事案」の2つの裁判例をご紹介します。
衣類などを処分した事案に関する判例
【事案】
● 行方不明だった被相続人が遠隔地で亡くなった ● 警察署から死亡を知らされた相続人の妻およびその子どもは、警察から遺品を持ち帰るよう求められた ● 持ち帰ったものは、「被相続人の着衣」、「身回り品」、「経済的価値のない財布などの雑品」「被相続人の所持金2万432円」 ● その後、相続人は相続放棄の申述をおこなった |
【判決】
この裁判では、「これらのわずかな金品が相続財産(積極財産)には該当するとは社会通念上認められない」、「経済的価値が無いに等しい見回り品やわずかな所持金は、慣習上、相続人が処分することが認められている」として、単純承認には該当しないと判断されました。
衣類などを形見分けした事案に関する判例
山口地裁徳山支部昭和40年5月13日判決(判例タイムズ204号191頁)の内容を紹介します。
【事案】
● 相続人は、形見分けとして、被相続人の「背広上下」、「冬用のオーバーコート」、「スプリングコート」、「故人の位牌」、「その他目ぼしきもの」を持ち帰った ● 後日、「椅子(一脚は足が折れている)」「時計」を送ってもらった ● 相続人は相続放棄の申述をおこなった |
【判決】
このケースでは、他の遺産には一切手をつけていないことも考慮されたうえで、形見分けとしてこれらの遺産を引き取る行為は単純承認に該当しないと判断されています。
相続放棄の前後で衣類を処分する際に気を付けるべきポイント
遺品である衣類を勝手に処分するのが良くないとわかっていても、なるべく早く家の片付けをしたい方も多いと思います。
もし、相続放棄前後で衣類を処分しなくてはいけないのであれば、次の2つの点を頭に入れておきましょう。
● 事前に査定書などがないか確認しておく ● 高そうなものは専門業者に事前に査定してもらう |
以下で、それぞれ解説していきます。
事前に査定書などがないか確認しておく
遺品である衣類を処分する前に、あらかじめ査定書などがないか確認しておくのが良いでしょう。
有名なブランド衣類であればすぐにわかりますが、見た目だけでは高価なものか判断できない衣類も存在します。
もし、商品を購入した際の明細書や査定書などが見つかれば、その衣類が高額なものかを正確に判断できます。
遺品整理で衣類を処分するのであれば、高額商品の証明となるものが家にあるかを事前に確認しておきましょう。
高そうなものは専門業者に事前に査定してもらう
少しでも高額な衣類である可能性を感じたのであれば、専門業者に査定してもらって、価値のある衣類かどうかの証拠を得ておきましょう。
生前、亡くなった方がブランド品を好んで着用していた場合、一見すると安そうに見える衣類であっても、実はブランド物の高額な衣類だったというケースは起こり得ます。
自分で判断できないのであれば、専門家に財産的価値があるかを調べてもらうと、安心して遺品整理をできるでしょう。
衣類だけでなく家具・家電の処分も気を付ける
相続放棄を検討している場合には、衣類だけでなく、家具・家電の処分についても気を付ける必要があります。
財産的価値のある家具や家電を勝手に処分した場合、単純承認に該当し、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
日常的に使用していた家財道具であれば、市場に出しても高額な価値が認められるケースはほとんどないので、相続放棄が認められなくなることは基本的にありません。
一方で、家具・家電にはパソコンやテレビなどの高額商品もあるため、安易に財産的価値がないと決めつけるのは避けた方が良いでしょう。
また、一見するとただの古い家具でも、市場に出してみたらアンティーク品として価値が付くケースもあります。
自己判断で勝手に廃棄処分や売却をせず、処分に迷ったら、相続手続きの専門家である司法書士などに相談してみることをおすすめします。
まとめ
亡くなった方の衣類を処分しても、相続放棄には影響しないことが多いです。
ただし、ブランド品などの財産的価値のある衣類を処分した場合には、単純承認とみなされ相続放棄が認められなくなる可能性もありますのでご注意ください。
相続放棄が認められなくなると、亡くなった方の借金を背負うことにもなりかねないので、特別な事情がなければ、遺品整理は相続放棄が認められたあとに行うことをおすすめします。
どうしても、すぐに衣類を処分したい場合は、高額だと思われる衣類を査定に出して、財産的価値があるかどうかをチェックしましょう。
このように、相続放棄をする際は、様々なことに注意しなくてはなりません。
もし、不安なことがあれば相続の専門家である司法書士に聞いてみることをおすすめします。
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相続に関するお悩みは、みつ葉の司法書士までお気軽にご相談ください。
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