債務整理後の奨学金の返済負担を手続き別に解説
債務整理した後の奨学金の返済負担を手続き別に解説します。
任意整理
任意整理とは裁判所を通さずに返済負担を軽くする手続きです。
減額幅は利息と遅延損害金のカットにとどまり、基本的に元本の減額はできません。
手続き後のリスク・デメリットとして、
- 保証人への請求
- 信用情報機関への登録
などがあります。
奨学金を任意整理しても保証人の返済義務は消えません。
そのため、奨学金の返済額は連帯保証人である両親や、保証人である親族に請求されます。
保証人がいない場合の機関保証では、奨学生の代わりに保証機関が返済した後に、保証機関から奨学生本人に請求が行きます。
つまり、借金自体の帳消しも元本の減額もできないので、奨学金を任意整理しても返済義務はなくならないということです。
信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト入り)もデメリットです。
その後5年程度はローンを組むことが難しくなります。
そもそも債権者である日本学生支援機構は、延滞金や利息のカットには応じないと言われています。
仮に利息カットできたとしても利率自体が小さいので、大きな減額は期待できないでしょう。
奨学金の仕組み
奨学金とは、経済的な理由で進学が難しい学生に対して援助されるお金です。
返済が不要な給付型と、返済が必要な貸与型に分かれ、貸与型の利用が多いです。
貸与型は有利息と無利息に分かれますが、有利息の場合は年3%が上限となっていて、消費者金融や銀行などの利率と比べると低いです。
個人再生
個人再生は、裁判所を介して減らした借金を3年~5年で分割返済する手続きです。
利息と遅延損害金がカットされた元本を原則5分の1に減らせます(借金の額に応じて最大10分の1まで減額可能)。
手続き後のリスク・デメリットは任意整理と共通していますが、保証人へは減額された金額分が請求されます。
500万円の奨学金を個人再生すれば奨学金は100万円になりますが、減額された400万円が保証人に請求されるということです(100万円は本人が支払います)
ブラックリストへの登録期間は10年程度です。
官報に住所や氏名等が掲載されるのも一つのデメリットと言えるでしょう。
官報の詳細や官報に掲載されるリスクなどが気になる方は「官報から債務整理が家族にバレる?官報に載るリスクとバレない方法」に関連する記事がありますので、確認しておきましょう。
自己破産
自己破産は裁判所を介して借金免除を認めてもらう手続きです。
減額幅は最も大きく、裁判所に認められれば、奨学金を含め全ての借金がゼロ(0円)になります。
デメリットは個人再生と共通していますが、本人の返済義務はありません。
自己破産の効力が保証人に及ばないため、保証人に全額が請求されます。
さらに自己破産には、
- 家や車のような財産が没収される
- 士業や警備員など一定の職業制限がある
というデメリットもあります。
借金減額診断とは?
借金減額診断とは、借金をいくら減らせるかを簡単に診断できるツールです。
診断フォームを送信後、お電話にて、診断結果をお伝えします。
減額診断は司法書士が運営しており、匿名/無料で行うことができますので、安心してご利用いただけます。
奨学金の返済で向いている債務整理|ケース別
奨学金の返済で向いている債務整理をケース別に解説します。
任意整理は次のようなケースで向いています。
奨学金以外にカードなどの借金があって苦しいが、奨学金以外の借金の利息カットや返済計画の変更で生活に余裕が出る。
奨学金は他の債務と比べて利率が低いので、仮に奨学金の利息をカットできても減額効果を感じにくいでしょう。
任意整理は個別に交渉先を選べるので、効果の薄い奨学金を対象から外せます。
奨学金よりも利率の高い銀行系カードローン、クレジットカード、消費者金融は和解できる可能性があるので、任意整理によって返済が楽になる可能性も期待できるわけです。
個人再生が向いているケース
個人再生は次のようなケースで向いています。
奨学金やその他の借金返済が苦しいが、任意整理でその他の借金を利息カットするだけでは返済を継続できない。
住宅ローン返済中の自宅を残したい。
個人再生は整理先を選べないので奨学金も対象になりますが、その他の借金も含めて原則5分の1に減額できます。
任意整理よりも減額効果が大きい手続きです。
住宅ローン返済中の自宅を残したい場合も個人再生が良いでしょう。
自己破産すると裁判所に財産を没収されるため、基本的に自宅は残せません。
自己破産が向いているケース
自己破産は次のようなケースで向いています。
奨学金やその他の借金返済が苦しく、その他の借金を任意整理で利息カットしたり、個人再生で債務を減額するだけでは返済を継続できない。
裁判所に自己破産が認められれば、奨学金も含めて、ほぼ全ての債務が免除されます。
債務整理以外にも考えられる解決策
債務整理以外にも考えられる解決策を解説します。
奨学金の救済制度を利用する
奨学金には次のような救済制度があります。
減額返還制度
最長15年間、毎月の奨学金の返済額を2分の1、もしくは3分の1に減らせます。
なお、月々の負担が減額される分、返済期間は2倍~3倍に伸びますので、返済総額が減額されるわけではありません。
年収325万円以下なら利用できる可能性があります。
返還期限猶予制度
最長10年間、奨学金の返済を一時停止して期限を延長できる制度です。
目的は返済の期限を延ばすことであって、元金や利息は免除されません。
年収300万円以下なら利用できる可能性があります。
所得連動返還型無利子奨学制度
年収300万円を超えるまで、所得に応じて毎月の返済額が決まる制度です。
所得が少なければ毎月の返済額も少なくなります。
期間の制限はありませんが、返済自体が免除されるわけではありません。
なお、奨学金には無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」がありますが、この制度を利用できるのは無利子の第一種奨学金(大学院を除く)に限られます。
救済措置と任意整理の併用も可能
奨学金の救済措置と任意整理は併用も可能です。
奨学金は減額返還や猶予制度のような救済措置を利用する
その他の借金(カードや消費者金融など)は任意整理で負担を減らす
といった形で併用するイメージです。
救済措置と任意整理を組み合わせることで、奨学金を含む全体の返済負担を大きく減らせる可能性があります。
奨学金も債務整理も仕組みが複雑なので、弁護士や司法書士のような専門家への相談を検討するといいでしょう。
専門家に相談する
奨学金を含め、借金返済が苦しいときは専門家に相談しましょう。
専門家は債務整理のプロなので、状況に応じてどの債務整理が向いているかの判断を適切にできます。
奨学金の債務整理と保証人の問題は切り離せませんが、経験豊富な専門家なら、あなたと保証人双方の立場を考慮して適切なアドバイスもできるでしょう。
場合によっては保証人と共に自己破産しなければならない可能性もありますが、専門家は、保証人と一緒に債務整理の相談に応じることもできます。
奨学金の返済が遅れるリスク
奨学金の返済が遅れるリスクとして次の3つがあります。
予めリスクをおさえておくことで問題の深刻化を事前に防げますので、ここで確認しておきましょう。
- 延滞金がかかる
- ブラックリストに入る
- 財産が差し押さえされる
無利子でも有利子でも延滞金が発生します。
年5%の割合で延滞日数に応じてかかります。
奨学金を3ヵ月滞納すればブラックリストに入る可能性が高くなります。
奨学金の滞納が3ヵ月~4ヵ月続けば債権回収会社からの取り立てが始まります。
滞納して9ヵ月後には法的措置が検討され、最終的に給与や財産が差し押さえられる可能性が高くなります。
このようなリスクが生じる前に、早めに救済措置や専門家への相談で対処するようにしましょう。
借金減額診断とは?
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診断フォームを送信後、お電話にて、診断結果をお伝えします。
減額診断は司法書士が運営しており、匿名/無料で行うことができますので、安心してご利用いただけます。
奨学金と債務整理に関わるQ&A
奨学金と債務整理について、よくある質問にお答えします。
Q1.保証人がいないときはどうするの?
A:機関保証という制度があります。
連帯保証人を用意できない場合に保証機関に保証してもらえる制度です。
本人が奨学金を返済できなくなれば、保証機関が本人に代わって返済を行います。
その後、保障機関から本人に対して一括請求されますが、請求に応じない場合は財産や給与の差し押さえといった法的な措置が講じられます。
Q2.親が債務整理すると、子供は奨学金を利用できない?
A:親が債務整理しても、子供は奨学金を利用できます。
保証人は必要ですが、奨学金の借入れ自体は子供本人なので、家族が債務整理しているかどうかは法律的にも影響しません。
Q3.債務整理を経験した親は、子供の奨学金の保証人になれない?
A:債務整理後にブラックリストに入っている間は連帯保証人になれません。
その場合は、ブラックリストに入っていない方の親が連帯保証人になる、機関保証を検討するといった選択肢があります。