2020.10.16更新

個人再生をしたら生命保険はどうなる?解約返戻金があってもOK?

個人再生をすると生命保険はどうなるの?」
「個人再生も自己破産と同じように生命保険は解約しないとだめなの?

自己破産では、生命保険は解約返戻金が20万円を超えると、原則、解約することになります。

個人再生はどうでしょうか?

実は、個人再生であれば、生命保険の契約を継続できます。

ただし、まったく影響がないわけではありません。

解約返戻金が個人の財産として計上され、総額によっては、再生計画の返済額が増大する可能性があります。

個人再生で生命保険がどのように扱われるのか。

また、解約返戻金はどうなるのかについて詳しく解説します。

個人再生をしても生命保険が解約になることは原則ない

結論からいえば、個人再生をしても、生命保険を解約する必要はありません

ただし、解約返戻金の金額によっては個人再生手続に影響します。

解約返戻金とは、生命保険を解約したときに戻ってくるお金のこと。

それまでに払い込んだ保険料(合計)の約7割相当の金額になることが一般的です。

この解約返戻金は、個人の財産と見なされますので、個人再生手続では「清算価値」に計上されることになります。

生命保険の解約返戻金は財産として裁判所に報告しなければならない

手続き開始時点の本人の財産は「清算価値」として裁判所に報告しなくてはなりません。

個人再生手続では、「清算価値」がいくらになるかがとても重要です。

生命保険は、解約返戻金が財産として見なされるため、裁判所に報告しなければなりません。

もちろん、実際に解約する必要はなく「もし、今解約したらいくら戻ってくるのか」という金額を裁判所に報告するだけです

解約返戻金は、契約している保険会社に問い合わせることで、「解約返戻金証明書」を発行してくれますので、それで確認できます。

なお、生命保険であっても解約返戻金が0円であるプランもありますが、この場合は、裁判所に報告する必要がないのではなく「解約返戻金は0円です」という内容の解約返戻金証明書が必要になります。

どのような保険に解約返戻金があるのか

すべての保険に解約返戻金があるわけではありません。

生命保険には、契約プランによって大きく積立型(貯蓄型)と、掛け捨て型があります。

解約返戻金があるのは、積立型(貯蓄型)の保険のみです

掛け捨て型の生命保険には、解約返戻金はありませんので、個人再生では影響がありません。

なお、積立型プランのある保険は、生命保険だけではなく、学資保険、終身保険、養老保険などもありますのですので、こうした保険の解約返戻金も、清算価値に計上されます。

見落としやすいのが、住宅ローンを組む人が原則として加入する「団体信用生命保険」。

これは、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合に、保険金を残りのローン返済に充てるための生命保険です。

機構財団の生命保険は解約返戻金がないのが一般的ですが、民間保険で契約した場合は解約返戻金があるプランもありますので、合わせて確認する必要があります。

契約者の名義が保険料の負担者と異なる場合の解約返戻金はどうなる?

解約返戻金が財産として計上されるのは、支払っている人ではなく、契約者です

家族の間では、保険の契約書に書かれている名義と、実際に保険料を支払っている人の名義が違うことはよくある話です。

例えとして、次の2つのようなパターンがあります。

  1. 本人の保険料を父親が支払っている場合
  2.  本人が保険料は支払っていなくても、保険契約の名義は本人なので、清算価値に追加されます
  3. 父親の保険料を本人が支払っている場合
  4.  保険料を支払っているのは本人でも、保険契約の名義は父親なので、清算価値には追加されません

特に1のパターンでは、親が保険を契約していて本人も忘れていた、ということになりやすいので、手続き前にしっかり確認しておきましょう。

解約返戻金が20万円以下の場合は清算価値に計上されないことがある

管轄の裁判所の基準によりますが、解約返戻金の合計が20万円以下であれば、解約返戻金は清算価値から除いて計算されます

清算価値を計算するのは、個人再生の「清算価値保障原則」と呼ばれる原則があるためです。

民事再生法第第百七十四条の二(抜粋)  

再生債権を有する者又は約定劣後再生債権を有する者のいずれかについて同条第一項各号のいずれかに掲げる同意を得られなかったため再生計画案が可決されなかったときにおいても、裁判所は、再生計画案を変更し、その同意が得られなかった種類の債権を有する者のために、破産手続が開始された場合に配当を受けることが見込まれる額を支払うことその他これに準じて公正かつ衡平に当該債権を有する者を保護する条項を定めて、再生計画認可の決定をすることができる

つまり、再生計画の弁済額は、自己破産をしたと仮定して計算した弁済額以上にしなければならない、ということです。

自己破産では、一定額以上の財産は換価処分されますが、自由財産については手元に残すことができます。

このため、清算価値の計算でも、自己破産でも残してもよい財産(自由財産)は除くことができます。

自由財産になるものは

  • 99万円以下の現金
  • 差押禁止財産

などがあります。

さらに、東京地方裁判所などでは、自由財産拡張の財産基準として「換価した金額が20万円以下であれば、自由財産として認めてもよいもの」として、生命保険の解約返戻金を認めています。

ただし、1つの生命保険ではなく、複数契約していればそれらの解約返戻金の合計が20万円以下、という意味です。

自由財産拡張が認められる基準は、それぞれの裁判所により少し違いますので、手続きをする前に管轄の裁判所に確認しておきましょう。

解約返戻金が多くなれば再生計画の弁済額が増える可能性がある

個人再生後に返済していく金額は

  1. 個人再生における減算基準額(最低弁済額)
  2. 清算価値の金額
  3. 可処分所得の2年分の金額(給与所得者の場合のみ)

の3つの基準の中から、一番高い金額のものが設定されます。

つまり、保険の解約返戻金が高額になると、3の清算価値が大きくなるため、返済額が増えてしまう可能性があるのです

3つの基準について、もう少し詳しく解説しましょう。

1個人再生における減算基準額(最低弁済額)

個人再生では借金額に応じて下表のように減算基準が決められています。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円未満 借金総額の10分の1

2清算価値の金額

個人再生の手続き開始時点で、本人が持っている個人財産の総額です。

保険の解約返戻金も清算価値に計上されることになります。

なお自己破産で「自由財産」として認められている99万円以下の現金、差押禁止財産、(管轄の裁判所の基準にあれば)20万円以下の解約返戻金などは除いて計算されます。

3可処分所得の2年分の金額(給与所得者の場合のみ)


可処分所得額とは、自分の収入の合計額から税金や生活費用として法令で定められた費用を差し引いた金額のこと。

算出された金額の2年分が返済の基準になります。

この基準が適用されるのは給与所得者(給与所得者等再生手続)の場合です。

借金が500万円であり個人事業主(非給与所得者)だった場合を例にして、解説してみましょう。

1の基準では借金が500万円なので減算後の金額は「100万円」となります。

3の基準では、例えば本人が「査定額50万円の車」「合計30万円の解約返戻金」「30万円の現金」を持っていたとすると、清算価値は「50万円+30万円+30万円=110万円」となります。

この結果、3の金額の方が大きくなるため、個人再生後の返済額は110万円となるのです。

このように、解約返戻金によって返済額が高額になってしまう場合は、裁判所の指示により生命保険を解約しないといけない場合もあります。

契約者貸付制度を利用していた場合はどうなるの?

生命保険の契約者貸付制度とは、解約返戻金を担保にして保険会社からお金を借りられる制度のことです。

契約者貸付制度でお金を借りと、借りた分の金額は解約返戻金から差し引かれて清算価値に計上されることになります。

しかし「清算価値を減らしたいから」という理由で契約者貸付を利用しない方がよいでしょう。

利用自体は法的に問題ありませんが、借りたお金の使い道が問題になります。

現金か預金として持っていれば、清算価値に計上されることになり、トータルでの清算価値は変わりません。

しかし、借りたお金を残そうと、タンス預金などにして故意に隠そうとすれば、財産隠しと見なされて、悪質であれば個人再生が認められなくなる可能性もあります。

特定の借金の返済に充てるようなことをすれば、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」となり、弁済(返済)額が清算価値に上乗せされるなど、手続きが複雑化します。

清算価値は変わりませんが、手続きが複雑になったり、最悪、個人再生そのものが認められなかったりします。

手続き直前に契約者貸付制度を利用することは控えましょう。

個人再生の直前に解約返戻金を受け取っても問題はないのか?

個人再生の直前に保険を解約することは、法的には問題ありません。

しかし、契約者貸付制度と同様、解約しても「清算価値が減る」ということはなく、解約返戻金として受け取ったお金は、資産として裁判所に報告しなければなりません

現金の残高を減らすために、解約返戻金で受け取った金を生活費に充てるのも得策ではありません。

解約返戻金を受け取ったことは、裁判所に報告しなければなりません。

その使い道を問われた際、生活費に充てたと回答すれば「解約返戻金を利用しないと生活ができない経済状況では、再生計画における返済も難しいのでは?」と裁判所に判断され、個人再生が認められない可能性が出てくるからです

解約返戻金を受け取ることは問題ありませんが、その使い道として有効なのは、弁護士費用や裁判所費用などに充てることになります。

個人再生をすると保険以外の財産は?住宅や車はどうなるの?

自己破産であれば、家や車、99万円以上の現金などは没収されることになりますが、個人再生ではそのようなことはありません。

解約返戻金のある生命保険も原則は解約しないで済むように、条件はありますがマイホームや車など、手放したくない財産を残すことが可能です

借金の元金を減らしつつ、柔軟に財産を残せる点は、自己破産と比べて個人再生の大きな特徴です。

住宅ローンを支払い中であればマイホームを残せる可能性がある

個人再生では住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンは残りますがマイホームを手放さずに済みます。

利用するには条件はありますが、住宅ローンを抱えている人にとっては、大きなメリットのある制度です。

ただし、住宅ローン特則を利用できるのは、あくまで住宅ローンを返済中の場合。

すでにローンを完済している場合は、家の査定額が清算価値に計上されて再生計画の弁済額を大幅に押し上げてしまうことから、売却処分することが一般的になります。

住宅ローン特則についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
個人再生なら家は残せる?住宅ローン特則の仕組みとは

車のローンを支払い中であればローンの契約内容が問題となる

車の査定額は清算価値に計上されますが、原則、車が没収されることはありません

ただし、ローンを支払い中で、契約が所有権保留(返済中は名義がローン会社になっているもの)になっている場合は、注意が必要です。

個人再生により、ローンの残債が支払えなくなるため、ローン会社に車を引き上げられてしまうからです。

車の査定額分は高額になりやすいので、清算価値が大きくなりやすい点も注意が必要です。

車を売らないと再生計画による弁済額を支払えないと判断されれば、裁判所から車を手放すように指示されることもあります。

車が個人再生でどう扱われるかについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
個人再生をしても車は残せるの?ローンを返済中の場合は注意!

残したい財産が多い場合は個人再生よりも任意再生を検討

どうしても手放したくない財産が多い場合は、任意整理に切り替えて検討してみるのも一つの手です。

任意整理とは?

借入先の金融機関などと交渉し、将来利息や遅延損害金をカットして、元金を3~5年で分割支払いする形で和解を目指す手段のこと。

任意整理では、やむを得ない事情があれば、特定の借入先のみを交渉の対象にすることができます。

例えば、「車は残したい」という人であれば、車のローンを債務整理の対象から外すことで、車を引き上げられずに済むのです。

任意整理については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
任意整理とは | メリット・デメリットを比較してベストな解決方法を知る」

個人再生は弁護士など法律の専門家に相談!

個人再生は申立てが認められる条件が厳しく、手続きも複雑です。

自分で行うのはハードルが高いため、弁護士や司法書士に依頼することが一般的。

実際、日弁連の調査によると、個人再生を申立てる人の99%が弁護士に相談しています

解約返戻金が多い場合は、清算価値の計算も複雑になりやすいため、1人ではなかなか手続きそのものが進まないことも考えられます。

弁護士に依頼することで、

  • 生命保険を残せるか残せないか明確になる
  • どうしても生命保険を解約したくない場合の方法について相談ができる
  • 依頼をした時点で借金の督促の電話がストップする
  • 「家族や職場に知られたくない」などの要望も配慮してくれる

のようなメリットがあります。

無料相談を受け付けている法律事務所もありますので、まずは一度相談を検討してみましょう。

この記事のまとめ

これまで、個人再生をすることで、生命保険がどのように扱われるのか解説してきました。

内容について押さえておきたいポイントは以下の通りです。


  • 個人再生をしても生命保険が強制的に解約されることはない
  • 解約返戻金は財産として扱われるので清算価値に計上される
  • 清算価値が大きくなると個人再生の返済額が高額になる可能性がある

生命保険を含め、財産を守りながら借金問題を解決したい人は、個人再生を検討する価値があります。

個人再生の手続は複雑なので、まずは弁護士や司法書士など、法律の専門家に相談してみましょう。

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