2020.09.24更新

自己破産で給料やボーナスが没収されることはある?会社への影響は?

「自己破産をしたら給料やボーナスも差押えられるの?」
「自己破産をしたことが会社に知られてしまうことはある?」

自己破産をすると、借金はすべて免除になりますが、一部の財産については没収されることになります。

では、会社から受け取っている給料やボーナス(賞与)はどうでしょうか?

結論からいえば、自己破産をしても給料が没収されることは少ないといえます

自己破産によって給料を没収すると、その後の生活が破綻してしまう可能性が高いからです。

ただし、絶対に没収されない、というわけではありません。

原則的には給料やボーナスの一部は、自己破産により処分の対象となる財産だからです。

そこで今回は、自己破産をした場合の給料への影響や、破産手続を進める中で注意することについて詳しく解説していきます。

自己破産をすると給料や賞与はどうなるの?

給料や賞与(ボーナス)と一口にいっても、自己破産での扱いは、いつ受け取るものかによって異なります。

手続き開始前にすでに受領している給料や賞与 財産処分の対象にならない(現金や預金・貯金口座に保管されていれば、現金や預金・貯金として換価処分される)
破産手続開始時点でまだ受領していない給料や賞与 手取額の4分の1(33万円を超える場合は、その金額から33万円を差し引いた金額)が財産処分の対象になる
破産手続開始以後に発生する給料や賞与 財産処分の対象にならない

破産手続開始時点で受け取った給料などは、その金銭が現金や預金・貯金口座として保管してあれば、現金や預金・貯金の残高に応じて財産没収の対象になるかが決まります。

給料かどうかは関係なく、

  • 現金であれば99万円を超えている
  • 口座残高は合計が20万円を超えている

場合は、基準額との差額が財産処分の対象となります。

また、自己破産で財産処分の対象となるのは、破産手続開始時点で持っている財産のみです。

破産手続開始以後に発生する給料などは「新得財産」となるため、財産処分の対象になりません

ただし、破産手続開始時点で、給料の金額が確定しているが、まだ受け取っていない場合は、法的には給料などを請求できる権利(債権)がある、となります。

債権は財産として計上されるため、自己破産でも財産処分の対象になります

まだ受領していない給料や賞与の請求権の取り扱いの原則

給料などの請求権で処分の対象になるのは、破産手続開始時点で発生している請求債権のみとなります。

そうではない給料などの債権は、自己破産では財産処分の対象になりません。

給料などの請求権は、給料の締め日に発生します。

例えば、給料の締め日(確定日)が15日で振込日が25日だった場合。

15日の時点で債権(お金を受け取る権利)が発生し、財産扱いとなっています。

自己破産の決定日がその間の20日であれば、すでに債権を自己破産の決定前に所有していることになるため、25日に振り込まれる給料は財産没収の対象になってしまうのです。

給料などの請求権の4分の3は法律により財産没収の対象にならない

給料の請求権は、財産没収の対象となりますが、給料全額がなくなってしまうと自己破産後の生活に支障がでてしまいます。

そのため、処分の対象となる給料などの請求権も、その内の4分の3(上限33万円)は差押禁止債権にされており、自己破産でも没収されません

    民事執行法第百五十二条
    次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
  1. 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
  2. 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給料に係る債権 退職手当及びその性質を有する給料に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。

例えば、給料の手取りが20万円であれば、15万円は自己破産をしても残すことができます。

なお、条文中の「標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額」は、月33万円と定められています。

これにより、残せる金額の上限は33万円となるのです。

もし、給料が60万円であれば、4分の3は45万円となりますが33万円を超える金額(27万円)は財産没収の対象になってしまいます。

実務上の手続きでは給料が没収されないことが多い

これまで説明してきた通り、給料やボーナスなどの債権については、手取りの4分の1は、財産没収の対象です。

しかし、給料は生活の糧。

たとえ4分の1であっても、没収してしまえば生活が立ち行かなくなる可能性があります。

そのため、実務上の手続きでは、給料が換価処分の対象になることは少なく、自由財産の拡張がされているのと同じように扱われることが通常です

破産管財人も給料債権の4分の1を取り立てるような請求をすることは通常しません。

ただし、給料の金額が高額である場合は、給料債権を取り立てる場合があります。

また、賞与(ボーナス)に関しては、直接的に日々の生活への影響が少ないことから、財産処分の対象になる可能性は高いです。

金融機関は借金回収のために給与を差押える!会社に知られてしまうことに

自己破産を検討している状況であれば、金融機関への借金の返済は順調ではないでしょう。

もしかすると、すでに金融機関などから給料の差押えにあっている方もいるかもしれません。

給与が差押えになると、借金の一部を強制的に回収されてしまうだけではなく、借金を滞納している事実が会社に知られてしまうことになります

財産の差押えが裁判所に許可されると、真っ先に差押えの対象になるのが給料。

前述の通り、給料の4分の3(上限は33万円)は差押禁止財産ですが、それを超える金額は差押えられてしまいます。

給料が差押えになると、会社側も裁判所からの要請に応じるための手続きが必要になり、少なからず迷惑がかかります。

金融機関から差押えが決まる前に弁護士や司法書士に相談を検討しましょう。

金融機関から給料が差押えられていたら自己破産により解除される

もしかするとすでに金融機関等による給料の差し押さえにあっている方もいるかもしれません。

自己破産で免責を得られる(借金が帳消しになる)と、借金滞納による給与含めた財産の差押えを解除できます。

これは破産法の第42条に定められています。

破産法第四十二条

一 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。

二 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
~以下略~

簡単にいえば、

  • 手続きが始まったあとは、新たに差押えができなくなる
  • 手続き前に差押えられていた財産(給料など)の差押えが解除される

ということです。

つまり、自己破産をすることで、給料が没収されるどころか、むしろ給料を満額受け取ることが可能になるのです。

業務委託契約をしている人は賃金を売掛金として差押えられる可能性が高い

給料のように毎月の賃金を受け取っていても、雇用形態が業務委託契約の人は注意が必要です。

業務委託契約は、雇用関係ではなく個人事業主扱い。賃金の売掛金として処理されるため、差し押さえの対象になるのが原則です

ただし、一社専従(取引会社が1社しかない)であれば、実質的には給料と同じである、と判断されることもあり、給料取得者と同じように処理される場合もあります。

あくまで例外的な処理なので、業務委託契約をしている個人事業主が自己破産を考えている場合は、弁護士や司法書士などへ相談してみましょう。

個人事業主の自己破産についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
「個人事業主は自己破産後も事業を継続できる?手続きに違いはあるの?」

給与所得者が自己破産をする前に気をつけておくべきこと

会社員など給与所得者は、実際に自己破産を進めていく前に最低限やっておきたいことがあります。 特に注意すべき点は以下の2つです。

  1. 給料の振込口座を借金のない銀行の口座に変更する
  2. 給与明細を最低でも2~3ヶ月分は捨てないで保管する

それぞれに関して、以下で詳しく解説します

給料振込口座を借金のない銀行の口座に変更する

自己破産をすると、借り入れをしている銀行の口座は凍結されてしまう可能性があります
金融機関が借金を少しでも回収するために、口座残高と借金を相殺しようとするためです。

口座が凍結されると出金できなくなります。

さらに、銀行によっては入金もできなくなってしまいます。

給料振込口座が凍結となれば、生活費を引き出すことができなくなるので、注意が必要です。

入金ができなくなれば、会社が給料振込の手続きをした際に、入金エラーが発生してしまいます。

入金エラーにより、会社には「口座に何か問題が発生している」ということが伝わり、これをきっかけに自己破産をすることが会社に知られてしまうかもしれません。

これらの事態を避けるためにも、破産手続を開始する前に、凍結の対象となる口座が給料振込口座となっている場合は、事前に別の銀行口座へ変更しておきましょう。

給与明細は最低直近2~3ヶ月分を捨てないで取っておく必要がある

毎月の給与明細は自己破産に必要な書類の1つ。

最低でも直近の2〜3ヶ月は、自己破産を申し立てる際に必要な書類になるので、捨てずに保管しておきましょう。

もし、給与明細を捨てていたら、会社に再発行をお願いしなければなりません。

給与明細の再発行を会社にお願いする際、自ら理由を説明する必要はありません。

会社側も聞いてくることは少ないでしょう。

しかし、何かの拍子に、自己破産することが会社の人に気付かれてしまう可能性もゼロではないでしょう。

わざわざ再発行をお願いするより、自己破産を考え始めたら、給与明細を一定期間保管するように心がけておくことが大切です。

借金の状況によっては自己破産より「任意整理」や「個人再生」を検討

借金を解決する債務整理には、自己破産以外に「任意整理」と「個人再生」があります。

会社に知られずに手続きを進めたいなら任意整理を検討

「任意整理」とは、借金を無理なく返済できるよう、債権者と交渉する手段です。

将来利息や遅延損害金をカットしてもらうなど、返済条件を緩和して和解を目指します。

債務整理を理由に会社を解雇されることはありませんが、同僚の目が気になって仕事を続けにくくなってしまうかもしれません。

任意整理は、裁判所を通さずに債権者と交渉を行うため、自己破産や個人再生と比べて会社に知られる可能性は少ないでしょう

また、「任意整理」において給料が財産没収の対象になりません。

支払い中の車や家などのローンを除いて整理する対象を任意に選択できるため、財産を失うこともありません。

ただし、自己破産や個人再生と異なり借金の元本が減るわけではないので、借金問題解決に対する効果は限定的になってしまいます。

任意整理とは?について、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
「任意整理とは | メリット・デメリットを比較してベストな解決方法を知る」

住宅ローンを抱えている人は個人再生を検討

「個人再生」とは、借金の総額を5分の1〜10分の1程度まで減額した上で、3年(認められれれば5年)の返済計画を立てて返済をしていく手続きです。

こちらは「任意整理」とは異なり、利息だけでなく借金の元本の減額まで行うことができます。

また、裁判所が介するため、自己破産と同様、金融機関からの財産の差押えも中止となります。

個人再生には、住宅ローンを支払っている人であれば、住宅を残せる可能性があります

ほかの借金を個人再生により整理することで、住宅ローンが正常に支払うことができるようになるのであれば、個人再生は大きなメリットのある手続きです。

個人再生とは?について、以下の記事で詳しく紹介しています。
「個人再生と債務整理の違いは?デメリットや減額幅・条件などまとめ」

自己破産を考えたら法律の専門家へ相談!給与の差押えも解除になる

自己破産の手続きは、必要な書類も多くて複雑です。

なにから手をつければいいかわからない上に、会社勤めをしている人は、なかなか時間を作るのも難しいもの。

自己破産を考えたら、弁護士や司法書士といった法律の専門家の力を借りるのが一番の近道です。

弁護士や司法書士に依頼することで、

  • 依頼した時点で給与など財産の差押えがあれば、差押えが解除になる
  • 会社に知られたくないなどの事情を踏まえた上で、どのように借金を解決すればよいかの提案もしてくれる
  • 金融機関からの借金の督促の電話がストップする
  • 手続きに必要な書類の指示や作成の代行などをしてくれる
  • 依頼者に代わって裁判官面談などをしてくれる

などのメリットがあります。

無料相談を受け付けている事務所もありますので、まずは相談から検討してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ

これまで、自己破産が給料にどのように影響するかについて説明してきました。特に抑えておきたいポイントは、以下の通りです。


  • 手続き開始直後に受け取る給料の4分の1が没収される可能性がある
  • 自己破産後の給与は没収されない
  • 金融機関により差押えられた給与は、自己破産することで満額受け取れる
  • 破産手続で必要になるため給与明細は最低2〜3ヶ月分は保管しておく
  • 自己破産以外にも任意整理や個人再生といった債務整理の方法もある

給料を守り、さらに会社にも知られず借金の問題を解決するためにも、まずは弁護士や司法書士などに相談してみましょう。

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