2020.10.30更新

個人再生で借金はどれくらい減額される?住宅ローンの支払いは?

個人再生では実際、どれくらい借金を減額できるの?

個人再生の手続きを行うと、借金の大幅な減額が可能といわれます。

個人再生は借金を5分の1〜10分の1程度までに減額できる債務整理方法です

ただし、現実にどれくらい減額できるかは、選択する個人再生の種類やあなた(申立人)が財産をどの程度持っているかによって左右されます。

この記事では、個人再生をすると具体的にどれくらい借金を減額できるのか、そして減額の対象にならない支払いにはどんなものがあるのかなどについて解説します。

個人再生すると借金はどれくらい減額できる?

個人再生すると、5分の1〜10分の1程度にまで借金を減額することが可能です

とはいえ、具体的な減額率は、選択する個人再生の種類が「小規模個人再生」「給与所得者等再生」のどちらなのか、あなた(申立人)が財産をどれくらい所有しているかによって異なります。

以下で詳しく解説していきます。

小規模個人再生の場合

個人再生には2種類がありますが、制度利用者の約9割は「小規模個人再生」という手続きをとります。

もう1つの「給与所得者等再生」にくらべ、返済額をより抑えられることが多いためです。

小規模個人再生においては、以下の2つの基準のうち、高い方の金額まで借金が減額されます

  1. 最低弁済基準額
  2. 清算価値保障基準

1 最低弁済基準額

民事再生法(231条2項3号4号)によって定められた基準額です

表にまとめると以下の通りとなっています。

最低弁済基準額
借金総額 最低弁済額
100万円未満 全額
100万円~500万円未満 100万円
500万円~1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円~3000万円未満 300万円
3000万円~5000万円未満 借金総額の10分の1

借金総額とは、住宅ローンを払っている場合、すべての借金から住宅ローンの残債を差し引いた金額(基準債権総額)となります。

もし、住宅ローンを除く借金総額が3000万円だった場合、最低弁済基準額は300万円となるので、借金は10分の1にまで減額されるということです。

借金の額が大きいほど、減額の幅が大きくなるともいえます

2 清算価値保障基準

清算価値とは、あなた(申立人)が現時点で保有している財産の総額です

個人再生をしても財産は処分されません。

しかし、仮に自己破産をした場合に処分されるはずの財産分は最低限、債権者(借入先)に支払わなければならないという「清算価値保障の原則」があります。

この原則は、再生計画が不認可になる理由のひとつとして、民事再生法174条2項4号に「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」が規定されていることが根拠とされています。

清算価値に計上される財産の例は以下の通りです。

清算価値として評価される財産の例※
現金 99万円を超える現金
預貯金 20万円を超える預貯金
退職金 退職金評価額の8分の1が20万円を超える場合(正社員で勤続年数が3年以上のケース)
貸付金・売掛金等 未回収の金額
積立金等 積立金の総額
積立金を担保とした貸付金がある場合は貸付金を差し引いた金額
生命保険 解約返戻金の金額
株式、投資信託等の有価証券 時価
自動車やバイク 査定額
ローン返済中の場合は時価からローン残額を引いた金額
登録後6年以上が経過している場合、価値がないと判断されることが多い
不動産 不動産会社による査定額
ただし住宅ローンがある場合には、査定額からローン残額を引いた金額
損害賠償請求権 交通事故などに遭って加害者に対する損害賠償請求権を有している場合、その金額が財産と評価される
消費者金融等への過払い金 過去に消費者金融やクレジットカードなどを利用した際に払いすぎた利息を取り戻した「過払い金」が手元にある場合は財産とみなされる
未回収の過払い金請求権がある場合にも、回収見込み額が清算価値保障原則の計算対象となる

※裁判所により異なる

住宅ローンの残額が少なかったり、住宅ローンが完済されていたりすると、土地・建物の価値が清算価値を押し上げてしまいます。

このように住宅の資産価値が住宅ローンの残債を上回る場合は、期待していたほどには借金が減額されなかったり、減額効果が得られなかったりする可能性があるので注意しましょう。

また、営業職や個人事業主の場合は、取引先への売掛金も清算価値の対象となりますが、早期の回収が困難である場合は評価額を下げられる可能性があるので、弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。

日本公認会計士協会の「財産の価額の評定等に関するガイドライン」に、「金銭債権の清算処分価額は、早期の回収又は売却見込額から回収又は売却に要する費用を控除した価額とする」とする記載があるためです。

給与所得者等再生の例

個人再生の中でも給与所得者等再生の手続きをとる場合は、最低弁済基準額と清算価値保障基準のほか、民事再生法241条2項7号に定める「可処分所得基準」も加わり、もっとも高い金額まで借金が減額されます

  1. 最低弁済基準額
  2. 清算価値保障基準
  3. 可処分所得基準

3 可処分所得基準

可処分所得基準とは、あなた(申立人)の2年分の可処分所得のことです

可処分所得とは、収入から税金や最低生活費を差し引いた金額をいいます。

最低生活費は生活保護の基準などによって定められており、年齢や収入、居住地域、扶養の有無などによって異なります。

実際に給与所得者等再生を検討するケースでは、可処分所得の2年分(可処分所得基準)が最低弁済基準額や清算価値よりも高くなることが多いようです。

そのため、給与所得者等再生では小規模個人再生よりも借金の減額幅が少なくなる可能性があります

ただし、給与所得者等再生では債権者の同意がなくても再生計画が認可されるというメリットがあるため、この点に着目して利用されるケースがあります。

住宅ローンや養育費、税金などは個人再生の減額対象にならない

個人再生をしても、すべての支払いが減額の対象になるわけではありません。

以下は、個人再生をしても減額されない支払いです。

  1. 住宅ローン
  2. 非減免債権
  3. 一般優先債権・共益債権

このような減額の対象にならない支払い義務について、詳しく解説していきます。

1 住宅ローンの支払い

個人再生の大きなメリットとして、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用することで、住宅ローン返済中の住宅を処分しなくても済むという点があります。

住宅ローン特則は以下のような理由で認められているものです。

  • 住宅ローン返済は家賃支払いに類似する行為である。
  • ローンを差し引いた住宅の清算価値は債権額に繰り入れられる。
  • 仮に住宅を処分しても、抵当権が設定されているのでそれ以外の債権者で住宅の価値を山分けできるわけではない。

とはいえ住宅ローン特則を使っても、個人再生による減額を住宅ローン自体が受けられるわけではありません。

その代わり、3つの救済措置が設けられており、住宅ローンによる返済負担を軽減することができます

  • 支払期限の延長(リスケジュール)
  • 一定期間の元金据え置き(元本猶予)
  • 一括返済・競売の停止(住宅ローンの巻き戻し)
  • 支払期限の延長

リスケジュールともいい、70歳になる年まで最大10年間、返済期間を延長することができます。

  • 一定期間の元金据え置き

一定の期間元本の返済が猶予され、利息だけの返済とすることができます。

  • 一括返済・競売の停止(住宅ローンの巻き戻し)

住宅ローン返済を滞納すると分割で返済する権利が失われ、金融機関から一括返済を求められます。

一括返済にも応じなかった場合、保証会社が金融機関に対して代位弁済を行います。

すると保証会社は住宅を競売にかけ、借金の回収を図ることになります。

この場合は個人再生計画に定めた通りに、支払いが遅れたローンの金額も含めた返済を滞納から6ヶ月以内に行えば、競売は避けられ住宅ローン債務を滞納が起こる前の状態まで戻せます。

住宅ローン特則は自宅を維持したまま借金を整理できるという強力なメリットがあるため、利用には厳しい要件があるのです。

個人再生と住宅ローンの関係については以下の記事でさらに詳しく解説しています。
個人再生なら家は残せる?住宅ローン特則の仕組みとは

2 損害賠償金や養育費などの「非減免債権」

個人再生を利用しても減額することができない種類の支払い義務を「非減免債権」といい、民事再生法229条3項によって以下の通りに定められています。

  • 悪意で加えた不法行為によって発生した損害賠償金
  • 故意や重大な過失に基づき、身体または命を害する不法行為によって発生した損害賠償金
  • 未払いの子どもの養育費や結婚中にかかる費用

悪意で加えた不法行為によって発生した損害賠償金

不法行為とは「他人の権利や利益を損なう行為」のことをいいます。

なかでも悪意、つまり詐欺や盗難といった犯罪で他人の権利や利益を侵害して、その結果として金銭で損害を賠償する債務を負った場合は、個人再生を利用しても損害賠償金を減額できません。

「悪意」は、「そのことについて知っている」という意味の法律用語として使われる場合もありますが、ここでは意味合いが異なります。

故意や重大な過失に基づき、身体または命を害する不法行為によって発生した損害賠償金

不法行為のうち、とくに他人の身体や命にダメージを与える行為については、やむを得ないと認められる場合(わざとではなく重大な過失もないと認められる場合)を除き、個人再生を利用しても損害賠償金を減額できません。

未払いの子どもの養育費や結婚中にかかる費用

未払いの子どもの養育費や結婚中にかかる費用も非減免債権にあたり、個人再生を利用しても減額できません。

3 税金や社会保険料などの「一般優先債権」「共益債権」

税金や社会保険料、個人再生委員への報酬などは個人再生の手続き中も必要に応じて支払う必要があります。

民事再生法121条に定める「共益債権」、122条に定める「一般優先債権」にあたる債権です。

これらは個人再生手続きとは関係がなく減額になじまない支払いであり、いわゆる借金とは性質が異なるため、減額の対象にはなりません

一般優先債権と共益債権の例

一般優先債権の例

  • 税金(所得税、住民税)
  • 社会保険料(健康保険・国民年金)
  • 雇用している人の未払い賃金
  • 再生手続きの手数料
  • 罰金

共益債権の例

  • 個人再生委員への報酬
  • 生活に必要な光熱費
  • 事業の必要経費

小規模個人再生をした場合の減額例

実際に小規模個人再生をした場合にどれくらいの減額が可能なのか、例を見ていきましょう。

1 最低弁済基準額が最低弁済額となるケース

財産が預貯金と中古車のみと少ないケースです。

  • 年収 400万円
  • 借金総額 400万円
  • →最低弁済基準額は100万円
  • 財産総額 90万円
  •  ・預貯金 50万円
     ・自動車査定額 40万円
    →清算価値基準は70万円

借金総額が400万円の場合、最低弁済基準額は100万円となります。

一方、清算価値基準は財産総額の70万円です。

この場合、最低弁済基準額が清算価値基準を上回るので返済額は100万円となり、借金を300万円減額することができます。

2 財産があり、清算価値保障基準が最低弁済基準額を上回るケース

住宅を所有するなど資産が比較的多いケースです。

  • 年収 600万円
  • 借金総額 1000万円
  • →最低弁済基準額は200万円
  • 財産総額 820万円
  • ・預貯金 50万円
    ・退職金見込額の8分の1 40万円
    ・生命保険の解約返戻金 100万円
    ・自動車査定額 30万円
    ・住宅査定額 600万円
    →清算価値基準は800万円

借金総額は1000万円と高額ですが、最低弁済基準額は借金総額の5分の1で200万円であり、清算価値基準は資産総額の800万円です。

この場合、清算価値基準が最低弁済基準額を上回るので返済額は800万円となり、借金は200万円の減額となります。

3 借金が高額で10分の1まで減額できるケース

多額の借金がある一方で、財産が少ないケースです。

  • 年収 700万円
  • 借金総額 3000万円
  • →最低弁済基準額は300万円
  • 財産総額 190万円
  • ・預貯金 100万円
    ・退職金見込額の8分の1 40万円
    ・自動車査定額 50万円
    →清算価値基準は170万円

借金総額3000万円の場合、最低弁済基準額は借金総額の10分の1で300万円です。

財産は多くないため、清算価値基準は170万円となります。

この場合、最低弁済基準額が清算価値基準を上回るので返済額は300万円となります。

借金総額が3000万円なので、返済額を10分の1に抑えることができるのです。

個人再生で借金を減額するための条件とは?

個人再生をするには以下の条件を満たす必要があります。

小規模個人再生の条件

  • 将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること
  • 住宅ローンやその他担保権の借金を差し引いた後の借金総額が5000万円以下であること
  • 個人再生によって減額された借金を原則3年で返済できる見込みがあること
  • 債権者総数の2分の1以上、および借金額合計で2分の1を超える債権者からの反対がないこと

給与所得者等再生の条件

  • 将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること
  • 給与等の定期所得があり、所得変動の幅が年間20%以下であること
  • 住宅ローンやその他担保権の借金を差し引いた後の借金総額が5000万円以下であること
  • 可処分所得の2年分以上の支払いを条件とすること
  • 個人再生によって減額された借金を原則3年で返済できる見込みがあること

個人再生の条件について、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
個人再生手続きとは?条件から手続きの流れ、期間・費用まで解説

個人再生での借金の減額率がわからず悩んでいる人は専門家に相談しても

以下のような悩みがある方は、弁護士や司法書士への相談を検討してみるのも一つの方法です。

  • 自宅などの財産があるため、個人再生をした場合に借金をいくらくらい減額できるかがわからない
  • 給与所得者等再生をした場合、可処分所得の計算方法がわからないので、どれくらい借金を減額できるかもわからない

無料で利用できる減額シミュレーターを公開している事務所もあるので、事前にシミュレーションしておくと相談がスムーズに行えます

たとえば、みつ葉グループの公式サイトには、「借入減額診断」が設けられています。

借入金額・借入期間・返済についての希望、住んでいる地域、年齢、名前、電話番号、メールアドレスを入力すると、その後のやり取りで診断結果を無料で教えてもらうことができるという流れです。

みつ葉グループ「借入減額診断」

個人再生は債務整理の中でもっとも手続きが複雑な方法といわれています。

日本弁護士連合会の調べによると、個人再生を利用した人の約98%が弁護士や認定司法書士に依頼しています(※)。

借金を返済できず困っており、個人再生で借金をいくら減額できるか気になっている人は、弁護士や司法書士に相談を検討してみてはいかがでしょうか。

司法書士も1社あたりの借金額が140万円以下であれば対応可能です。

※出典:日本弁護士連合会「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」

この記事のまとめ

個人再生による借金の減額についてまとめると以下の通りです。


  • 個人再生すると、5分の1〜10分の1程度にまで借金を減額できる
  • 具体的な減額率は、個人再生の種類や財産総額によって異なる
  • 住宅ローン支払い中の住宅を手放さずに借金を減額できる
  • 住宅ローンは減額の対象にならないが支払期限の延長などは可能

無料で利用できる減額シミュレーターを公開している事務所もあるので、事前にシミュレーションしておくと相談がスムーズに行えます。

個人再生は必要書類が多く、最も手続きが複雑な債務整理方法です。

まずは弁護士や司法書士に相談を検討してみましょう。

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