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相続コラム

相続放棄

相続放棄をするのに税金を払ってしまった際の対処法や注意点

相続放棄をしたいと考えているなら、被相続人の財産はプラス分もマイナス分も処分してはいけません。税金の支払いをおこなうことも厳禁です。
しかし、うっかり支払ってしまい、不安に陥っている方もいるでしょう。そのような場合はどのように対処すればよいのでしょうか。

本記事では、相続放棄予定であるにもかかわらず税金を支払ってしまった場合の対処法や注意点について解説します。すでに被相続人の税金を支払ってしまった方は、ぜひ参考にしてください。

目次

相続財産から税金を払ってしまったら相続放棄できない可能性がある

被相続人が亡くなった後に、下記のような公租公課(国や地方公共団体に納める税金などの負担)を請求される可能性があります。

【請求される可能性のある公租公課】

  • 所得税
  • 住民税
  • 固定資産税
  • 国民健康保険税
  • 年金保険料

これらは相続放棄をすることで、相続人が相続人の代わりに支払いをする必要はなくなります。
新しく請求された分も、滞納分も支払う義務はありません。
相続放棄をするのであれば、相続放棄前に被相続人の公租公課の請求が届いたとしても支払わないようにしましょう。
被相続人の財産から税金を支払うと単純承認とみなされ、相続放棄を認めてもらえなくなる可能性があります。
民法第921条では「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」に単純承認をしたとすると定められており、税金を支払うこともここでいう処分に該当するからです。

ただし、必ず相続放棄をできなくなるわけでなく、具体的な事情などが考慮されて判断されますが、相続放棄をすれば支払い義務がなくなりますし、支払うことで余計なトラブルが起こるリスクがありますので、支払わずにいた方が無難です。

自腹で立て替えた場合は相続放棄できる

単純承認とみなされるのは、相続財産から税金を支払った場合で、相続財産ではなく自分のお金から支払ったのであれば、単純承認とみなされることはありません。
過去の裁判で自分で立て替えたのであれば保存行為に分類され、処分にはあたらないという決定も下されています(福岡高裁宮崎支部 1998年12月22日判決)。
相続放棄をするなら基本的に税金を支払う必要はありませんが、どうしても支払った方が良い事情があるなら、ご自身のお金の中から支払うようにしてください。

【参考】民法(第921条)|e-Gov法令検索

払ってしまった税金は請求によって返金される可能性がある

税金を支払い、それが支払う義務がなかったものだと知ったら、「返してほしい」と思うこともあるでしょう。
しかし、たとえ支払う義務の無かったものだったとしても、被相続人の代わりに支払う行為は「第三者弁済」とされ、有効な弁済とされてしまうため、返してもらえない可能性があります。

ただし、それはあくまで相手方が「返済する必要はない」と主張をした場合の話です。
あなたが「支払い義務のない被相続人の税金を支払ったので返してほしい」と伝え、支払い先が返還に応じれば受け取って問題ありません。
必ず返してもらえるとは限りませんが、支払い先にまずは問い合わせて見るのが良いでしょう。
また、支払い先に対して返還を求めるのではなく、相続をした人に対して「支払った分の税金を払ってほしい」と請求することも可能です(民法第499条 弁済の代位)。

【参考】民法(第499条)|e-Gov法令検索

固定資産税の返金可否は相続放棄のタイミング次第

税金の支払い義務に関して固定資産税に関しては例外であり、タイミングによっては、相続放棄をしても固定資産税の支払い義務が発生する可能性があります。
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点での不動産の所有者だからです。

たとえば、ある年の年末に家族が亡くなり、年をまたいで1月1日以降に相続放棄の申述が受理された場合、納税義務者は所有者であった者の相続人となります。
相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったのと同じ扱いになるとはいえ、1月1日時点では相続権を有していたため、相続人であり納税義務者です。
したがって、支払済みの固定資産税の返金は受けられません。
そのような事態をできる限り避けるためにも、相続放棄をするタイミングが年末近くである場合には、申立の際に、受理を急いでほしい旨の上申書を添付しておくことが有効です。

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税金の弁済で単純承認が認められた場合の対処法

相続財産から税金を支払った場合は、単純承認とみなされてしまう可能性が高いです。
単純承認をしてしまうと、相続放棄が認められなくなってしまう恐れがあります。
相続財産から税金を支払ってしまい、万が一、単純承認とみなされてしまった場合は、以下の方法で対処できる可能性があります。

  • 弁護士や司法書士などの専門家に相続放棄できないか相談してみる
  • 遺産分割協議で相続分の放棄または譲渡を提案する
  • 借金を相続してしまい返済できない場合は債務整理を検討する

ここでは、税金を弁済して単純承認とされてしまった場合の対処法をご紹介します。

弁護士や司法書士などの専門家に相続放棄できないか相談してみる

税金の支払いをしてしまったために相続放棄ができなくなった場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
家庭裁判所に相続放棄の申述申立てをして不受理となっても、2週間以内であれば即時抗告ができます。
即時抗告の申立ては家庭裁判所に対しておこないますが、審理をするのは高等裁判所です。手続き自体は簡単ですが、家庭裁判所の決定を覆すためには、適切な判例を上手く用いる必要があったり、裁判所を説得できるだけの論理性が必要となったりします。
相続放棄を認めてもらうためには、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが賢明でしょう。

遺産分割協議で相続分の放棄または譲渡を提案する

ほかの相続人と関わりたくないために相続放棄を望んでいた場合は、財産放棄や相続分の譲渡を検討するとよいでしょう。
財産放棄とは、ほかの相続人に対して、遺産を相続しないという自分の意思を伝えることです。

また、相続分の譲渡とは、自分の法定相続分をほかの人に譲ることです。
譲渡先はほかの相続人でも構いませんし、第三者や複数でも問題ありません。
いずれの場合でも、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、ほかの相続人と関わる必要もなくなります。
なお、相続人ではあり続けるため、債務などの負債を相続する義務は残ります。
あとになって負債が発覚した場合は、返済しなければならない可能性があることに注意しましょう。

借金を相続してしまい返済できない場合は債務整理を検討する

単純承認をすることになり、返済できないほど多額の債務を相続することになった場合は、債務整理を検討しましょう。
債務整理には、利息をカットすることができる任意整理や、借金の返済が全額免除される自己破産など、複数の種類があります。

いずれの方法にもメリット、デメリットがあり、どれを選択するのがベストかは状況によります。
財産を処分されるなどの大きなデメリットがある手続きもあるため、どの方法を選択すべきかは、弁護士や司法書士などの専門家の意見をうかがうのがよいでしょう。

相続放棄時の税金の支払いに関連して他に気をつけたいこと

相続放棄をする予定であれば、税金の支払いによって単純承認とみなされないことに注意するほかに、以下の2点にもご注意ください。

  • 公共料金などその他の請求書の支払いも避ける
  • 期限内に相続放棄の手続きをおこなう

順番に説明していきます。

公共料金などその他の請求書の支払いも避ける

財産の処分行為によって単純承認とみなされる可能性がある以上、公共料金や督促状など、税金以外の請求書への支払いも極力避けるべきです。
そうはいっても、被相続人と同居していた場合などは、公共料金を支払わなければ電気やガスの供給を止められてしまいます。
そのような場合は支払いをおこなうこともやむを得ません。
ただし、必ず自分の財産から支払いましょう。

また、自動引き落としを利用している場合は、早めに銀行に申し出て、口座を凍結してもらってください。
請求先も変更してもらう必要があります。
そのほかの請求書についても、自己判断で対応せず、弁護士や司法書士などの専門家に確認の上で対処するのが安心です。

期限内に相続放棄の手続きをおこなう

相続放棄の手続きには期限があり、被相続人が亡くなったことと自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内におこなわなくてはなりません。
期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄ができなくなるため、税金の支払いとは別に相続放棄の手続きも速やかに進めましょう。

万が一、期限を過ぎてしまった場合でも、正当な理由があれば、相続放棄が認められる可能性もあります。
ここでいう「正当な理由」とは、家庭裁判所が「期限を過ぎてしまったのもやむを得ない」と判断できる内容を指します。
単に「忘れていた」「知らなかった」では認めてもらえません。
期限が過ぎた場合も、専門知識がなければ対応が難しいため、司法書士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

相続放棄をする予定の場合は、原則として、税金の支払いをしてはいけません。
支払ってしまうと単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
どうしても支払う必要がある場合は、相続財産ではなく自分のポケットマネーから支払い、相続財産の処分はしないようにしましょう。
なお、万が一相続財産から支払ってしまった場合でも、事情によっては相続放棄が認められる可能性もあります。
諦めずに専門家に相談してみてください。
司法書士法人みつ葉グループでは相続放棄の無料相談を実施しています。
相続放棄に関することでわからないことがある方や、専門家への依頼を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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