2020.09.03更新

自己破産を検討する目安はいくらから?金額ではなく支払能力が重要

自己破産をしたいが、多額の借金がないとできないの?
裁判所は、自己破産を認めてくれる基準とは?

自己破産というと「多額の借金がないと認められないのでは?」といったイメージを持たれている方も多いかもしれません。
しかし、実際はそうではありません。

自己破産は裁判所が「支払不能」と認めれば、たとえ数十万円程度の金額でも自己破産が認められます

裁判所はどのような基準で自己破産を判断しているのでしょうか。この記事で、詳しく解説していきましょう。

自己破産が認められる3つの条件

自己破産を開始するには、まず現在抱えている借金の返済が「支払不能である」と認められる必要があります。

破産法第二条(一部抜粋)

11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。

「支払不能」とは、「債務を返済するための財力も能力もないため、返済が不可能」ということです。

支払不能かどうかは裁判所が判断します。
その判断基準は、次の3点です。

■裁判所が支払不能かどうかを判断する基準

  1. 支払能力の欠乏
  2. 履行期にある債務の弁済能力(がない)
  3. 返済不能が客観的、継続的であること

これら3つの基準すべてを満たしている場合にのみ「支払不能」となります

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(1)支払能力の欠乏

借金を抱えている人が債務(借金)を返済できる見込みがない、ということです。
支払能力は、財産・信用・労力などの要素から総合的に判断される経済的な力量のことをいいます。

(2)履行期にある債務の弁済能力

「履行期にある債務」とは、返済期限がすでに到来していて、いますぐに返さなければならない債務(借金)のことです。

そのため「2ヶ月先に1000万円の返済を控えているが、返済できる見込みが立たない」といった場合は、まだ返済期日になっていないため、支払不能とはなりません。

(3)返済不能が客観的、継続的であること

「返済不能が客観的、継続的であること」とは、第三者から見て将来にわたって返済できないことが明らかな状態を指します。

そのため「一時的な資金不足で現在は返済できないが、3ヶ月後にはまとまった資金が手に入り、その後は返済できる」というようなケースでは、返済不能が継続的とはみなされないことになります。

自己破産として認められない条件

自己破産をしたくても、裁判所がそれを認めてくれない場合もあります。

特に、下記条件に当てはまると、自己破産が認められなくなります。

自己破産が認められない条件

  1. 支払不能状態として認められない
  2. 免責不許可事由に該当する

(1)支払不能状態として認められない

先ほど説明した通り、支払不能状態であるかどうかが、自己破産が認められる基準。
逆をいえば、支払不能状態と認められなければ、自己破産は認められません

多額の借金を抱えていて、自分では返済することができないと思っていても、以下のようなことに該当する場合は、支払不能状態と認められない可能性があります。

■支払不能状態と認められない場合の例

  • 車などの保有資産を換金すれば返済が可能になる
  • 家族などからの援助や返済期限を延ばしてもらえれば以後の返済は可能になる
  • 定期収入がアップすることが予定されており、現在は返済が難しいが近い将来に返済可能となる

(2)免責不許可事由に該当する

免責不許可事由とは、裁判所から免責許可が出ない(自己破産を認めてもらえない)理由のこと。

具体的には、破産者に違反行為や不誠実な行動が見られ、裁判所が自己破産を認めるのにふさわしくないと判断されたケースを指します。

本来は自己破産が認められるような経済状況であっても、免責不許可事由に該当するとして自己破産ができないことになってしまうのです。

免責不許可事由は、さまざまなケースがあります。その中でも代表的な例を紹介します。

■免責不許可事由になる例

  • 自己破産の手続きの直前またはその最中に、残りの財産(銀行預金など)を他に移して隠した。
  • 自己破産を前提に、多額の借金を複数先から借り入れたり、クレジットカードによる買い物を大量に行ったりして債務を増やした。
  • 友人への借金返済を優先して、金融機関への返済を後回しにし続けるなど、複数の債権者(貸し手)を平等に扱わなかった。
  • 財産や収入に照らして著しく高額の買い物やギャンブルなどでの出費をして借金が嵩んでしまい、その結果、返済不能に陥ってしまった。
  • すでに支払不能の状態であるにもかかわらず、支払可能な状態であると偽って、物品を購入しローンを組んだ。
  • 自己破産の申立てにあたって、債権者一覧表など申立書の内容を偽って提出した。

ただし、免責不許可事由に該当していても、支払不能の経緯が悪質ではなく、十分に反省をしていて今後の改善が認められるような場合は、裁判所の裁量により免責を許可する「裁量免責」として、自己破産が認められる可能性もあります。

実際、2017年の「破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産事件1238件中、免責不許可となった事例は7件と約0.6%。免責不許可事由になることはレアケースであり、ほとんどの場合で自己破産が認められています。

自己破産が認められても免除されない支払いがある

自己破産が認められると、金融機関などの借金は免除されて支払わなくてもよくなります。

しかし、自己破産には「非免責債権」という免除の対象にならない債権が法律により定められています。

非免責債権に該当するのは、税金や年金、(悪意で加えた不法行為に基づく)慰謝料などです

非免責債権に該当する支払いがあっても、ほかの借金の支払いが不可能であれば、自己破産は認められます。

ただし、非免責債権に該当する支払いが多額で返済が不可能だ、ということを理由に自己破産をすることはできません。

非免責債権に該当ものは、以下のものがあります。

■非免責債権の例

租税等の請求権 固定資産税や住民税などの租税のほか、健康保険や国民年金の保険料の支払いなど
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権 他人を騙してお金を取るなどの行為に基づく損害賠償請求権など
故意または重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権 無謀運転などに伴う交通事故で被害者に与えた損害賠償請求権など
夫婦間の協力及び扶助などの義務等 婚姻費用や子の養育費などの親族関係にかかる請求権
罰金等の請求権 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金または過料など
雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権 個人事業を営んでいる場合の従業員に対する未払い給料や預かり金など
債権者名簿に記載しなかった債権 破産を知りながら債権者名簿に記載しなかった債権など
罰金等の請求権 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金または過料など

自己破産ができる金額の目安はいくら?

自己破産は、申立てを行う債務者の債務の総額、保有する資産、収入の状況、家族構成などを総合的に勘案して判断されます。
自己破産をするために「○万円以上の債務がある」「財産が○万円以下」「年収が○万円以下」というような、基準があるわけではありません

裁判所は、債務者の全体像をもとに自己破産を認めるかどうかの決定を行うのです。
実際に自己破産となった事例をいくつか紹介しましょう。

事例1
名前 Iさん(40代・男性)
職業 無職(休職中)
債務総額 46万円
債務整理の方法 自己破産
生活費のため借金。弁護士に相談を開始した時点では仕事をしていたが、体調を崩して休職。最初は個人再生で解決を検討していたが、収入状況から自己破産の方がよいとわかり自己破産をした。
事例2
名前 Yさん(50代・女性)
職業 パート
債務総額 50~100万円
債務整理の方法 自己破産
パートでの収入は月に7~8万円。生活費のため消費者金融やクレジットカードで借入を行い、毎月の返済は4~5万円。認定司法書士に依頼して、自己破産をした。
事例3
名前 Yさん(30代・男性)
職業 派遣社員
債務総額 425万円
債務整理の方法 自己破産
地下アイドルにはまってグッズやアイドル仲間と打ち上げをしたりして月20万円を散財。給与で足りない分はキャッシングやカードローンを利用。両親には相談出来ないため、弁護士に相談し自己破産をした。

事例からもわかるように、収入の状況によって自己破産は数十万円であっても認められます。

また、借金の理由が免責不可事由である浪費であっても、弁護士に相談することで免責許可(自己破産)が認められる場合もあります。

「任意整理」や「個人再生」という方法もある

債務整理の方法には、「自己破産」以外にも「任意整理」や「個人再生」という方法があります。

任意整理・個人再生のメリット・デメリット
メリット デメリット
任意整理
  • 将来利息や遅延損害金の免除
  • 長期分割によって毎月の返済額を減らせる
  • 官報に記載されない
  • 一定期間、信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリストに載る)
  • 弁護士などへの費用がかかる
  • 裁判を起こされる可能性がある
個人再生
  • 住宅ローン以外の総債務額を圧縮できる
  • 住宅ローン特則を用いて住宅を残せる
  • 免責不可事由があっても債務整理できる
  • 職業制限、資格制限がない
  • 一定期間、信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリストに載る)
  • 弁護士への費用がかかる
  • 官報に掲載される
  • すべての債権者を平等に扱わなければならない(小規模個人再生の場合、一定数の債権者から異議が出ると不可)

任意整理は裁判所を利用することなく、自分が依頼した弁護士が各債権者と個別に交渉し、話合いで債務整理を行って解決するという方法です。

任意整理とは?について、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
任意整理とは | メリット・デメリットを比較してベストな解決方法を知る

一方、個人再生は全債権者に対する返済総額を少なくし、返済計画を立て、その計画通りに返済していく手続きです。

また、住宅ローンを支払っている人は住宅ローンの特則を利用することで、住宅を残せるメリットがあります。

個人再生とは?について、以下の記事で詳しく紹介しています。
個人再生と債務整理の違いは?デメリットや減額幅・条件などまとめ

自己破産するか迷ったら弁護士や認定司法書士に相談するもの1つの手段

これまで、自己破産が認められる際の裁判所の基準などについて解説してきました。債務額や経済状況は、それぞれの人で異なります。

「本当に自分が自己破産できるのか?」という判断は、なかなか自分ではできないものです。

法律に関する問題は、専門知識が必要です。

弁護士や認定司法書士から適切なアドバイスを受けることで、自己破産以外にも「任意整理」や「個人再生」など、自分に合った解決方法が見つかるかもしれません。

また、債務整理を依頼した時点で、借金の取立てを法律に基づいてストップできるという利点もあります。

貸金業者からの借金の取立てを止めることができれば、落ち着いて債務整理に取り組むことができることでしょう。

この記事のまとめ

  • 支払能力が欠乏し、履行期にある債務を継続的に弁済することができない客観的状態であれば、自己破産の申立てができる。
  • 裁判所による支払不能かどうかの判断は、借金の総額、保有資産額、収入、家族構成、家計の収支などから総合的に判断される。
  • 支払不能の理由が浪費やギャンブルによる多額の借金の場合は、免責不許可事由として自己破産が認められない場合もある。
  • 税金や子の養育費などは、自己破産をしても返済が免れられない非免責債権である。
  • 任意整理や個人再生といった自己破産以外の債務整理の方法も選択できる。
  • 弁護士など専門家に債務整理を依頼すると、手続き期間中は取立てをストップできる。

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