メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

相続放棄

相続放棄したら孫に相続権が移る?相続権が回ってくるケースや対処法を解説

#

借金を残した親が亡くなり自身が相続放棄をする場合、自身の子どもが借金を背負うことになってしまわないか不安に思う方も多いと思います。
もし、被相続人からみて孫にあたる自身の子どもに相続権が回ってしまうのであれば、借金を背負わせないためにも「自身の相続放棄自体を考え直すべきなのでは?」と悩む方もいることでしょう。
相続について正しい知識を入れておかなければ、相続放棄すべきかどうかの判断が難しくなってしまいます。
この記事では、被相続人の子どもが相続放棄をした場合、孫に相続権が回ってくるのかについて詳しく解説していきます。
また、未成年の孫に相続権が回ってきた場合の対処法や、孫が相続放棄をする場合の注意点などについてもご紹介するので、ぜひ最後までご一読ください。

目次

子どもが相続放棄しても孫への代襲相続は発生しない

被相続人の子どもが相続放棄しても、原則として孫への代襲相続(だいしゅうそうぞく)は発生しません。
代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人が死亡している場合や、何らかの理由で相続権を失っている場合に、相続人の子どもが遺産を相続する制度のことです(民法887条)。
相続人が相続放棄をして相続権を失ったら、代襲相続により被相続人の孫に相続権が移るように感じるかもしれません。
しかし、相続放棄の場合は代襲相続は発生しません。
したがって、被相続人の子どもが相続放棄をしても、被相続人の孫に相続権が移ることはありません。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

孫に相続権が回ってくるケース

相続放棄によって被相続人の孫に相続権が移ることはありませんが、以下のケースでは、孫に相続権が回ってくることがあります。

1. 被相続人より先に子ども(孫の親)が亡くなっているケース
2. 子どもが相続欠格・廃除によって相続人の資格を失ったケース
3. 被相続人と孫が養子縁組をしているケース

以下で、それぞれ具体的に確認していきましょう。

1.被相続人より先に子ども(孫の親)が亡くなっているケース

被相続人よりも先に子ども(孫の親)が亡くなっている場合は、代襲相続が発生し、孫に相続権が回ってきます。
たとえば、Aさんが亡くなり、その子どもであるBさんがAさんより先になくなっていた場合、Bさんの子ども(Aさんの孫)であるCさんが代襲相続によって相続人となります。
なお、AさんとBさんが同じ事故などで死亡した場合など、どちらが先に死亡したのかわからない場合でも代襲相続が発生し、Cさんが相続人となります。

2.子どもが相続欠格・廃除によって相続人の資格を失ったケース

被相続人の子どもが民法891条によって定められた相続欠格・廃除の規定に当てはまり、相続人としての資格を失っている場合にも、代襲相続が発生し、被相続人の孫が相続人となることがあります。
相続欠格に該当するのは次のようなケースです。

  • ● 被相続人や同順位の相続人を殺害した、もしくは殺害しようとした者
  • ● 被相続人が殺害されたことを知りながら、それを告発しなかった者
  • ● 遺言書の破棄や偽造、隠蔽を行った者

一方の相続廃除とは、相続人が被相続人に対して虐待・侮辱・非行などの行為をした場合に、家庭裁判所に申し立てて相続権を失わせることができる制度です。
相続廃除は、生前に家庭裁判所へ申し立てるだけではなく、遺言によっておこなうことも可能です。
このように、相続欠格・廃除により子どもが相続人ではなくなっている場合には、代襲相続が発生し、孫に相続権が回ってきます。

【参考】民法891条|e-Gov法令検索

3.被相続人と孫が養子縁組をしているケース

被相続人と孫が養子縁組をしている場合、子どもと同様に孫も第1順位の相続人となります。
たとえば、被相続人であるAさん、その子どもであるBさん、孫であるCさんがいて、CさんがAさんと養子縁組をしていると、CさんはBさんと同順位の相続人になります。
このように、孫が被相続人の養子(子ども)になっている場合には、孫も相続する権利を持ちます。

相続や遺言の
無料相談受付中!

お気軽にお問い合わせください!

孫が相続放棄する場合の手続き方法

代襲相続や被相続人との養子縁組などで孫に相続権が回ってきた場合、遺産を相続したくないのであれば相続放棄をすることとなるでしょう。
ここでは、孫が相続放棄をする場合の手続き方法について、必要書類や相続放棄の期限などを解説していきます。

1.戸籍などの必要書類を集める

相続放棄は、家庭裁判所に必要書類を提出することでおこないます。
具体的な必要書類は、以下のとおりです。

  • ● 相続放棄の申述書
  • ● 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • ● 申述人(相続放棄する人=孫)の戸籍謄本
  • ● 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • ● 被代襲者(本来の相続人=孫の親)の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

相続放棄申述書の書式は、家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。
なお、相続放棄の申述をおこなうためには、収入印紙800円分、および戸籍や住民票などの書類取得費用も必要です。
また、司法書士などの専門家に、書類収集や相続放棄申述書の作成代行を依頼する場合は、別途依頼費用がかかることを頭に入れておきましょう。

2.期限内に家庭裁判所で申し立てる

必要書類を揃えたら、期限内に家庭裁判所に書類を提出し、相続放棄の申述をおこないます。
申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所であればどこでもよいわけではないので、住民票などで管轄裁判所をしっかりと確認しておきましょう。

また、相続放棄をできる期限は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヶ月です。
期限を過ぎると基本的に相続放棄はできなくなるため、注意しましょう。
なお、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」は、多くの場合「被相続人の死亡日」ですが、被相続人と疎遠で亡くなったことを知らなかった場合は、知ったときからカウントが開始されることもあります。

未成年の孫に相続権が回ってきた場合の相続放棄の方法

孫が相続放棄をする場合、孫自身が相続放棄の申述をおこなうことが原則です。
ただし、孫が未成年だった場合には、親権者や未成年後見人などが代理人となって、相続放棄の手続きをおこなう必要があります。
相続放棄は遺産を相続する権利を放棄する行為ですが、判断能力が未熟な未成年者が1人で手続きをしてしまうと、本来得るはずだった財産を手放すことになってしまう可能性もあるからです。
ここでは、未成年者の代わりに相続放棄の申述をおこなえる人について解説していきます。

1.親権者がいる場合|親権者が法定代理人として相続放棄する

親権者がいる場合、その親権者が未成年者の代理人となって手続きをおこなうことが原則です。
ただし、親権者が代理人になれるのは、親権者と未成年者が利益相反の関係にない場合に限られます。
利益相反とは、特定の行為をおこなった場合、お互いの利益が相反する状態のことです。
親権者と未成年者が利益相反関係にならないケースについて、具体例を通して確認してみましょう。

【事例】

  • ● 被相続人Aさんが亡くなる前に、すでにAの子どもであるBさんが亡くなっていた
  • ● Bさんには、未成年である子どもCさんがいる
  • ● Bさんの配偶者Dさんは存命

【結果】
Aさんの相続について代襲相続が発生し、Cさんが相続人となります。Dさんは相続人ではないため、Cさんと利益相反関係にありません。

AさんとDさんは義理の親子のため、Dさんには相続権がありません。
そのため、代襲相続によってCさんが相続人となった場合、Cさんの親であるDさんが法定代理人になっても利益相反関係にはならないのです。

2.親権者はいるが利益相反になる場合|特別代理人の選任を申し立てる

一方で、親権者はいるものの、孫と孫の親権者が利益相反関係にある場合には、特別代理人が未成年者の代わりに相続放棄の手続きをおこないます。
孫とその親権者が利益相反関係にあたる場合とはどのようなケースか、具体例を通して確認してみましょう。

【事例】

  • ● 被相続人Aさんが孫Cさんと養子縁組をしていた
  • ● Cさんは未成年
  • ● Aさんの子どもでCさんの親であるBさんは存命

【結果】
BさんCさんともに第1順位の相続人となります。この場合、Bさんが親権者として未成年者の相続放棄だけをおこなう場合には、BさんとCさんは利益相反関係です。

このように、孫とその親が同順位の相続人である場合に、未成年者である孫についてのみ相続放棄の手続きをおこなうケースでは、利益相反行為に該当します。
Cさんだけが相続放棄をして、Bさんが相続をした場合、Cさんが相続放棄をしたことで、Bさんが相続できる財産が増える可能性があるからです。
利益相反行為に該当する場合には、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをおこない、特別代理人選任を選任してもらわなければなりません。
申立てに必要な書類は、以下のとおりです。

  • ● 申立書
  • ● 未成年者の戸籍謄本
  • ● 親権者または未成年後見人の戸籍謄本
  • ● 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
  • ● 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)

※利害関係人が申立てをおこなう場合、戸籍謄本などの利害関係を証する資料も必要となります。

【参考】特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)|裁判所

なお、申立てには、未成年者1人につき収入印紙800円分、および連絡用の郵便切手代や各種書類の取得費用がかかります。

3.親権者がいない場合|未成年後見人の選任を申し立てる

代理人となる親権者がいない場合には、未成年後見人が未成年者の代わりに相続放棄の手続きをおこないます。
未成年後見人が選任される場合を、具体例で確認してみましょう。

【事例】

  • ● 被相続人Aさんが亡くなる前に、Aさんの子どもであるBさんとBさんの配偶者が亡くなっていた
  • ● Bさんには、未成年である子どもCさんがいる

【結果】
Aさんの相続について代襲相続が発生し、Cさんが相続人となります。Cさんの親権者は両方とも亡くなっているため、未成年後見人が未成年者の代わりに相続放棄の手続きをおこないます。

事例のように孫の親権者が両方とも亡くなっており、代理人として手続きをおこなう者がいない場合には、家庭裁判所に申し立てて未成年後見人を選任してもらわなければなりません。
申立先は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てに必要な書類は、以下を参考にしてください。

  • ● 申立書
  • ● 未成年者の戸籍謄本
  • ● 未成年者の住民票または戸籍附票
  • ● 未成年後見人候補者の戸籍謄本(※1)
  • ● 未成年者に対して親権を行うものがないこと等を証する書面(親権者の死亡の記載された戸籍(除籍、 改製原戸籍)謄本や行方不明の事実を証する書類など)
  • ● 未成年者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳コピー、残高証明書など))

※1 後見人候補者が法人の場合は,当該法人の商業登記簿謄本
※2 利害関係人が申立てをおこなう場合、戸籍謄本などの利害関係を証する資料も必要
※3 親族からの申立ての場合、その親族の戸籍謄本など

【参考】未成年後見人選任|裁判所

なお、申立てには、未成年者1人につき収入印紙800円分、および連絡用の郵便切手代や各種書類の取得費用がかかります。

孫が相続放棄する場合の注意点

孫が相続放棄をする場合、以下の2つの点に注意しましょう。

  • ● 必要書類や手続きが多いため早めに準備を進める
  • ● 相続放棄しても一定期間は保存義務が残る可能性がある

それぞれについて詳しく解説していきます。

1.必要書類や手続きが多いため早めに準備を進める

孫が相続放棄をする場合、必要書類の準備や手続きの手間を考慮し、早めに準備を進めていきましょう。
前述したように、相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月」の期限が設けられています。
限られた時間の中で必要書類を過不足なく集めるのは、想像しているよりも遥かに大変です。

とくに、孫が相続放棄をする場合、子どもが相続放棄する場合よりも必要書類が増えます。
また、孫が未成年の場合には、特別代理人の選任や未成年後見人の申立てが必要になる場合もあるため、さらに時間がかかってしまいます。
「相続放棄したいのに、期限が過ぎていたためにできなかった」という事態を避けるためにも、3ヶ月の期限を意識しながら、早めに準備を進める必要があるでしょう。

2.相続放棄しても一定期間は保存義務が残る可能性がある

相続財産に土地や建物などの不動産が含まれる場合には、保存義務が残る可能性があります。
被相続人の財産の中に土地や建物などがあり、「相続財産に属する財産を現に占有している場合」には、その財産をほかの相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、適切に保存する義務が課されます(民法940条1項)。

たとえば、孫が被相続人名義の家で同居していた場合には、その不動産を「現に占有している」とみなされ、家の保存義務を負うことになるのです。
相続財産清算人を選任してもらうためには、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に対して申立てをおこなう必要があります。

まとめ

相続放棄をすると初めから相続人ではなかったことになるため、基本的には被相続人の子どもが相続放棄しても、被相続人の孫への代襲相続は発生しません。
一方で、相続人となる子どもが亡くなっていたり、相続欠格・排除によって相続人になる資格を失っていたりした場合には、代襲相続が発生して孫が相続人になることもあります。
また、養子縁組によって、孫が相続人になることもあります。
このように、特殊な事情があるケースでは、被相続人が亡くなったことで孫が相続人になることもあり得ます。
「相続人になることはあるのか知りたい」「未成年だからどうすれば良いか知りたい」「相続放棄をしたい」など、孫の相続・相続放棄について疑問点があれば、みつ葉の司法書士までご相談ください。
相続問題に精通した司法書士がご事情を伺い、最適な解決策をご提案いたします。

相続コラムTOP