2020.09.14更新

自己破産しても養育費は支払わないとダメ!ただし減額できる場合も

もし自己破産をしたら、養育費の支払い義務はなくなる?

自分が自己破産してしまったら、子どもの養育費を受け取れなくなるのでは…?

養育費を支払う側であっても、受け取る側であっても、自己破産した後のことを考え、疑問や不安を抱いている人はいるでしょう。

実は、支払者が自己破産をしても、養育費は免除されません

また、受領者においても、基本的には自己破産が原因で養育費を受け取れなくなることはないといえます。

この記事では、自己破産した場合の養育費の支払い・受け取りについて、支払者、受領者それぞれの立場での注意点を含めて、詳しく解説していきます。

自己破産をしても「養育費の支払義務」は残る

養育費は、自己破産の「非免責債権」に当たるため、免除にはなりません

原則として、自己破産の手続きを行った場合、裁判所から「免責」の許可が下り、すべての借金の支払い義務が免除されます。

ただし、「非免責債権」という、例外的に自己破産後も支払わなければならない費用もあります。

非免責債権

  • 税金
  • 養育費や慰謝料(生命や身体を害したことによるもの)
  • 破産申立時に故意に記載しなかった借金
  • 悪質な不法行為の損害賠償債務

養育費は非免責債権にあたることは、破産法にもはっきり記されています。

破産法 第253条 第1項
免責許可の決定が確定したときは,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れる。ただし,次に掲げる請求権については,この限りでない。
(略)

④ 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
(略)

「非免責債権」にあたる養育費

  • 支払者は、自己破産の前後を問わず、滞納分も含めて養育費を支払う義務があります。
  • 支払者の自己破産後であっても、養育費の支払いがない場合、受領者は強制執行の手続きが可能です。
  • 自己破産をすることで借金を整理できるため、支払者の経済状態に余裕が生まれ、養育費をきちんと支払える状態になるという側面もあります。

【支払者】自己破産手続き中は養育費を支払うタイミングに要注意

自己破産手続きにはルールがあります。

そのルールに違反すると免責に値しないとみなされ、借金の支払いが免除されなくなってしまうかもしれません。

養育費の支払い方法も関係してくるので、支払者で自己破産を考えている方は注意しましょう。

「滞納分の養育費」を破産手続き中に支払うのはNG

自己破産手続きの最中に、自己判断で債権の支払いを行うことは、法律で禁止されています。養育費も例外ではありません。

滞納している養育費を破産手続き中にまとめて支払うと、特定の債権者にだけ優先的に支払っている(偏頗弁済)とみなされ、自己破産ができなくなってしまうおそれがあります

場合によっては、時間や費用が余計にかかってしまうことも。

また、滞納している養育費は、自己破産したからといって免除されるわけではないので、手続きが終了してからきちんと支払いましょう。

滞納分とは別に、月々発生する養育費に関しては、破産手続き中も通常通り支払って問題ありません。

自己破産手続き中の養育費の取り扱い
滞納している養育費 手続き終了後に支払う
月々発生する養育費 通常通り支払ってよい

「養育費のための預貯金」は処分・差押えのおそれあり

破産手続きの際、養育費の支払い用の口座に20万円を超える預貯金があると、管財事件として処理されてしまう可能性があります

管財事件とは、破産者の財産を処分し、債権者に配当する破産手続きのこと。

養育費のために用意していた預貯金が、受領者ではなく別の債権者に分配されてしまうおそれがあるのです。

また、銀行に借金をしている状態で自己破産をすると、その銀行の預金口座が凍結され、口座に入っている預金は差し押さえられてしまいます。

預貯金の処分や差押えを回避するためには、あらかじめ口座から引き出して現金にしておく対処法があります。

ただし、自己破産の申立て直前に預貯金を引き出すと、財産を隠したのではないかなどと疑われることがあるので、注意が必要です。

自己破産の準備を進めてからの預貯金の取り扱いは、個人では難しいので、弁護士や司法書士に相談するのも一つの手です。

【支払者】支払いが厳しい場合は「養育費の減額」という選択も

自己破産を通して借金を整理することで、養育費を支払いやすくなる可能性があります。

ただ、人によっては、収入が減ったり失業して無収入になったりしたために、自己破産せざるを得なくなり、養育費の支払いすら困難になっていることもあるでしょう。

支払者の収入が減ってしまった場合には、養育費の減額を請求することが可能です。

減額申請は、一般的に以下の流れで進めていきます。

養育費減額のプロセス

  1. 話し合い
  2. 養育費減額請求調停
  3. 養育費減額請求審判

話し合い

養育費の減額を求める場合は、受領者である元配偶者と話し合いの場を持つことが第一歩。

話し合いで解決すれば、家庭裁判所などでの手続きは不要です。

ただし、元配偶者と子どもの生活に関わることなので、すんなりと減額に応じてもらうことは難しいでしょう。

自己破産したことも含め、減額してほしい理由を明確に伝え、誠実に対応することが大切です。

話し合いで減額の合意を得られたら、その内容をきちんと実行するため、具体的な額や変更日を記した公正証書を作成しましょう。

養育費減額請求調停

減額に応じてもらえなかったり、そもそも話し合いを拒否されたりした場合は、家庭裁判所に養育費減額請求調停を申し立てるという手段があります。

調停委員または裁判官立ち合いのもと、当事者が話し合い、解決策を探る方法です。

申立人となる支払者が、受領者の住所地にある家庭裁判所に申立てを行うことで、調停が開始します。

話し合いの末、双方の合意が得られれば減額は成立しますが、決着がつかずに不成立となる場合もあります

申立てには下記の書類が必要です。

  • 養育費調停申立書
  • 事情説明書
  • 調停に関わる進行照会書
  • 子ども(未成年者)の戸籍謄本
  • 申立人(支払者)の収入に関する書類

減額を認めてもらえるよう、源泉徴収票や給与明細、確定申告書の写しなど、収入の変化を証明できる書類の用意は必須です。

書類の準備や調停での話し合いは、支払者自身でも行えますが、法律の専門家である弁護士に依頼するという方法もあります。

弁護士を代理人とすることで、話し合いをスムーズに進めやすくなるでしょう。

養育費減額請求審判

養育費減額請求調停での話し合いがまとまらなかった場合は、自動的に養育費減額請求審判に移行します。

審判は話し合いではなく、裁判官が審問や資料をもとに判断を下すものです。

裁判官は、支払者・受領者双方の話を聞き、家庭裁判所が行う事実調査と照らし合わせて、判断していきます。

この際、養育費減額請求調停での話し合いの内容も加味されることがあります。

調停不成立から審判が出るまでの期間は、一般的に3~4ヶ月。

調停の時点で必要な書類が揃っていれば、期間が短くなることもあります。

【受領者】自己破産をしても養育費の受け取りには支障なし

ここまでは養育費の支払者が自己破産する場合についてお話ししてきました。

一方で、受領者が自己破産をするとき、養育費は受け取れなくなってしまうのでしょうか。

結論からいうと、受領者が自己破産したからといって、その後の養育費が減額されたり、受け取れなくなったりすることはありません。

破産手続き開始後に受け取る養育費は、「新得財産」に該当し、処分の対象にならないためです

ただし、自己破産までに受け取っていた養育費を受領者の名義の口座に貯金し、20万円を超える場合は、処分や差押えの対象になるおそれがあります。

あらかじめ口座から引き出して現金で管理していれば、99万円を超えない限り処分されることはありません。

ただし、自己破産の申し立て直前に預貯金を引き出すと、財産隠しの疑いをもたれてしまい、手続きが複雑になる場合があります。

貯めている養育費の扱い方は、弁護士や司法書士に相談したほうが無難です。

また、破産手続きが始まった時点で滞納されている養育費がある場合、原則として、その滞納分は裁判所に差し押さえられてしまいます

破産手続きの時点で発生している養育費に関しては、差し押さえが禁止されていないからです。

ただし、「自由財産の拡張」という制度を使えば、滞納されている養育費を受領者が受け取れる可能性は高いでしょう。

裁判所に申し立て、自由財産の拡張が認められれば、滞納分が差し押さえられることはなくなるでしょう。

養育費の受領者が自己破産した場合の取り扱い
受領済みの養育費(現金) 99万円以下であれば処分されない
受領済みの養育費(預貯金) 20万円を超える場合は、処分される
破産手続き開始時点で滞納されている養育費 差し押さえの対象になる ※自由財産拡張によって受け取れる可能性が高い
自己破産後に受け取る予定の養育費 受け取れる

自己破産・養育費に関する不安があれば、弁護士や司法書士に相談を

自己破産をする際の養育費、特に滞納分の扱いは難しいので、弁護士や司法書士への相談を検討してみてもよいかもしれません。

支払者であれば、自己破産を準備し始めてからの預貯金の取り扱いや滞納分を支払うタイミングについて、的確なアドバイスをもらえます

養育費の支払いが難しい場合に対処法を提案してもらえることもあるでしょう。

受領者も、自身が自己破産をする際はもちろん、元配偶者が自己破産をして養育費を払ってくれないといった事態が生じた場合などに依頼すれば、複雑な手続きの代行やサポートをしてもらえます。

無料相談を受け付けている法律事務所もあるので、少しでも不安なことがあるならば、連絡してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ

支払者と受領者、どちらが自己破産したとしても、養育費の支払い義務がなくなることはありません。

ただし、滞納分や貯金していた分など、扱いが難しい部分もあるので、改めてポイントをおさらいしましょう。


  1. 養育費は「非免責債権」に当たるため、自己破産をしても免除にならない
  2. 支払者が自己破産した後、養育費を支払わない場合、受領者は「強制執行」が可能
  3. 滞納分の養育費を自己破産手続き中に支払う行為は「偏頗弁済」に当たり、自己破産できなくなる可能性あり
  4. 支払者の口座に20万円を超える預貯金がある場合、それが養育費を支払うためのお金だったとしても差し押さえられる可能性あり
  5. 収入減や失業などの理由で支払者が養育費を支払えない場合、「減額請求」が可能
  6. 受領者が自己破産する場合、滞納分の養育費が差し押さえられる可能性あり

自己破産手続き中の養育費の取り扱いは、特に注意が必要だといえそうです。

養育費を支払っている、もしくは受け取っている人は、自己破産を行う前に弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。

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