自己破産にかかる期間
自己破産の手続きは、あなたが所有している財産状況により「同時廃止事件」「管財事件」「少額管財事件」の3種類あり、手続きにかかる期間がそれぞれ異なります。
手続きの種類 | 申立から免責までの期間(目安) | 裁判所に払う費用(目安) |
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同時廃止事件 | 2ヶ月~3ヶ月 | 2万円~ |
管財事件 | 6ヶ月~1年 | 50万円~ |
少額管財事件 | 3ヶ月~6ヶ月 | 30万円~ |
これは申立をしてから免責を許可される(借金が免除される)までの期間です。
裁判所に申立をするまでに書類作成などの準備期間を含めると、さらに3ヶ月程度が必要になります。そのため同時廃止事件であっても、準備期間を含めると約6ヶ月かかってしまいます。
管財事件になると期間も費用もさらにかかってしまいますが、日本弁護士連合会によると70%以上が同時廃止で手続きがなされています。
まずは同時廃止の条件や具体的なスケジュールについてお話しします。
同時廃止事件
同時廃止事件とは、一定以上の財産がない場合に用いられる手続き形態です。
同時廃止になるための条件
同時廃止事件になるための条件は、裁判所によって多少異なりますが、一般的には以下の通りです。
- 20万円以上の財産を所有していない
- 99万円以上の現金を所有していない
- 借金の理由がギャンブルや浪費ではない(免責不許可事由にあたらない)
- 20万円以上の財産とは?
具体的には、自己破産の手続きをする時に売却し、現金化した場合、1件につき20万円以上の価値がある財産を指します。
個人が所有している財産で、20万円を超えるようなものとして考えられるのは以下のとおりです。
- 家や土地などの不動産
- 車やバイク
- 積立型の生命保険の払戻解約金
- 退職金
- 銀行預金
同時廃止の手続き期間とスケジュール
同時廃止の場合、自己破産の申立を行ってから免責を得られるまで、約3ヶ月程度かかります。
ただし、申立をするまでに弁護士への依頼や書類作成などの事前準備に3ヶ月程度かかるため、実質6ヶ月が目安となります。
同時廃止事件で免責の許可を得るまでのスケジュールは、大まかに3つのステージに分かれます。
【ステージ1】準備期間
裁判所に自己破産の申立をするための事前準備をする期間。
期間 | 約2~3ヶ月 |
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- 弁護士に相談し、依頼契約を結ぶ
- 受任通知で債権者からの取立がストップ
- 必要書類を作成する
【ステージ2】自己破産の申立と破産手続き開始決定
裁判所に借金の支払いが不可能であることを認めてもらい、破産手続を開始してもらう期間。
期間 | 約2週間~1ヶ月 |
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- 必要書類を裁判所に提出
- 裁判所に出廷し面談をする(破産審尋)
- 裁判所から「破産手続き開始決定」がなされる
- 官報に公告(1度目)
【ステージ3】免責の手続きと借金の免除
裁判所から免責を認めてもらい、借金の支払いを免除してもらうまでの期間。
期間 | 約2ヶ月~3ヶ月 |
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- 免責許可の申立をする
- 裁判所が債権者からの意見を聴取する
- 再度、裁判所に出廷し面談をする(免責審尋)
- 免責許可が確定し、すべての借金が免除される
- 官報に公告(2度目)
管財事件
管財事件は、「20万円以上の財産」や「99万円以上の現金」を所有している場合などに用いられる手続き形態です。
管財事件の条件
管財事件になる条件は以下のとおりです。
- 同時廃止事件の条件にあてはまらない
- 法人や個人事業主である
- 債権者が多数(多くの金融機関から借金をしている)
- 手続きを弁護士に依頼していない
管財事件の手続き期間とスケジュール
管財事件の場合、申立を行ってから免責を得られるまで、6ヶ月以上はかかります。
もちろん、管財事件であっても事前準備も必要ですからトータルで1年程度はかかると考えておいていいでしょう。
同時廃止と異なり管財事件では、裁判所に選定された破産管財人によって財産は売却・現金化され債権者に分配する手続きが追加されます。これを破産手続きといいます。管財事件にかかる期間が長いのは、この破産手続きに多くの時間を費やすためです。
破産手続きは、「破産手続開始」後になされます。
したがって管財事件・少額管財のスケジュールは以下の4ステージに分かれます。
【ステージ1】準備期間
期間 | 約2~3ヶ月 |
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【ステージ2】自己破産の申立と破産手続き開始決定
期間 | 約2週間~1ヶ月 |
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【ステージ3】破産手続き
裁判所に選定された破産管財人が財産を売却して債権者に分配する期間。
期間 | 約3ヶ月~6ヶ月 |
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- 破産手続開始決定と同時に裁判所が破産管財人を選定
- 破産管財人が申立人(あなた)の財産を売却
- 債権者集会を経て、債権者に財産を分配
【ステージ4】免責の手続きと借金の免除
期間 | 約2ヶ月~3ヶ月 |
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少額管財事件
管財事件にあたるような場合でも、「少額管財」という期間も費用も最小限ですむ手続きになるケースがあります。
少額管財は、管財事件で行われる破産手続きを簡略化したものです。
管財事件の場合は期間も費用も膨大にかかり、申立人の負担があまりにも大きくなります。
そのデメリットを解決するために、裁判所独自の判断で運用されるようになりました。
少額管財の条件
- 同時廃止の条件にあてはまらない
- 手続きを弁護士に依頼している
- 債権者の数が少数(目安:5社以内)
少額管財事件の手続き期間とスケジュール
管財事件と少額管財事件は同じ手続きの流れで進みます。
ただし、破産手続きが簡略化するので、申立から免責まで約3~4ヶ月程度ですみます。
事前準備を含めても6ヶ月~8ヶ月と考えておけばいいでしょう。
現在、あなたがすでに給与などの差し押さえ通知が届いている状態であれば、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。なぜなら差し押さえを解除できるのは、自己破産の手続開始決定の後になるからです。
自己破産の手続き期間を短縮し早く生活を立て直す方法3つ
自己破産の手続きは、早くても3ヶ月はかかります。
「すでに差し押さえ通知が届いている」「しつこい取り立てで精神的にツラい」といった状況に追い込まれているのであれば、一刻も早く免責を得たいと思うのは当然のことです。
ここからは自己破産の手続きを短くする方法や、取り立てから逃れる方法についてお話ししていきます。
1.即日面接を利用する
数多くの裁判案件を抱える東京地方裁判所では、自己破産の申立をしたその日に面談を行い、破産手続開始決定を行う「即日面接」という制度が運用されています。
自己破産の申立から破産手続開始決定は約2週間~1ヶ月かかるのが一般的ですので、申立をしたその日に手続きがなされるのは大きなメリットです。
即日面接は東京地裁でのみ運用されている制度ですが、ほかにも申立から3日以内に面接に応じてくれる裁判所もあります。
ただし即日面接は、弁護士に依頼した場合のみに利用できる制度です。あなたの最寄の裁判所が即日面接を運用しているかどうかを確かめるためにも、地域で活躍している弁護士に相談してみましょう。
2.少額管財にしてもらう
先ほどもお話ししたとおり、20万円以上の財産などを所有していて管財事件になりそうな場合は、弁護士に依頼すると少額管財事件にできる場合があります。
弁護士が必要な理由は、弁護士はあなたの財産などをあらかじめ調査してから裁判所に申立が可能で、そのことで破産管財人による手続きも迅速に進められるからです。
管財事件の場合は申立から免責まで6ヶ月~1年かかるのに対し、少額管財では3ヶ月~6ヶ月ですみます。
管財事件になりそうなケースでは、弁護士への依頼は必須といえるでしょう。
3.受任通知で取り立てをストップ
自己破産の依頼を弁護士にすると、弁護士は貸金業者などの債権者に対し、受任通知を送ります。
弁護士に自己破産の依頼をすると弁護士は債権者に受任通知をします。わかりやすくいうと「私(弁護士)は△△△(依頼者)より依頼を受けて、これから自己破産の手続きを開始します」といったものです。
この受任通知には法的効力があり、債権者は通知を受けるとその後は一切の取り立てや請求ができなくなります。手続き終了まで効力があるので、実質、受任通知を送った時点で借金からの返済をしなくてもよくなります。
自己破産を検討している人の多くが、借金の返済が滞り取り立てに苦しんでいる状態です。そのため、受任通知により取り立てが止まっただけでも、元の安定した生活を取り戻せます。
受任通知は自己破産の手続きをする上で大きな役割りを果たしているのです。
弁護士に依頼することで、自己破産の手続き期間が短くなる可能性は高くなります。また受任通知によって一時的ではあるものの取り立てや、その後の返済をストップすることも可能です。それでも「長い」と感じたり、仕事などで裁判所への出廷が難しい人は、手続きの期間や手間の少ない「任意整理」など別の方法もあります。まずは弁護士に相談しましょう。
ここからは自己破産の手続き期間中やその後、気をつけるべきことについてお話ししていきます。
自己破産手続きの期間中に注意すべきこと
自己破産手続き期間中は以下のような一定の制限を受けます。
- 特定の職業や資格が制限される
- 転職ができない
- 引っ越しや海外旅行ができない場合がある
自己破産の免責が確定すれば、これらの制限からは復権し元の生活に戻れますが、どのような制限を受けるのかは知っておく必要があります。
特定の職業や資格が制限される
破産開始決定から免責許可までの期間は、以下の職業や資格が制限されます。
- 弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士、行政書士などの士業
- 人事院の人事官、国家公安委員会委員、都道府県公安委員会委員、検察審査会、公正取引委員会委員などの一部の公務員
- 建築業、建築士、警備員など建築に関する職業
- 代理人、後見人、後見監督人、警備員、保険外交員、遺言執行者などの資格
すでにこれらの職に就いている方は、一時退職扱いになってしまう場合もありますので、会社の上司にあらかじめ相談しておきましょう。
破産手続開始決定から免責までは3ヶ月程度かかり、免責が確定されれば再び就業できます。
転職ができない
転職ができない決まりがあるわけではありませんが、転職によって給与が大幅に増えたり、高額の退職金が入ったりすると破産できなくなる可能性があります。
転職した場合には裁判所に申し出なければいけませんし、申立をしてから免責が確定するまで転職はおすすめできません。
引っ越しや海外旅行ができない場合がある
管財事件や少額管財事件になった場合、裁判所の許可がなければ居住地を長期間離れることができません。
そのため、引っ越しや長期の旅行をする際は必ず裁判所の許可が必要です。住宅や不動産を所有してる人であれば、転居が認められない可能性もあります。
自己破産後クレジットカードが作れない期間は5年
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報(自己破産をした記録)が掲載されます。いわゆるブラックリストに登録されるという状態です。
そのためクレジットカードの発行やローンなど新規の借入ができなくなります。
信用情報機関は3つあり、銀行やカード会社はいずれかの機関に加盟しています。
信用情報機関の事故情報の記録年数は以下のとおりです。
信用情報機関名 | 主な加盟業種 | 事故情報の記録期間 |
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日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融/クレジットカード会社 | 5年 |
シーアイシー(CIC) | 信販会社/クレジットカード会社 | 5年 |
全銀協(KSC) | 全国の銀行 | 10年 |
クレジットカードは5年程度で復活しますが、ローンは復活まで10年間かかります。
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