相続放棄
相続放棄した車の処分方法と注意点について徹底解説!
相続放棄をしたものの、亡くなった方名義の車の処分に困っている方も多いのではないでしょうか?
相続放棄をすると、基本的に亡くなった方名義の車を相続する権利はなくなるため、勝手に処分などしてはいけません。
しかし、売却や廃車手続きをしないままでいると、駐車場代金や自動車保険、自動車税などの請求がきてしまい、大きな負担になります。
そこで本記事では、相続放棄をする際の車の適切な処分方法について、詳しく解説します。
相続放棄前にするべきことや相続放棄をする際の注意点など、さまざまな観点から解説していくので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
車だけの相続放棄はできない
前提として、遺産の中から車だけを選択して相続放棄はできません。
相続放棄は預貯金などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含めたすべての財産について相続する権利を放棄する行為です(民法939条)。
そのため、ほかの財産を相続しているにもかかわらず、車の管理・処分が大変だからといって車だけを相続放棄することはできないのです。
もし、相続財産のうち車だけを手放したいのであれば、相続放棄をするよりも、相続人同士で遺産分割協議をおこない、自分以外の相続人に車を相続する権利を譲る方法を考えた方が良いでしょう。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
相続放棄する場合は被相続人名義の車は自由に処分できない
相続放棄をすると、相続財産である車を相続する権利も失います。
これに伴い、相続放棄後は車を自由に処分できなくなります。
車を勝手に処分した場合には、本来であればその車を相続するはずのほかの相続人や相続財産清算人から、損害賠償を請求される可能性があるでしょう。
また、車を相続する権利を放棄したにもかかわらず相続財産である車を勝手に処分した場合、単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
単純承認とは、遺産の相続を承認したとみなされる民法で規定された一定の行為を指し、「相続財産の全部または一部を処分したとき」(民法921条1号)に該当する行為をすると、たとえ相続放棄をしたあとであっても、相続放棄が認められなくなってしまうおそれがあるのです。
車の処分もこれに当てはまります。
そのため、相続放棄後に車を勝手に処分すると、相続放棄が認められなくなって、車だけでなく、借金を含めたすべての遺産を引き継ぐこととなるため、くれぐれもご注意ください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
車の残債がなく資産価値がなければ処分可能
車のローンをすでに完済しており、かつその車に資産価値が認められなければ、亡くなった方名義の車の売却や廃車登録等をおこなっても単純承認には該当しない可能性があります。
一般的には、車が新車登録されてから5年以上経過している場合には、資産価値がないと判断される傾向にあり、資産価値のない車であれば、単純承認が認められてしまう可能性は低いと言えるでしょう。
ただし、たとえ資産価値のない車だったとしても、勝手に処分することで、その車の使用を希望する他の相続人とトラブルになる可能性もないとはいえません。
そもそも、相続放棄をしている以上は相続財産を勝手に処分してはいけないのが原則なので、判断に迷った場合には、処分する前に専門家に相談したり、他の相続人と話し合ったりするのがよいでしょう。
所有者が被相続人でない場合は相続対象外
車のローンがまだ残っている場合には、資産価値にかかわらず、被相続人の車を勝手に処分してはいけません。
自動車ローンが残っている場合、車の所有権はローン会社やディーラーが持っているケースが多く、
亡くなった方が車の名義人ではない場合には、その車は所有者であるローン会社もしくはディーラーに返還することが原則で、相続財産の対象からは外れます。
その車をどうするかは、ローン契約の内容によっても異なります。
相続財産である車の名義人がローン会社やディーラーになっている場合には、本来の所有者であるローン会社やディーラーと相談して、今後の対応を決めることとなるでしょう。
ただし、車のローンが残っている場合、必ずしもローン会社やディーラーが名義人になっているとも限りません。
車を担保としていない銀行系のマイカーローンの場合、車の名義人が亡くなった方名義となっているケースもあります。
この場合では、ローンが残っている場合でも相続の対象です。
状況によって判断が異なることがありますので、まずは、被相続人の車のローンや契約内容を確認しましょう。
車を相続放棄する前にすべきこと
相続放棄後のトラブルを避けるためにも、車を相続放棄する場合には、主に以下の2つのことをしておきましょう。
車を相続放棄する前にすべき2つのこと |
|
しっかりと下準備をおこなっておくことで、相続財産である車を適切に処分できるようになります。
車の資産価値を査定してもらう
相続放棄をする前に相続する車の資産価値を確認しましょう。
お伝えしたように資産価値のない車であれば、車の売却や廃棄処分等をおこなっても単純承認に該当しない可能性があります。
新車登録から5年以上が経過していれば資産価値はないとお伝えしましたが、これははあくまでも一つの目安で、実情は5年未満でも市場価値がない車もあれば、5年以上経っていても資産価値があると判断される車もあります。
たとえば、クラシックカーなどは、古いことで逆に価値が上がるケースもあるでしょう。
そのため、登録年数だけで車の財産的な価値を決めつけることはできません。
中古車買取業者や自動車査定協会などを利用して査定をしてもらいましょう。
車の名義を確認する
相続財産の中に車がある場合、車の資産価値を把握するのはもちろん、車の名義人が誰になっているかもしっかりと確認しておきましょう。
前述したように、ローン契約の内容によっては、車の名義が亡くなった方ではなくローン会社やディーラーとなっているケースがあります。
一括で車を購入した場合やすでにローンを完済しているのであれば問題はありませんが、まだローンが残っている場合には、名義人であるローン会社やディーラーに車を返還しなければいけない可能性もあります。
つまり、その車が相続財産に該当するかを確認しておかなければ、車の処分をスムーズに進められない可能性があります。
車の名義人は車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄で確認が可能です。
名義人によって車の処分方法も変わってくるため、車の名義人を事前にしっかりと調べておきましょう。
相続や遺言の
無料相談受付中!
-
電話での無料相談はこちら
0120-243-032
受付時間 9:00~18:00
(土日祝日の相談は要予約) -
メールでの
無料相談はこちら
車を相続放棄する際の注意点
車を相続放棄をする際に、気をつけてほしいことを4つ紹介します。
車を相続放棄する際の4つの注意点 |
|
相続放棄で車の処分をスムーズに進めるためにも、これから説明する注意点についてしっかりと理解しておくようにしましょう。
自動車保険の解約のタイミングに気を付ける
相続財産である車の自動車保険の解約をする際には、解約するタイミングに注意しなければなりません。
車の名義人である被相続人が亡くなった場合、その車にかけられている自動車保険を解約する必要があります。
解約せずそのままにしておくと、保険料を請求されてしまうおそれがあるためです。
ただし、相続放棄後に相続財産である車の自動車保険を勝手に解約すると、単純承認とみなされてしまい、相続放棄が認められなくなってしまう可能性があります。
相続財産の中から自動車保険の保険料を支払ってしまった場合も、単純承認に該当する可能性が非常に高いです。
相続放棄をするのであれば、むやみに保険料を支払わないようにしてください。
督促が続くのが面倒といった理由から、保険料を支払ってしまいたいのであれば、相続人のポケットマネーから支払えば、単純承認にはなりません。
その後に別の相続人が車を相続したら、あとからその相続人に対して立て替えた分の保険料を請求することも可能です。
自動車税の滞納がある場合は支払わない
相続放棄をするのであれば、相続財産である車に課された自動車税の支払いもおこなわないようにしてください。
車を相続する場合、その車にかかる自動車税の支払い義務も相続します。
一方、相続放棄をした場合は自動車税の支払い義務も負いません。
亡くなった方名義の自動車税だからといって相続財産である預貯金などから支払いをおこなってしまうと、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
自動車保険と同じように、相続放棄をした者のポケットマネーで立替払いをおこなうことも可能ですが、自身の判断で支払いをおこなってしまうと、万が一、相続放棄が認められなかった場合のデメリットは非常に大きいです。
そのため、相続放棄をするのであれば、相続財産である車の自動車税についても支払わないのが無難といえるでしょう。
被相続人名義の車に乗らない
相続放棄をするのなら、相続財産である車の処分方法が決定するまでは、その車に乗らないようにしてください。
勝手に相続財産である車を乗り回した場合には、相続する意思がある行為とみなされてしまい、相続放棄が認められなくなってしまうおそれがあります。
また、車に乗ることで走行距離が伸びてしまったり、交通事故にあい車に損傷を与えてしまうと、車の資産価値を低下させてしまいかねません。
そうなると、ほかの相続人や相続財産清算人から損害賠償を請求されてしまうおそれもあります。
亡くなった方の車を引き続き使用できるのは、遺産を相続して所有権を得た者だけです。
相続放棄で車を相続する権利を放棄している以上、車を勝手に使用する行為は避けるようにしてください。
なお駐車場内での移動など、車の管理に必要最低限の運転であれば問題にならないケースがほとんどです。
全員が相続放棄した場合は管理義務が発生する可能性がある
相続放棄をしても、相続財産である車を適切に管理する義務が生じるケースがあります。
法律では、「被相続人の車を現に占有」している」といえる場合には、たとえ相続放棄をしても、その車の管理義務があります。(民法940条)
現に所有しているとは、あなたが被相続人名義の車を日常的に使用していた場合などが該当します。
管理義務があるのは、車をほかの相続人が相続するまで、もしくは誰も相続せず、相続財産清算人に引き渡すまでです。
管理責任を怠っての資産価値を下げた場合には、本来であればその車を相続するはずのほかの相続人や相続財産清算人から、損害賠償を請求されるおそれも考えられるでしょう
まとめ
相続財産である車を勝手に売却・廃車してしまうと、単純承認に該当し、相続放棄が認められなくなってしまうおそれがあります。
自動車ローンを完済していて、かつ車の資産価値がない場合など、車の処分をおこなっても問題にならないケースもあるでしょう。
しかし、車の名義人がローン会社やディーラーとなっている場合、その車は相続対象外となり、車の返還義務が生じる可能性があります。
また、自動車保険や自動車税の支払い、相続放棄後に課される車の管理義務など、相続放棄後に車を処分する際には気をつけなければいけない点が多いです。
自身の判断で勝手に車を処分してしまうと、相続放棄が認められなくなってしまい、亡くなった方の借金を背負ってしまうことにもなりかねません。
相続放棄には、このような正しい対応を取らないと単純承認と判断されて相続放棄が認められなくなるケースがいくつか存在します。
確実に相続放棄をしたい方は、司法書士などの専門家に相談して相続放棄失敗のリスクを避けることが大切です。
司法書士法人みつ葉グループでは、相続放棄に関する無料相談を実施していますので、ご不明点があればお気軽にお問い合わせください。
カテゴリ