メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

相続放棄

相続放棄しても葬儀代は相続財産から支払える!支払える葬儀費用と注意点を解説

相続放棄をしたら、被相続人の財産を勝手に処分できなくなりますが、親族が亡くなった場合は高額な葬儀費用を相続財産から捻出したいと考える方も多いことでしょう。
一般的・社会的にみて相当の範囲内であれば、相続財産から葬儀費用を支払っても問題ないとされるケースもあります。
しかし、火葬費用やお寺へのお布施、戒名料など、どこまでを相続財産で支払っていいのかは、法律的・専門的な判断が必要です。

この記事では、相続放棄を検討している場合に、葬儀費用を相続財産から支払うことが認められるのか、葬儀代を支払う際の注意点などについて、詳しく解説していきます。

目次

葬儀代を相続財産から支払っても相続放棄できる

原則として、亡くなった者(被相続人)の預貯金など相続財産に手をつけると、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
しかし、葬儀代を相続財産の中から支払っても相続放棄はできるものとされています。
葬儀は人生最後の儀式として執りおこなわれるもので、かつ社会的儀式として必要性が高いにもかかわらず必ず相当額の支出を伴うものであることが理由で、相続財産からの支払いが認められるとした裁判例もあります(大阪高判平成14年7月3日)。
ごく一般的な常識範囲の費用であれば、葬儀費用を相続財産から支払っても、相続放棄には影響を与えないといえるでしょう。
もちろん、葬儀費用を相続人が自腹で支払っても、相続放棄に影響することはありません。
ただし、葬儀費用にも大小あり、支払いする内容によっては、相続財産から支払うと単純承認が認められてしまい相続放棄が認められなくなることもあるため、注意が必要です。

葬儀の規模によっては注意が必要

葬儀代を相続財産から支払っても相続放棄はできますが、葬儀の規模によっては相続放棄が認められない可能性もあります。
一般的にみて、身分相応の範囲を越えるような豪華な葬儀をおこなうと、その適切な範囲を越えた部分については「相続財産を処分した」と判断され、単純承認とみなされる可能性があります。
葬儀費用は当然すべてのケースで同じではなく、宗教や地域、亡くなった方の社会的地位などによって千差万別ですし、相続財産に余裕があると故人を盛大に送り出したい気持ちになるかもしれませんが、相続放棄を考えている以上、葬儀の規模は必要以上に華美にしすぎないようにしましょう。

相続財産から支払える葬儀費用と支払えない費用

葬儀費用と一口にいっても、内容はさまざまです。
そして、全ての葬儀費用を相続財産から支払って良いわけではありません。
費用によっては相続財産から支払うと単純承認になってしまうものもあります。
そのため、相続財産から支払えるものと支払えないものをしっかりと区別できるようになることが大切です。
それぞれについて、具体例を踏まえてご紹介していきます。

相続財産から支払える葬儀費用

相続財産から支払っても相続放棄が認められるものは、以下のような一般的に葬儀で必須と認められる費用です。

  • 死体の捜索費用
  • 死体や遺骨の運搬にかかった費用
  • お通夜や葬式にかかった費用
  • 火葬費用
  • 埋葬や納骨にかかった費用
  • お寺へのお布施や心づけ、読経料、戒名料 など

これらの費用は、一般的に葬儀をする際に必ずかかる費用として認められるケースが多く、相続財産の中から支払いをおこなっても、基本的に相続放棄には影響しません。
葬儀とは少し異なりますが、仏壇や墓石の購入に関しても、一般的・社会的にみてあきらかに高額でない限りは、相続財産の中から支払うことが認められる可能性が高いでしょう(大阪高決平成14年7月3日より)。
葬儀費用と同じように高額な仏壇や墓石を相続財産から支払えないとするのであれば、残された家族の資力が乏しい場合には、故人を満足に弔うことができなくなってしまうからです。

相続財産から支払えない葬儀費用

一方で、一般的に葬儀で必須と認められない費用については、相続財産から支払うと単純承認とみなされてしまい、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
たとえば、葬儀に関連した以下の費用が挙げられます。

  • 香典返し
  • 喪服代
  • 墓地の購入費用、墓地を借りるためにかかった費用
  • 初七日や四十九日、一周忌などにかかった費用 など

これらの費用については一般的に「葬儀費用」には含まれないことが、単純承認とみなされる可能性がある理由です。
ただし、葬儀の際にかかるそれぞれの費用について、相続財産での支払いが認められる明確な基準は、法律で規定されているわけではなく、「上記以外であれば単純承認が認められることはない」とは言い切れません。
そのため、独断で相続財産から費用を支払ったことで単純承認となってしまい、相続放棄できなくなる可能性もあり得ます。
判断に迷う場合には、あらかじめ専門家に相談し、適切なアドバイスをもらっておくとよいでしょう。

相続や遺言の
無料相談受付中!

お気軽にお問い合わせください!

相続放棄を検討している場合に葬儀代を故人の口座から引き出す方法

相続放棄を検討している状況で葬儀代を故人の預金口座から引き出す場合、できればほかの相続人の許可を得てからおこなうと安心です。
あらかじめ、引き出す金額や葬儀費用に使用することを伝えておくことで、ほかの相続人とのトラブルを避けることができるでしょう。
葬儀代を相続財産から捻出する場合、被相続人名義の預貯金口座からお金を引き出しますが、相続人名義ではない口座からお金を引き出す場合、特別な手続きが必要になる場合があります。
「相続預金の払戻制度」や「家庭裁判所に申立てて預金を引き出す方法」について、わかりやすく解説していきますので、参考にしてください。

遺産分割前の相続預金の払戻制度を活用する

「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」を活用することで、ほかの相続人から不正な引き出しを疑われることなく、安全に預金口座からお金を引き出せます。
故人の預金口座は、銀行が口座名義人死亡の事実を知ったタイミングで凍結されます。
通常は、相続人や親族から口座名義人が死亡したことについて報告があったタイミングで口座は凍結されるため、相続人がキャッシュカードの暗証番号を知っていれば、口座凍結の前にお金を引き出すことも可能です。

しかし、勝手にお金を引き出したことがほかの相続人にバレてしまうと、単純承認をしたとみなされ相続放棄が認められなくなったり、ほかの相続人から不正な引き出しを疑われるおそれもあるでしょう。
預金の引き出しでのトラブルを避けるためにも、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(民法909条の2)を活用してお金を引き出すことがおすすめです。
銀行の窓口に申請する必要がありますが、申請が認められれば、ほかの相続人の同意がなくとも、以下の金額を故人の預金口座から引き出せるようになります。

引き出せる限度額:亡くなった者の死亡時の預金残高×1/3×預金を引き出す者の法定相続分
※ただし、同一の金融機関から引き出せる金額は、150万円が上限

手続きには、本人確認書類や故人の戸籍謄本、お金を引き出す方の印鑑証明書などが必要です。
お金を引き出す金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、あらかじめ取引先の金融機関に詳細を確認しておくようにしましょう。
なお、お金を引き出すには数週間〜1ヶ月程度の時間がかかります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

家庭裁判所に申し立てて払戻しを求める方法もある

家庭裁判所に申し立てをおこなえば、遺産分割前の相続預金の払戻し制度以上の引き出しを認めてもらえる可能性があります。
遺産分割調停・審判の申立をしていることが条件ですが、ほかの相続人の同意がなくても申し立ては可能であり、認められれば「家庭裁判所が仮取得を認めた金額」についてお金を引き出すことができます。
そのため、葬儀費用が150万円を超える場合には、こちらの方法で引き出しを認めてもらうことも検討しましょう。

預金口座からのお金の引き出しは、生活費の支払いなどの事情により預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、ほかの共同相続人の利益を害しない場合に限られます。
一般的に葬儀費用として認められ、法定単純承認に該当しないケースであれば、葬儀費用全額の引き出しが認められることもあるでしょう。
ただし、この制度は、裁判所を通した手続きということもあり、引き出しが認められるまで時間がかかります。
そのため、葬儀費用としてすぐにお金が必要な場合には向いていない制度ともいえるでしょう。

相続放棄する予定で葬儀代を支払う際の注意点

相続放棄をする予定で葬儀代を支払う場合には、以下2つの点に注意する必要があります。

相続放棄する予定で葬儀代を支払う際の2つの注意点
  • 葬儀代に使ったすべての領収書や明細を残しておく
  • 相続財産から葬儀代を出してもある程度まとまったお金が必要

相続放棄をスムーズに認めてもらい、ほかの相続人とのトラブルを避けるためにも、以下の2つの注意点についてはしっかりと把握しておきましょう。

葬儀代に使ったすべての領収書や明細を残しておく

相続財産から葬儀代を捻出した場合、葬儀代として使ったすべての領収書や明細を残しておきましょう。
一般的な葬祭会社に提示された基本的な葬儀プランであれば、相続財産から葬儀代の支払いをしても問題となるケースは少ないです。
その上で領収書や明細を証拠として残しておくと、より安心です。

万が一、ほかの相続人と争いになった場合に、「たしかに葬儀代として支払った」ことを証明できるため、相続財産の使い込みで単純承認とみなされるリスクを減らすことができます。
お布施や心づけなど領収書が発行されない支払いについても、支払日や支払先、支払った金額などのメモを残しておきましょう。

相続財産から葬儀代を出してもある程度まとまったお金が必要

相続財産から葬儀代を捻出するにしても、葬儀費用は高額となることが多いため、ある程度まとまった額のお金が必要です。
最近では家族葬など規模の小さな葬儀もありますが、そもそも葬儀費用は地域の慣習や宗派などによって差が大きく、まとまった金額が必要となるケースも多いです。
墓地や仏壇を購入する場合、それだけで100万円以上の出費となるケースもあるでしょう。
相続財産から支払うとしても、相続財産だけでは葬儀費用を賄えない場合があるため、お金を引き出す前にどれだけの費用が必要になるかを、おおまかに計算しておくとよいでしょう。

相続放棄しても香典は受け取れる

相続放棄をしても、香典を受け取れます。
日本では、葬儀において香典(神式の場合は玉串料など)を送るのが一般的であり、社会的行為・儀礼的行為として認められています。
香典は、葬儀を執りおこなう喪主に対して渡される贈与の一種であるとされており、相続財産には含まれません。
そのため、香典を故人の葬儀費用に充てることも、一般的に認められています。
もちろん、葬儀費用の支払いをしたあとに香典が残った場合もその香典を手放す必要はなく、基本的には喪主がその使い道を決めることができます。
なお、前述したように香典返しを相続財産から支払うと、相続財産の処分として単純承認が認められ、相続放棄ができなくなる可能性があるため、お気をつけください。

まとめ

相続放棄をしても、一般的にみて身分相応の範囲を越えるような豪華な葬儀でない限り、相続財産から葬儀代を支払うことも認められています。
ただし、一般的に葬儀で必須ではないことで支払った費用については、相続財産の中から支払うと相続放棄できなくなる可能性があります。そのため、相続財産で葬儀費用を捻出する場合には、細心の注意を払わなければなりません。
相続放棄を検討している場合には、ほかの相続人から不正な引き出しを疑われないためにも、「相続預金の払戻制度」や「家庭裁判所への申立て」を利用して預金口座からお金を引き出すのがよいでしょう。
ただし、どちらの制度も申請してから引き出せるまでにある程度の時間がかかるため、申請を検討している場合には、時間に余裕を持っておこなってください。
相続放棄をする際は、今回ご説明した葬儀代の支払いのように気をつけたいことがたくさんあります。
専門家に相談して相続放棄を行えば、書類作成などを任せることができる以外に、注意するべきポイントを教えてもらうことができますので、安心して相続放棄を行うことができます。
司法書士法人みつ葉グループでは、相続放棄のサポートに力を入れております。
ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

相続コラムTOP